2018/12/23 のクイズ

在胎週数38週5日、出生体重3,200gで出生した男児。妊娠、分娩経過に異常はありませんでした。出生後、陥没呼吸とチアノーゼがあり、酸素投与を行いましたが改善が認められず、治療目的で新生児搬送となり、NICUへ入院となりました。入院時、児の口腔より泡沫状の嘔吐と腹部膨満を認めました。前医からの情報で羊水過多を認めていたそうです。口腔から胃管を留置し、胸腹部X線撮影をしたところ、X線画像でcoil up signを認めました。この症状から考えられる疾患は以下のうちどれでしょうか？

1. 腸回転異常症
2. ヒルシュスプルング病
3. 先天性食道閉鎖症
4. 十二指腸閉鎖症

挑戦者3967人　正解率41%

胎生5～7週に、前腸から食道原基と呼吸器原基が分離していきますが、この時期に何らかの理由で分離異常が起こると、食道閉鎖と気管食道瘻や気管の異常を合併します。

1.　腸回転異常症: 不正解
腸回転異常症は、中腸軸捻転とLadd靱帯の十二指腸圧迫によるものがあります。どちらも胆汁性嘔吐を認めますが、この問題の男児には胆汁性嘔吐は見られていないため、不正解です。
2.　ヒルシュスプルング病: 不正解
ヒルシュスプルング病は、生後24時間以内に胎便の排泄が見られず、頑固な便秘が続きます。腹部膨満、胆汁性嘔吐を認め、浣腸により爆発的な排便、排ガスが見られます。この問題の男児の場合、腹部膨満を認めていますが、胆汁性嘔吐は見られていないため、不正解となります。
3.　先天性食道閉鎖症: 正解
泡沫状の嘔吐と陥没呼吸、チアノーゼが見られたら、先天性食道閉鎖症を疑いましょう。先天性食道閉鎖症の病型は、Gross分類によって、A～Eの5つに分類されています。中でも、最も頻度の高いC型では上部食道は盲端に終わり、下部食道は気管につながっています。そのため、唾液の誤嚥と気管食道瘻による肺炎、呼吸困難などが見られます^1）。胃管を挿入するとX線画像では、coil up sign（挿入した胃管が上部食道盲端部で反転する所見）が特徴的です。また、C型、D型、E型では気管食道瘻を介して胃内に空気が流入するため、腹部膨満が見られます^1）。
これ以外にも、食道閉鎖に陥る児は、胎児期に羊水過多を認めることが多いです。
4.　十二指腸閉鎖症: 不正解
十二指腸閉鎖症は、生後早期から嘔吐を来し、多くの場合、緑色胆汁性嘔吐が見られます。また、腹部膨満は来さないとされています。腹部X線画像ではdouble bubble sign（二泡像）が特徴的で、約70%が羊水過多と腸管拡張で胎児診断されます^1）。問題の男児は泡沫状の嘔吐はあるものの、緑色や濃い色の嘔吐（胆汁性嘔吐）がなく、腹部膨満のあるなど、所見が合致しないため、不正解となります。

引用参考文献など

1）今治玲助．嘔吐・腹部膨満．大木茂編．見る！聴く！触れる！異常サインをキャッチ！新生児の症状別フィジカルアセスメント．メディカ出版，2015，172-181．
2）漆原直人．先天性食道閉鎖症．田口智章編．ナースのための小児・新生児の外科疾患　完全マスターガイド．メディカ出版，2018，72-76．
3）漆原直人．食道の手術術前・術後の看護．田口智章編．ナースのための小児・新生児の外科疾患　完全マスターガイド．メディカ出版，2018，255-258．
4）江角元史郎．腸回転異常症.田口智章編．ナースのための小児・新生児の外科疾患　完全マスターガイド．メディカ出版，2018，119-123．
5）仁志田博司．新生児学入門．第4版，医学書院，2012，491．
6）細井健一郎．新人ナースのための超早わかり！新生児の疾患・症状きほんナビ40正期産児編．NEONATAL CARE．30（4），2017，28-33．