創部痛を訴えたためアセリオ®を投与すると、興奮気味に多弁となり呂律障害も認めた。確認するとポプスカイン®だった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、創部痛を訴えたためアセリオ®を投与すると、興奮気味に多弁となり呂律障害も認めたため、確認するとポプスカイン®だった場合について解説します。

横山 亮

河北総合病院薬剤科
薬剤師

 

 

患者が創部痛を訴えたためアセリオ®を投与すると、興奮気味に多弁となり呂律障害も認めた。確認するとポプスカイン®だったことが判明し、焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

局所麻酔薬中毒の可能性は常に考慮し、症状を早期に発見して適切な処置を行うことが重要です。

 

局所麻酔薬による副作用でどのような症状が出るかを把握しておくことで、早急な対応が可能となります。

 

重症化をさせないためにも、疑う所見がある場合は速やかに連携し治療を行いましょう。

 

POINT
  • 点滴製剤には外観が似ている製剤が多く存在します。
    そのため、誤った薬剤を投与しないように注意することが必要です。
  • 誤った薬剤を投与してしまった際は、どのような副作用が出るのか、バイタルサインなど何を観察する必要があるのか、症状がある場合はどのような対応をとるのかを知っておくことが重要です。

 

 

起こった状況

症例

虫垂炎の手術で入院した患者Aさん、術後に創部痛を訴えたため痛み止めの点滴を実施することになりました。

 

看護師Bは、病棟配置薬より「アセリオ」と表示されたカゴから100mLのソフトバッグ製剤を取り出し、薬剤名を確認せず注射ラベルを貼付しました。
看護師Cは注射ラベルを確認してAさんに点滴を開始しました。
点滴開始後Aさんが多弁となり呂律障害も認められたため、看護師Cが点滴を確認したところポプスカインRを点滴していることに気がつき、どう対応すればよいかわからずオロオロしています。

 

 

どうしてそうなった?

薬剤取り違いの原因の1つは、外観が似ていることです。
今回のアセリオとポプスカイン®もパッケージがよく似ています(図1)。

 

図1アセリオ(テルモ株式会社)とポプスカイン®(丸石製薬株式会社)

アセリオ(テルモ株式会社)とポプスカイン®(丸石製薬株式会社)を横並びに写した写真

 

ポプスカイン®は局所麻酔薬であり、硬膜外投与・硬膜外麻酔・伝達麻酔で使用されます。
誤って点滴静注で投与されたため、局所麻酔薬中毒の症状が発現したと考えられます。

 

局所麻酔薬の中枢神経系への作用は、初期には大皮質の抑制系の遮断に伴う刺激症状から、多弁、呂律障害、興奮、めまい視力・聴力障害、痙攣などの症状が現れます。
その後、興奮系の遮断が生じると意識消失、呼吸停止などの症状が現れます。

 

また、神経症状に伴って心血管系の症状として、高血圧頻脈、心室期外収縮が現れます。
その後、洞性徐脈、低血圧、心停止などの抑制徴候が現れます。

 

 

どう切り抜ける?

局所麻酔薬中毒の発症時間はさまざまで、半数の症例では投与後50秒以内、また4分の3の症例では使用後5分以内に症状が発現します。
血管内への直接の注入による「即時型」と、組織からの移行や活性型の代謝物の蓄積に伴う「遅延型」とがあります。


単回投与の場合においても、投与後15分以上経過して発症することもあるので、大量に使用した場合は少なくとも30分間は観察することが必要です。

 

1 局所麻酔薬中毒が疑われた場合

局所麻酔薬中毒が疑われた場合は、以下のように対応します。

 

  1. 1局所麻酔薬の投与の中止
  2. 2応援の要請
  3. 3血圧・心電図・パルスオキシメーターの装着
  4. 4静脈ラインの確保
  5. 5気道確保および100%酸素投与、必要に応じて気管挿管、人工呼吸
  6. 6痙攣の治療の準備(ベンゾジアゼピン系が推奨)

 

2 重度の低血圧や不整脈を伴う場合

重度の低血圧や不整脈を伴うときは、以下のように対応します。

 

  1. 120%脂肪乳剤の投与
  2. 2標準的な手順に従って蘇生を開始(頻脈・不整脈に対してリドカインは使用しない)
  3. 3体外循環の準備

 

重度の低血圧や不整脈が認められない場合は、注意深い観察のもとで、20%脂肪乳剤の投与を考慮しつつ対症的な治療を行います。
いずれの場合も患者さんを監視と直ちに治療ができる場所に移し、観察を続けることが重要です。

 

3 脂肪乳剤の投与理由と投与方法

脂肪乳剤により局所麻酔薬の取り込みが起こり、血中濃度が低下します。

 

また、局所麻酔薬が脳・心筋といった主要臓器から筋肉肝臓に運搬され、体内からの排泄が促されます。
そのため、局所麻酔薬中毒では脂肪乳剤の投与が推奨されます。

 

20%脂肪乳剤の投与方法(図2

  1. 11.5mL/kgを約1分かけて投与。
    その後0.25mL/kg/minで持続投与開始。
  2. 25分後、循環の改善が得られなければ再度1.5mL/kgを投与するとともに持続投与量を2倍の0.5mL/kg/minに上昇。
    さらに5分後に再度1.5mL/kgを投与(bolus投与は3回が限度)
  3. 3循環の回復・安定後もさらに10分間は20%脂肪乳剤の投与を継続する

 

図2体重50㎏の場合の投与方法

体重50㎏の場合の投与方法を表した図

 

 

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文献 閉じる

1) 日本麻酔科学会:局所麻酔中毒への対応プラクティカルガイド.2017年6月制定.

2) 小田裕:Lipid resuscitation 投与法とメカニズム,副作用についてのupdate.日臨麻会誌 2019;39(3):287~295.

3) 西川精宣,森隆:局所麻酔中毒.日臨麻会誌 2019;39(4):391~399.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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