高齢の患者さんで呼吸数が30回/分だが、 発熱、呼吸困難感なく様子見をしていた。数時間後、ショックになった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんのバイタルサインは問題なく呼吸器症状もなかったが、気分不良を訴え血圧が低下した場合について解説します。
福岡市民病院 看護部
集中ケア認定看護師

起こった状況
症例
80歳代の患者Aさん。尿路感染で入院中。
発熱、炎症反応は改善し、2日後に退院が決まっていました。
筋力低下からトイレ歩行が苦痛であったAさんは、十分に飲水せずに過ごしていました。
受け持ち看護師が検温に行くと呼吸回数30回/分でしたが、その他のバイタルサインは問題なく、また他の呼吸器症状もなかったため様子を見ていました。
数時間後、様子を見に行くと、やや反応が鈍く、血圧を測定すると72/42mmHgでした。
どうしてそうなった?
成人の体液量は体重の約60%ですが、高齢者では約50%と少なくなっています。
年齢別の体液量を図1に示します。
図1年齢別の体液量

ただでさえ体液量が少ない状況の中で、Aさんは十分に飲水をせずに脱水となってしまったと考えられます。
脱水で心拍出量が低下した状態が続くと腎血流量が低下し、急性腎不全を来します。
そうなると腎臓で酸性物質を排出できなくなり、体内の酸が増加し、代謝性のアシドーシスの状態となります。
それに対して、呼吸数を増加させ、酸性物質であるCO2を排出し、酸塩基平衡を保とうとしていました(呼吸性代償)。
しかしながら、その代償は頭打ちとなり、代謝性アシドーシスが進行し、結果として血圧が低下してしまったのです。
どう切り抜ける?
1 呼吸の異常を放置しない
心停止症例患者の60〜70%で6〜8時間前に何らかの徴候があるとされています。
特に、呼吸の異常(呼吸困難、頻呼吸、努力呼吸など)は53%にあるとされており、呼吸数、リズムの異常は急変と強い相関があるといえます。
その他のバイタルサインに異常がなかったとしても放置せずに、原因を考えましょう。
2 どのような症状か確認し、原因検索を行う
症状は頻呼吸なのか徐呼吸なのか(表1)、リズム異常なのか確認します。
表1頻呼吸と徐呼吸

また、種々の原因により、呼吸リズムに変調を来すことがあります(図2)。
図2呼吸リズムの変動

これらのことが原因で呼吸状態に変調を来します。
Aさんは、発熱や炎症が改善していることから感染が原因ではないことがわかります。
末梢冷感の有無や尿量などのフィジカルイグザミネーション所見を得ることで脱水がある可能性を考え、飲水を促す、輸液の指示を受けるなどの対応が可能であったと考えられます。
その他、体温上昇や痛みなどにより頻呼吸になることがあるので、看護の力で対応可能なのか、医師の関与が必要な状況なのか、考えながら対応することが重要です。
医師の関与が必要と判断した場合は即座に医師に連絡します。
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1) 岡元和文:基本生理がわかると輸液と体液ケアがわかる.岡本和文,道又元裕編著,急性・重症患者ケア.総合医学社,東京,2014:3-13.
2) Franklin C, Mathew J:Developing strategies to prevent in hospital cardiac arrest: analyzing responses of physicians and nurses in the hours before the event. Crit Care Med 1994;22(2):244-247.
3) 医学情報科学研究所編著:病気がみえるvol4呼吸器.メディックメディア,東京,2014.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



