呼吸系の器官のしくみ|呼吸する(2)

解剖生理が苦手なナースのための解説書『解剖生理をおもしろく学ぶ』より
今回は、呼吸器系についてのお話の2回目です。

 

[前回の内容]

酸素を使わず、呼吸する?|呼吸する(1)

 

解剖生理学の面白さを知るため、身体を探る旅に出たナスカ。酸素を使わずにエネルギーを作り出す方法と、ミトコンドリアが呼吸に関係していることについて知りました。

 

今回は、いよいよから肺胞壁までの呼吸器系の世界を探検することに……。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

空気の入り口──鼻

さて、呼吸の本質が理解できたところで、呼吸に関係する器官を順番にみて行きましょう。まずは空気の出入り口、鼻からです。空気になったつもりで、冒険してみてください。

鼻腔

 

先生、身体にまとわりつくこのネトネトした液体はなんですか

 

鼻水よ

 

ひえっ、きったなーい

 

まあまあ、落ち着いて。この鼻水はね、実はとっても重要な役割を果たしているの

 

こんなきたないものが、ですか

 

きたないと感じるのは、そこを汚れた空気が通り抜けるから。決して、もともときたないものじゃないのよ

 

どういうことですか

 

鼻水のモトは、鼻腔にある粘膜から出た粘液。その粘液に空気中にある細菌やちり、ホコリなどが付着して鼻水になるの

 

呼吸器のなかで、外部から見ることのできる器官は鼻しかありません。つまり、外部と接触している唯一の呼吸器系で、空気の入口にもなれば、出口にもなります(図1)。

 

図1鼻腔

鼻腔

 

鼻腔の外側壁から内腔に向かって3つの甲介(上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介)が突出し、空気の通り道を上鼻道、中鼻道、下鼻道の3つに分けている。これは鼻粘膜と接する部分を増やすためで、空気の温度と湿度を高めている

 

空気はまず、外鼻孔を通って鼻の中へと入ります。鼻の中は鼻腔とよばれ、鼻中隔とよばれる仕切りで2つに分けられています。鼻腔は、血管が密集した粘膜でおおわれ、粘膜は粘液を分泌しています。血管を流れる血液と粘液のおかげで、外から入ってきた冷たい空気はここで温められ、加湿されます。

 

鼻前庭にある鼻毛は鼻腔への異物の侵入を妨げます。また粘液は、粘着テープのように空気中に含まれる細菌やチリ、ホコリなどを付着させます。要するに、お掃除道具も兼ねているわけです。

 

分泌された粘液は通常、気管粘膜にある線毛細胞の静かな動きによって咽頭のほうに押し流されます。しかし、空気が冷たい冬の日などは線毛細胞の働きが鈍るため、鼻腔に粘液が溜まりやすくなり、それが鼻水となって出てきます。

 

ハクション!

 

あら、ずいぶんと大きなくしゃみね。そうそう、くしゃみも空気の清浄に役立っているのよ、知ってた?

 

くしゃみも、ですか?

 

風邪をひいたとき、ウイルスを体外へ出そうとしてが出るでしょ。くしゃみは、あれと同じ反応。チリやホコリに反応して、鼻の通り道を自動的にきれいにしてくれているの

 

そうだったのか……ハッ、ハッ、ハックーション!

 

あらら、ここの空気はあんまりよくないみたいね。じゃあ、次は咽頭へ行ってみましょうか

 

イントウ?

 

要するに、のどのこと

 

なーんだ

 

咽頭と喉頭

咽頭(いんとう)は、骨格筋で囲まれた約13cmほどの通路です。空気の通り道でもあり、食物の通り道でもあります(図2)。

 

図2咽頭と喉頭

咽頭と喉頭

 

咽頭の真下は食道につながり、前下方は気管と肺につながっています。気管の入り口に近い部分、いわゆる「のど仏」があるあたりを、喉頭(こうとう)とよびます。

 

喉頭の入り口には、喉頭蓋(がい)とよばれる一種のフタが付いています。このフタはふだん、咽頭の中へと飛び出していて、食物が通るときだけ、筋肉の動きにつられて後方に倒れ、気管へと向かう口を塞ぎます。

 

空気は通すけれども、それ以外のものは通さない喉頭蓋は、「気道の番人」ともいわれます。ただし、たまに疲れているのか、ぼーっとしているのか、喉頭蓋が空気以外のものを気管に通してしまうことがあります。

 

通常はただちに咳が出て、異物を吐き出す反応が起こりますが、高齢者や子どもの場合、そのまま気管にものを詰まらせて、窒息死してしまうこともあるので、注意が必要です。また、嚥下障害を起こしやすい高齢者では、食物が気道に入り、誤嚥性肺炎を起こすこともあります。

 

喉頭には、4種類の小さな軟骨があります。軟骨というのは、弾力性に富んだ比較的軟らかい骨のこと。いわゆるのど仏にあたるのは、甲状軟骨とよばれています

 

先生、あの両側から飛び出しているヒダヒダは何ですか

 

あれは声帯。ヒトは、この声帯を空気で振動させて、その振動を口腔や鼻腔に響かせて声を出しているの

 

そうか、ここは声を出す気管でもあるんだ

 

ちなみに、イヌやネコにはこの喉頭蓋はなくて、空気と食べ物の通り道は立体交差のように別に分かれています。気管にものは詰まらないけど、喉頭を通って出る空気は鼻へ抜けるので、話すことはできないの

 

図3咽頭の構造

咽頭の構造

 

気管から肺へ

鼻から入った空気は、咽頭を通って気管に入ります。気管は左右の気管支に分かれるまでの約10cmの細い管です。左右に分かれた気管支は、肺へと入っていきます。気管支は枝分かれしながら、だんだんに細くなり(細気管支)、肺胞とよばれる多数の袋へとつながっていきます(図4)。

 

図4気管支の構造

気管支の構造

 

気管や気管支の壁には、粘液を分泌する細胞が無数に存在し、空気と一緒に入り込んでくるゴミはこの粘液に吸い取られます。粘液が吸着したゴミは、壁にある線毛の動きに従って咽頭のほうへと送り返され(線毛運動)、最後は痰となって吐き出されます。

 

ゴミが細気管支にまで入り込んでしまうと、もう、痰として吐き出すことはできなくなります

 

そのゴミはどうなるんですか。まさか、肺の中にたまったまま……

 

大丈夫。肺には肺胞マクロファージという、ゴミを食べてくれる細胞が存在しています。このマクロファージはいつもゴミを食べているために真っ黒。だから、ゴミ細胞なんてよばれることもあるのよ(図5

 

うわぁ、ひどい呼び名!

 

図5ガス交換の場となる肺胞

ガス交換の場となる肺胞

 

肺胞の壁は扁平なⅠ型肺胞上皮細胞と立方形のⅡ型肺胞上皮細胞からできており、その周囲には毛細血管が張り巡らされている。肺胞に届いた吸気中の酸素は、肺胞壁に隔てられた毛細血管内の赤血球に渡され、血液中の二酸化炭素を肺胞内へと送り出される(ガス交換)

 

肺のなかって想像してたのと違いますね。ただの大きな空洞かと思ったら、なんだか、細かな木の枝にブドウの房みたいなものがたくさんあります

 

木の枝のように分岐しているのが細気管支、ブドウの房に見えるのが肺胞ね。右と左、両方の肺でいくらの肺胞があるか、数えられるかな?

 

1000個か2000個くらいですか

 

少ない、少ない。成人だと3億個もあるのよ

 

えっ~、3億個!

 

ちなみに、肺胞の表面積を広げると約60~70m2くらいあるのよ

 

私の部屋より、ずっと広いや

 

図6気管支と肺胞

気管支と肺胞

 

肺胞の壁

気管支の末端にある肺胞は、電子顕微鏡でも見ることができないほど薄い壁でできています(図5)。その幅、わずか0.2~0.6μm。袋状になっているのは、口のあたりを弾性線維に囲まれ、それによって強く縛られているからです。肺胞は、袋状になることで表面積を大きくし、呼吸効率を上げています。肺気腫などの疾患や老化で弾性線維が弾力を失うと、袋どうしが合体して表面積が少なくなり、呼吸効率も悪くなります。

 

[次回]

肺の構造とガス交換|呼吸する(3)

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『解剖生理をおもしろく学ぶ 』 (編著)増田敦子/2015年1月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ