結核疑いの患者さんの部屋にN95マスクでなく、サージカルマスクを装着して入室してしまった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、結核疑いの患者さんの部屋にN95マスクでなく、サージカルマスクを装着して入室してしまった場合について解説します。
東京医科歯科大学病院看護部
感染症看護専門看護師・集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
結核疑いの患者さんに、N95マスクを装着せずに対応したことで、「自分が感染したかもしれない」と不安になることは多いと思います。
しかし、結核菌は未知の菌ではなく、治療法や予防法が確立しています。
職員などへの接触者健診をはじめとする事後措置の要否、範囲、方法、時期の決定は、所轄の保健所と病院側との協議のもとで感染のリスクの大きさ等に応じて決められるため1、指示に従い行動しましょう。
- 結核は空気感染します。
自身への感染や集団感染のリスク低減のためには適切な空気感染予防策を講じる必要があります。
起こった状況
症例
Aさん、80歳代、男性。糖尿病、慢性腎不全の既往があります。
2週間以上持続する咳と発熱、食欲不振や体重減少を認めたため病院を受診されました。
喀痰の結核菌検査の実施、胸部X線検査にて右肺上側の陰影から肺結核が疑われ、B病棟の陰圧の空調設備のある個室に入院となりました。
入院時に担当をした看護師Cは肺結核疑いとの情報から、院内の感染対策マニュアルに従いN95マスクを装着して対応していました。
患者Aさんからナースコールがあり、担当看護師Cが他の患者さんの対応中であったため、看護師DがAさんの部屋を訪室し対応しました。
対応を終えて退出したところ、看護師Cから「Aさん、結核疑い!」と言われ、看護師Dは肺結核疑いの患者さんにサージカルマスクで対応したことに気づきました。
どうしてそうなった?
肺結核疑いの患者さんに必要な感染対策を知らなかった可能性も考えられます。
さらに、入院患者情報が医療従事者間で共有されていなかったこと、病室前に入室している患者さんに必要な感染対策の表示がされていなかったことも要因と考えられます。
どう切り抜ける?
1 結核による感染と発病を理解する
結核は結核菌による感染症で、結核菌を吸い込むことで感染する肺結核と、血液やリンパ液の流れに沿って全身の臓器まで広がり、肺以外の臓器に病巣が形成される肺外結核があります。
結核菌の潜伏期間は、一般的に半年から2年です。
結核菌を吸入し肺に定着した(感染)としても、すぐに発病するわけではありません。
また、感染した人が実際に発病するのは健常成人において感染後10年間に5~10%程度といわれており2、患者さんの排菌量や患者さんに接した時間(曝露時間)などにより感染リスクは異なるため、必要な感染防護具を使用せずに結核疑いの患者さんと濃厚接触した場合は、院内の感染制御部などの指示に従い行動しましょう。
2 結核(疑いも含む)の感染経路を理解する
集団感染を起こさないためには、結核の感染経路を理解し、医療従事者自身の身を守るためにも適切な感染対策を講じることが重要となります。
肺結核の感染経路は、空気感染(飛沫核感染)です。
肺外結核は、通常、飛沫核として空気中に排菌することがないため感染源とはなりませんが、菌を含む体液が飛沫状に飛び散った場合には感染源となります3。
このことから、結核菌の感染経路を理解し対応することが結核の集団感染リスクを含む結核菌への曝露リスク低減のために重要となります。
3 肺結核患者への感染対策を理解する
結核疑いの患者対応時は、患者さんを換気と陰圧維持が可能な個室へ隔離し、N95マスクなど呼吸器防護具の着用が必要です。
さらに、患者さんの咳嗽による結核菌の飛沫予防のために、患者さんにはサージカルマスクを着用します。
このように、N95マスクとサージカルマスクの使用目的は大きく異なることを理解し、防護具を選択します。
まず、N95マスクは、顔面に密着するように設計され、直径5μm以下の飛沫核に付着した病原体を捕集できることから、微生物を含む外気からマスクを着用する人を守るために使用します。
一方、サージカルマスクは、着用者から排出される微生物などの大気中への拡散を抑制することや、血液や体液などの分泌物の飛散時の物理的なバリア目的で使用します4。
4 個人防護具は適切に着用する
N95マスクはただ装着するだけでなく、着用者の顔面にフィットするマスク選択、適切な着用方法を習得することが必要です。
さらに、N95マスクの適切な装着のために、定期的なフィットテスト(図1)や着用のたびにユーザーシールチェックが重要となります(図2)。
図1N95マスクの適切な装着のためのフィットテストの方法

スリーエム ジャパン株式会社ホームページを参考に作成
図2シールチェックの方法

スリーエム ジャパン株式会社ホームページを参考に作成
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



