患者が中心静脈カテーテルを自己抜去し、挿入部から出血。どうしたら?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は自己抜去に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
出血しているところを圧迫しましょう。
〈目次〉
止血時の圧迫のポイント
ガーゼなどを使うと、止血ポイントを効果的に圧迫できないので、手袋をつけた指で直接押さえます。
カテーテル挿入部の皮膚の穴と血管の穴の位置にはずれがあります(図1)。皮膚の穴の位置から血管に沿って示指、中指、薬指を使って押さえ、血管の穴をふさぐように圧迫します。血管の穴が効果的に圧迫できれば出血は止まります。
皮膚の穴からの出血が止まっていること、皮下血腫が大きくならないことを確認しましょう。5分から10分間は圧迫し、止血を確認してから密閉性の高いドレッシング剤を24時間貼っておきます。皮膚の穴と血管の穴のずれは、末梢の点滴ラインを抜くときも同様です。血管の穴を押さえるようにしましょう。
図1皮膚の穴と血管の穴のずれ

空気塞栓症に注意!
中心静脈カテーテル抜去後に起こりやすい空気塞栓症
中心静脈カテーテルを自己抜去した患者の抜去部を押さえていたら、話しかけても答えなくなり、血圧が70mmHg台、SpO282%に低下してしまいました……というようなときは空気塞栓症が起きた可能性があります。
中心静脈は胸腔内にあるため、カテーテルを抜去した際に、呼吸で陰圧になって空気を血管内に引き込み空気塞栓を発症したと考えられます。
空気塞栓症とは
空気塞栓症は、空気が静脈から右心系に入り、それが肺動脈に詰まることで起こります。右心で血液が滞り、右心圧が上昇することで心室中隔を圧排し、左室の心拍出量が低下してショックに至ることもあります。
また、静脈に入った空気が多量だと、空気が肺で吸収されきれず左心系に移動し、脳伷塞や心筋伷塞を起こす可能性もあります。
中心静脈カテーテルの抜去時は必ず仰臥位で行う
空気塞栓は中心静脈カテーテル挿入時も、抜去時にも起こります。抜去時に発生した空気塞栓による死亡事例も報告されています。空気塞栓は座位や頭部挙上でカテーテルを抜去した際に起こることが多いため、医療者によるカテーテル抜去の際は必ず仰臥位で行い、密閉性の高いドレッシング剤を24時間貼っておきます。
もし皆さんが、医師が頭部挙上した状態で中心静脈カテーテルを抜去しようとするような“うっかり場面”を見つけたら、「仰臥位でお願いします」と声かけをしましょう。
直接圧迫止血法とは
出血部位を直接押さえることで止血をする方法です。どんな出血でもまずはこれを行います。
間接圧迫止血法とは
出血部位よりも上流(中枢側)の血管を圧迫することで止血する方法です。直接圧迫止血法で止血が困難な場合などに間接圧迫止血法を行います。
スタンダードプリコーションを実施し、出血部位を押さえます。出血部位が広い場合はガーゼなどで出血部位を覆い、手全体で圧迫する。可能であれば出血部を心臓より高い位置にします(図2)。
図2直接圧迫止血法

止まらない場合は体重をかけて押さえます。5分間程度押さえたら、そっと圧迫を緩めて出血が止まっているか確認します。止まっていなければ、再度押さえつつ医師を呼びましょう。
出血部位の上流(中枢側)の動脈を片手、または両手で押さえます(図3)。可能な場合は直接圧迫法の併用も効果的です。以下のように用手で行う場合と、止血帯やタニケットカフを使用する方法もあります。
図3間接圧迫止血法

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術 第2版』 (編著)江口正信/2024年5月刊行/ サイオ出版


