末梢ライン抜去したら、血腫ができた!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、抗凝固薬を内服している患者さんの末梢ラインを抜去した際に血腫ができた場合について解説します。

和田 秀一

福岡徳洲会病院 看護部
集中ケア認定看護師

 

 

抗凝固薬を内服している患者の末梢ラインを抜去した際に血腫ができていて、その様子に焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

末梢ライン抜去時のポイントは、初回の徒手的圧迫でしっかり時間をかけて止血することです。
患者背景から出血のリスクを評価し、確実に止血できたことを確認するまで時間をかけてでも徒手的圧迫を続けることが大切です。
また、止血確認後も定期的に観察を行いましょう。

 

POINT
  • 末梢静脈から針を抜くと、損傷した血管周囲に血液成分が徐々に拡散し皮下出血を起こします。
    皮下出血した血液は、血液凝固機序の働きでフィブリン形成を始め血腫となります。
    皮下出血を最小限にするために、患者背景に合わせた止血方法が重要です。

 

 

起こった状況

症例

患者Aさん。大動脈弁置換術のため入院中。
術後より、抗凝固薬(ワルファリン)の内服が開始となりました。
術後経過良好であり、本日で末梢ラインからの輸液投与が中止となりました。

 

Aさんの末梢ラインを抜針後、2〜3分刺入部を押さえて病室を去りました。
数分後にナースコールが鳴り、訪室すると刺入部周囲に2cmの皮下血腫を認めたため慌ててしまいました。

 

 

どうしてそうなった?

皮下血腫は、神経障害などの合併症を招くことがあります。
患者Aさんは抗凝固薬の内服をしていたため、血液凝固能が阻害され通常より易出血傾向でした。

 

通常の止血では不十分となることが多いため、追加で徒手的圧迫することが必要となります。
また、刺入部のみを圧迫止血し、皮下で血管を貫いている部位を圧迫することができていなかった可能性があります。

 

 

どう切り抜ける?

1 しっかりと徒手的な圧迫で止血を行う

静脈から針を抜いた後の皮下出血・皮下血腫を起こす原因は止血手技や、止血時間不十分です。
まずはしっかりと止血を行うことが重要です。

 

止血時間は通常5分程度とされていますが、抗凝固薬を内服している場合は10分程度、徒手的に圧迫した後に止血状況を確認し、止血できていなければ追加で徒手的圧迫をすることが大切です。

 

2 圧迫止血は皮下の血管を意識する

末梢ラインの先端は、皮膚刺入部より中枢側で血管内に挿入されています。
末梢ラインを挿入する看護師と抜針を行う看護師が同じとは限りませんので、挿入の深さや血管に針が刺さった位置を意識せずに抜針します。

 

皮膚刺入部と血管刺入部は同じ位置でない可能性があるため、皮膚刺入部より1.5〜2横指中枢側から血管を押さえることで血管刺入部を圧迫止血することが可能です(図1)。

 

図1血管刺入部と皮膚刺入部の位置関係

血管刺入部と皮膚刺入部の位置関係を表した図

 

3 血腫による神経障害

解剖学的に前腕には神経・血管・骨が狭い空間に位置しています(図2)。

 

図2前腕の解剖

前腕の解剖を表した図

 

圧迫止血が不十分で出血量が増加した場合、組織間質内に血液が漏出し神経を圧迫する可能性があります。
すぐに血腫を形成せずに時間をかけて徐々に血腫が増大することもあるため、定期的に抜針部位を観察しましょう。

 

4 エコーで血管を確認しながらの圧迫も有効

近年、小型化された血管エコーの開発により、エコーガイド下で静脈確保を行うなどイメージの可視化が可能になりました。
皮下血腫が大きい場合は出血している血管がわかりにくくなります。

 

しかし、血管をエコープローブで確認しながら徒手的に圧迫すると、血腫の原因となる血管の血流を途絶させることができ止血が可能となります。
エコーの使用は、確実に血管を捉えることができますが、操作に日々の訓練が必要です。

 

しかし、血管を確認し押さえるだけならば比較的容易であるため血管が深い場合などは1つの方法として有効です(図3)。

 

図3エコーで映し出されるイメージ

エコーで映し出されるイメージを表す図

血腫でわかりにくくなった血管の位置を把握する。

 

5 患者背景を事前に確認しておく

心疾患や血管疾患の既往のある患者さんは、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している可能性があります。
抗凝固薬・抗血小板薬はそれぞれ作用機序が違います。

 

患者さんが内服している薬剤と薬剤ごとの効果を血液データからモニタリングし、事前に出血リスクを評価しておくことが重要となります。
薬剤ごとに確認する検査内容が違うため事前に把握しておきましょう(表1)。

 

表1抗凝固薬とモニタリングに用いる検査

抗凝固薬とモニタリングに用いる検査を表した表

橋口照人:治療に用いられる抗凝固薬.臨床検査 2022;66(2):166-170.を参考に作成

 

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参考文献 閉じる

1) 山崎家春:採血合併症と予防・対応法 その他の合併症.検査と技術 2020;48(3):296-301.

2) 橋口照人:治療に用いられる抗凝固薬.臨床検査 2022;66(2):166-170.

3) 森寛行:末梢静脈路確保.Hospitalist 2020;8(3):469-475.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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