初回、抗菌薬を投与し発疹が出現。 バイタルサインは問題ないため継続し、30分後にショック状態となった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんにアナフィラキシーショックが起こっていることを認識したが、どう対応すればよいかわからない場合について解説します。
JA愛知厚生連 海南病院 看護部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
薬剤には「作用」と「副作用」があり、重篤な副作用の場合は、アナフィラキシーを起こす可能性があります。
異常を早期に認識すること、また認識したときにどのように対処するかを常日頃より意識しておくことが必要です。
そのためには、患者さんのバイタル徴候はもちろんですが、普段と違うサインも見逃さないように観察することも重要です。
- 抗菌薬投与の初回投与ではアナフィラキシーとなる可能性があるために、継続的なバイタル測定が必要です。
特に、投与後急速に皮膚や粘膜の症状が出現した場合はショックに移行する可能性が高くなります。
ショック徴候を認めた場合は、適切な初療が重要となります。
起こった状況
症例
抗菌薬を投与し始めた5分後に前腕に膨隆疹を認めました。
患者さんからは痒みの訴えもなかったため、看護師は経過観察でよいと判断しました。
しかし、投与開始30分後に患者さんから「徐々に皮疹が広がっている気がする」とナースコールがありました。
看護師が訪室すると起座位となって呼吸困難感を訴えており、その後意識レベルが低下しました。
看護師は緊急コールをしましたが、その後どうしたらよいか困っています。
どうしてそうなった?
抗菌薬の投与が契機となり、全身性の重篤な過敏反応が起こり、アナフィラキシーショックを引き起こしています。
皮膚や粘膜の症状の他に、呼吸器系や循環器系の症状を併発した際は、早急に対応しなければ生命の危機的状況に陥ってしまいます。
どう切り抜ける?
1 アナフィラキシーを認識したらショックの徴候の有無を確認する
アナフィラキシーの診断基準は、皮膚、粘膜、またはその両方の症状が急速に(数分〜数時間で)発症した場合とされています。
その中でも、さらに気道/呼吸、循環、消化器症状が1つでも伴っていると重度のアナフィラキシーを引き起こす可能性が高いとされます。
この症例の場合は、投与後短時間で発疹を認め、30分後には全身状態の悪化を認めています。
アナフィラキシーを認識した場合は速やかに抗菌薬の投与を中断し、アナフィラキシーショックへの対応をする必要があります。
2 初期対応方法
アナフィラキシーを疑う所見があれば、すぐに原因と考えられる点滴を中断し、静脈路の追加確保、救急カートの準備をします。
アナフィラキシーショックでは全身性の過敏反応が促進され、血管が弛緩する影響があり、血圧低下を引き起こします。
そのため、急な体動はさらなるショックの進行につながる可能性があります。
患者さんの苦痛がなければ仰臥位や輸液反応性を確保するため下肢挙上テスト(PLR test:passive leg raising test)を行い、血圧の上昇が乏しければ輸液の負荷や昇圧薬を使用する必要があります。
気道や呼吸の確認を行い、必要時は気道確保や酸素投与、補助換気を行う必要があります(図1)。
図1アナフィラキシーショック時の必要物品(例)

アナフィラキシーは急速に病状が進行する可能性がある。
急変対応を円滑に遂行するために物品の準備は複数の医療者の協力が必要である。
異変をすぐに周囲へ知らせ、どのような状態でも安全に対応できるような準備を心がける必要がある。
3 アナフィラキシーショック時に準備する薬剤
アナフィラキシーショックと診断された際に行う対応の第一選択は“アドレナリン”です。
アドレナリンには血管抵抗の増加による血圧上昇、心収縮力増大、気管支拡張の効果があり、ショックの防止と緩和が期待できます。
アドレナリンの投与の遅れは二相性反応につながるため、アナフィラキシーを認識したらすぐに大腿部中央の前外側に筋肉注射します。
アドレナリンがキットになっている場合は、投与量に注意しながら投与します(図2)。
図2アドレナリンキットを使用する場合(0.5mg投与指示の場合)

筋肉注射の血中濃度は10分で効果が最大となりますが、40分程度で半減するため、それまでにアナフィラキシーに対する原因排除、治療を開始しなければなりません(表1)。
表1アナフィラキシーの治療の第二選択薬

推奨度はアドレナリンよりも低いとされるが、症状の緩和目的として併用する場合がある。いずれも患者さんの状態や症状を継続的に観察しながら用法用量を守って使用する。
日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策委員会:アナフィラキシーガイドライン2022.日本アレルギー学会,2022.(2024/05/23アクセス)、各添付文書を参考に作成
4 抗菌薬の重要な副作用を認識する
アナフィラキシーを起こす可能性のある抗菌薬では、特にβラクタム系(セフェム系、ペニシリン系、カルバペネム系)が最も多いとされています。
薬物のアナフィラキシーは5分程度で誘発され、抗菌薬によるアナフィラキシーはIgEによる免疫学的機序に分類されます。
一度投与して問題なかった薬物でも再度投与した際にアナフィラキシーを誘発する可能性があります。
問診による情報収集、医療者間の共有は非常に重要です。
5 異変に気づくために
初回の抗菌薬投与時はどの時間で投与し観察を何分ごとに行うか、標準化する必要があります。
行動を統一化することで、知識の有無や経験年数にも影響することなく異変に気づくアンテナを張ることができます。
また、アナフィラキシーは皮膚や粘膜へ発現する程度は80〜90%に及ぶとされていますが、個人差があるためすべての人で同様な症状が出現するとは限りません。
アナフィラキシーは誰もが起こりうる副作用です。
そのため、起きてしまった場合は、重症化を回避する対応が重要となります。
応援要請や対処方法など日頃から準備する必要があります(図3)。
図3急変時の応援要請フロー例(筆者の施設でのフロー図)

急変時の対応方法を知っておくことで、急変時の重症化を防ぐことができる。
フロー図をカード形式で携帯したり、院内の人目がつきやすい場所に掲載したりすることで誰もが対応できるシステムが構築できる。
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1) 日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策委員会:アナフィラキシーガイドライン2022.日本アレルギー学会,2022.(2024/05/23アクセス)
2) 厚生労働省YouTube「筋肉内注射の手技について」(2023/11/30アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



