「一硝酸イソソルビド」と「硝酸イソソルビド」の処方間違いがあったのに、そのまま患者さんに渡してしまった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、「一硝酸イソソルビド」と「硝酸イソソルビド」 の処方間違いがあったのに、そのまま患者さんに渡してしまった場合について解説します。
日本医科大学武蔵小杉病院看護部
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
類似した名称の薬剤があることを知り、危険を予知しましょう。
また、治療の主役である患者さんを医療に参画させることは安全な医療の提供につながります。
- 間違った処方薬を患者さんが服薬することを未然に防ぐための対策として以下のことがあります。
①似ている名称の薬剤を認識する、②多職種で協力する、③患者さんの医療への参加を促す。 - また、患者さんが疑問をもったときに何でも確認できるよう、普段から患者さんとのコミュニケーションを大切にします。
起こった状況
症例
冠攣縮性狭心症のため循環器内科にかかりつけの患者Aさん。
「内服薬を誤って捨ててしまい、明日から受診までの薬が足りなくなってしまった」と2日分の薬の処方を希望し、夜間救急外来に来院されました。
看護師は、外来当直医と一緒に当直をしていた研修医から処方箋を受け取りAさんに手渡しました。
翌朝「もらった薬が普段飲んでいる薬と名前が違っている」とAさんから問い合わせがあり、カルテを確認すると、「一硝酸イソソルビド」と「硝酸イソソルビド」の処方間違いがあり、そのままAさんに処方箋を渡してしまったことに気がつきました。
どうしてそうなった?
平成24年度診療報酬改定において、「一般名処方加算」(表1)が算定されるようになったことから、処方箋を一般名で表示する施設が増えています。
表1一般名処方加算とは

電子カルテを用いた処方では3文字以上の薬剤名を入力すると、その文字を含む薬剤の一般名が表示され、一覧の中から薬剤を選択するシステムとなっているのが一般的です。
薬剤は、後発品などにより同様の薬剤でもさまざまな名称があります。
数千もある薬剤すべてを覚えることは不可能ですが、電子カルテシステムにより効率的に処方が行えます(図1)。
図1電子カルテによる処方検索システム

しかし、薬剤の選択ミスが起こりうるため注意が必要です。
この症例は類似した名称の薬剤を誤って選択したことにより、処方ミスが生じたケースです。
看護師も処方された内容の確認を行わずに処方箋を患者さんに渡したために間違いに気づくことができませんでした。
また、薬を受け取った薬局もかかりつけでなく、お薬手帳も持参していなかったため、医師→看護師→薬剤師のチェック機構をすり抜けてしまいました。
どう切り抜ける?
Aさんは冠攣縮性狭心症に予防のため、第一選択である「カルシウム拮抗薬」に加えて、硝酸薬である「一硝酸イソソルビド」を内服していました。
一硝酸イソソルビドは長時間作用し血中濃度も安定しています。
一方、硝酸イソソルビドは作用時間が短いため、徐放剤や経皮薬とするなど工夫されています(表2)。
表2硝酸薬の作用と種類
●作用
・静脈・動脈血管の拡張作用により心臓の前負荷・後負荷を軽減し心筋の酸素需要量を減少させる
・冠動脈拡張作用により冠血流を増加させ、心筋の酸素供給量を増加させる
●種類

今回の処方間違いは、Aさんにとって大きな影響はないと主治医が判断したため、次の受診までは、そのまま硝酸イソソルビドの内服を継続するよう説明し対応しました。
しかし、患者さんは不安感を抱いている可能性もあるので、十分な説明を行う必要があります。
間違った処方薬を患者さんが服薬することを未然に防ぐための対策として以下のことを行いましょう。
1 似ている名称の薬剤を認識する
カルデナリンⓇとカンデサルタンは高血圧の治療薬として用いますが、作用機序はまったく異なる薬です。
アイトロールⓇ(硝酸薬)とアロシトールⓇ(高尿酸血症治療剤)やアレロックⓇ(アレルギー性疾患治療剤)とアテレックⓇ(降圧剤)、ノルバスクⓇ(降圧剤)とノルバデックスⓇ(抗乳がん剤)はまったく作用が異なります。
このように作用のまったく異なる薬剤でも商品名が類似しているものもあり、その場合の処方間違いでは、患者さんに大きな影響を及ぼす可能性があります。
似ている名称の薬剤は把握し、リスクを予見しましょう。
2 多職種で協力する
診療科をローテートしている研修医の処方や、医師が普段使用し慣れていない専門診療科以外の薬剤を処方する場面などでは、特に間違いが生じやすくなります。
医師はもちろん、そこにかかわる多職種でお互い注意をはらって確認行為を行いましょう。
3 患者さんの医療への参加を促す
患者さんが自分自身の病気と治療を理解することは医療安全にも有効です。
本症例も医師→看護師→薬剤師のチェックをすり抜け処方されたものの、間違いに患者さん自身が気づいて確認行為をしています。
患者さんが疑問をもったときに何でも確認できるよう、普段から患者さんとのコミュニケーションを大切にしましょう。
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1) 石川雅彦:処方間違いを防ぐには.臨床研修プラクティス2007;14(7):16-22.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



