急性心筋炎の心電図|各疾患の心電図(5)

 

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、急性心筋炎の心電図について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

急性心筋炎とはどんな疾患か

急性気管支炎や急性腸炎など、各組織の急性炎症をきたせばその部位に特有の症状が出ますよね。気管支炎なら発熱・・痰、胃腸炎なら発熱・嘔吐下痢といった具合です。

 

急性心筋炎(acute myocarditis)の多くはウイルス感染が原因で、心筋に炎症をきたし、発熱、ポンプ機能低下による心不全不整脈などを急性発症します。とくに急速に心機能が低下して、循環機能が破綻してショック状態になるものを劇症型心筋炎といいます。心外膜に炎症を伴えば、後述の急性心膜炎の所見も見られます。

 

心筋が火事になっているようなもので、急性期はポンプ機能の低下もさることながら、興奮の発生・伝導も不安定になっていて、ときに致死性の不整脈に至る場合があります。

 

急性心筋炎の心電図所見は

特徴的な心電図所見はありませんが、ST低下、T波の平坦化、陰性化が見られます。刺激伝導系の障害をきたせば、洞不全、房室ブロック、心室内伝導障害が見られることがあります。心機能の低下と心筋の不安定化から、上室性期外収縮~心房細動といった心房性不整脈、心室性期外収縮~心室頻拍、心室細動という致死性不整脈をきたすことがあります。

 

急性心筋炎の症状とその他の所見は

多くは感冒症状に引き続き、心不全や不整脈、劇症型ではショック状態で発症します。呼吸困難や発熱、炎症反応陽性、心筋逸脱酵素(トロポニンT、CPKなど)が軽度~中等度上昇、といった所見が見られます。

 

急性心筋炎の注意点は

心筋炎症の活動性が高いほど、心機能の低下が重大なほど致死性不整脈が出現しやすいと考えてください。心室性期外収縮、とくに頻度の増加・連発・多源性・R on Tには注意が必要です。

 

刺激伝導系に炎症が及べば、徐脈や伝導障害をきたします。とくにヒス束に炎症が波及すれば完全房室ブロックをきたし、心房からの興奮が心室に伝わらなくなるので心室は補充調律頼みとなって、極端な徐脈~心停止になることがあるので注意しましょう。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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