肥大型心筋症の心電図|各疾患の心電図(4)

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、肥大型心筋症の心電図について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

[前回]

心臓弁膜症の心電図

 

〈目次〉

 

肥大型心筋症とはどんな疾患か

心筋が肥大するというのは、文字どおり肥って筋肉が厚くなることです。ボディビルダーの筋肉は肥大していますよね。あれは、筋肉にバーベルなどの負荷をかけて鍛えて筋肉を肥大させますが、心臓ではバーベルにあたるのが高血圧や、弁の狭窄や逆流で、心臓に圧や量負荷がかかり肥大します。

 

肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)は、そういった原因がないにもかかわらず心臓が肥大してしまう病気で、主に左室ですが、左右両方の心室に肥大が及ぶ場合もあります。最近では心筋をつくっている遺伝子に異常があることがわかってきていますが、若くして発症するケースもあり、不整脈や突然死を引き起こすこともある疾患です。

 

とくに左室の血液流出路、大動脈弁の下に肥大が著明で、収縮時に狭窄をきたすタイプの、閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy:HOCM)では、致死性不整脈を生じやすいので注意が必要です。

 

肥大型心筋症の心電図所見は

心電図は、基本的には左室肥大の変化ですが、左室高電位(V、Vの高いR波とV、Vの深いS波)やストレイン型ST低下の程度が通常の左室肥大よりも顕著で、異常Q波の出現や心室内の伝導障害を反映した、QRS波の幅の延長を認めることがあります(図1)。

 

図1肥大型心筋症の心電図

肥大型心筋症の心電図

 

T波は、ときに巨大陰性T波とよばれる、深さが10mm以上ある陰性T波が見られ、心尖部に限局する心尖部肥大型心筋症(apical hypertrophy:APH)に多い所見です。また、左室が肥大して、拡張期の広がりが悪くなって、左房からの血液が、流入がしにくくなるために、左房負荷の所見が見られることもあります。

 

肥大型心筋症の注意点は

心室性期外収縮~致死性不整脈に注意しましょう。とくに閉塞性肥大型心筋症では、致死性不整脈から突然死に至る危険があります。

 

タコツボ型心筋症

胸痛と心筋梗塞様ST上昇(主にV~VのST上昇とV~VのST低下)、左室前壁心尖部の壁運動が低下~消失し、収縮時のタコツボのような形態を呈する疾患で、しばしば急性心筋梗塞と間違われます(図2)。

 

図2タコツボ型心筋症の心電図

タコツボ型心筋症の心電図

 

冠動脈は正常で、数日~数週間で自然軽快し、Q波は残っても小さく、ST‒T変化も改善します。心身のストレスを契機に発症することが多く、アドレナリンの過剰分泌、交感神経の異常亢進の関与ともいわれていますが、はっきりしていません。

 

[次回]

急性心筋炎の心電図|各疾患の心電図の特徴(5)

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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