糖尿病の関連図【見本付き】看護・観察項目・看護問題までスルスル書ける!

糖尿病の病態関連図・全体関連図を看護学生向けにわかりやすく解説。看護・観察項目・看護計画・看護問題まで2型糖尿病・1型糖尿病のことがまるわかり!
著者:白石弓夏
(看護師・ライター)
もくじ

1)糖尿病の種類は大きく「2つ」
糖尿病の関連図を書く前に、看護記録や医師のカルテで「1型か2型か(病型)」を確認します。
① 1型糖尿病(自己免疫性の「膵β細胞破壊」によるインスリン依存状態)
② 2型糖尿病(生活習慣・遺伝の影響で、インスリン分泌低下・抵抗性の状態が長年続いたケース
【ポイント】
- 糖尿病患者さんの約95%は「2型糖尿病」
- 自己免疫が原因の「1型糖尿病」は約5%
- 「1型糖尿病」は、生きていくためにインスリン注射が絶対に必要(インスリン依存状態)という点で、2型糖尿病とは治療の進め方が大きく異なる
- 「膵β細胞」とは、膵臓のランゲルハンス島の中にある、インスリンを作る細胞
2)そもそも「糖尿病」とは?
「糖尿病」とは、カンタンに言うと、膵臓から出る「インスリン」が十分に働かず、血糖値が高いままになってしまう病気のことです。

インスリンには血糖値を下げる役割があります。
しかし、なんらかの原因で「インスリンの量そのものが足りない(インスリン分泌低下)」ことや、「量はあっても効きが悪い(インスリン抵抗性)」ことがあります。
糖尿病では、このどちらか、あるいは両方が起こることで、血糖値が上がってしまいます。
高血糖状態が何年も続くと、血管が傷つき、網膜症・腎症・神経障害(三大合併症)や心筋梗塞、脳梗塞、足の切断といった重い病気につながります。
3)まとめ【関連図に使える流れ!】
【関連図に使える流れ!】
①自己免疫が関係する(1型糖尿病)
②遺伝的な素因・生活習慣などが関係する(2型糖尿病)
↓
インスリンが不足する/効きにくくなる
↓
血糖値が高い状態が続く(高血糖)
↓
【糖尿病】
↓
高血糖が長く続くことで血管などが障害される
↓
慢性合併症
(糖尿病網膜症・腎症・神経障害など)
1)2型糖尿病がおこるメカニズム
【ポイント】
- 2型糖尿病は、おもに2つの要因によって起こるよ!
- ①【インスリン抵抗性】インスリンは出ているのに、細胞が糖をうまく取り込めない
- ②【インスリン分泌低下】膵臓が疲れ、インスリン分泌量が少なくなっている状態

(1)インスリン抵抗性とは
【ポイント】
-
インスリンは出ているのに、細胞が糖をうまく取り込めなくなっている状態
- 内臓脂肪の蓄積が主な原因
- 遺伝的な素因に、過食・運動不足などの生活習慣が重なると発症しやすい
- 肥満を伴うことが多い
インスリン抵抗性は、遺伝的な素因がある人に、過食(脂っこい食事など)や、運動不足といった生活習慣が加わることで発症しやすくなります。
インスリンは、細胞という「部屋」に糖を届けるための「鍵」のようなものです。
内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から放出される遊離脂肪酸や炎症性の物質(脂肪細胞から出る、インスリンの働きを妨げる物質)の影響で、鍵(インスリン)が鍵穴(細胞の受け皿)にうまくはまらなくなります。
すると糖は、「細胞」の部屋の中に入れず、細胞の手前、つまり血液中にあふれたままになってしまいます。
これが「インスリン抵抗性」によって血糖値が上がるメカニズムです。
(2)インスリン分泌低下とは
【ポイント】
-
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島にある「膵β細胞」で作られる
- インスリン分泌低下とは、「膵β細胞」がインスリンを十分に分泌できなくなること
- 2型糖尿病では、もともとインスリンを分泌する力が低い体質に加えて、インスリン抵抗性などによって膵β細胞に負担がかかり、次第にインスリンを分泌する力が低下していくことがある
① インスリンを分泌する力がもともと低い場合
人によって、インスリンを分泌する能力には違いがあります。
日本人では、欧米人に比べてインスリンを分泌する力が低いことが、2型糖尿病になりやすい要因の一つと考えられています。
「インスリンを作る工場の生産力が、もともと少し低め」というイメージです。
※1型糖尿病では、自己免疫などによって膵β細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなることがあります。
② インスリン抵抗性などによって、分泌する力が低下する場合
インスリン抵抗性が起こると、血糖値を下げるために、膵β細胞はより多くのインスリンを分泌して対応します。
この状態が長く続くと、膵β細胞に負担がかかり、次第にインスリンを分泌する力が低下することがあります。
「がんばってインスリンを作り続けていた工場の生産力が、次第に落ちていく」というイメージです。
(3)糖毒性(悪循環)
・インスリン抵抗性とインスリン分泌低下は、どちらか一方だけのこともあれば、両方が組み合わさることもある
・高血糖そのものが、さらに悪循環に拍車をかける(糖毒性)
血糖値が高い状態が続くと、「高血糖そのもの」が、「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌低下」を強めてしまうことがあります。
つまり、
血糖値が高くなる
↓
インスリンが効きにくくなる・インスリンを出す力が落ちる
↓
さらに血糖値が上がりやすくなる
という悪循環が起こるのです。
このように、「高血糖がさらに高血糖を招く悪循環」を「糖毒性」と呼びます。
【関連図に使える流れ!】
2型糖尿病の悪循環
①【インスリン抵抗性】
・内臓脂肪の蓄積で、インスリンが効きにくくなる
・内臓脂肪から出る物質が、インスリンの働きを妨げる
⬇
②【インスリンの追加分泌】
・膵臓ががんばってインスリンを増産する
・血糖値を何とか下げようと、膵臓がインスリンを大量に作り続ける
⬇
③【インスリン分泌低下】
・無理な状態が続き、インスリンを作る力が落ちる
⬇
④【高血糖】
・インスリンが足りない・効きにくいため、血糖値が上がる
⬇
⑤【糖毒性】
・高血糖そのものが、インスリンの効きや分泌をさらに悪くする
⬇
さらに血糖値が上がりやすくなる
①~⑤が重なり、血糖値が下がりにくくなる悪循環が起こることがあります。
2)【糖尿病の急性合併症】高血糖から意識障害にいたるメカニズム(HHS)
※HHS(Hyperosmolar Hyperglycemic State:高浸透圧高血糖状態)
血糖コントロールが乱れた状態に感染症などが重なると、著しい高血糖から、急に意識障害にいたることがあります。
毎日のように起こるものではありませんが、糖尿病の急性合併症の中でも命に関わる重篤な状態です。
【関連図に使える流れ!】高血糖から意識障害にいたるメカニズム
①【浸透圧利尿】
・血糖値が160〜180mg/dLを超えると、腎臓で糖を再吸収しきれなくなる
・尿に糖が漏れ出る(尿糖)
→ 尿の中の糖が周りの水分を引き寄せ、水分を道連れに排泄してしまう
⬇
②【脱水】
・水分が奪われ続け、体が乾いていく
・多尿、口渇として自覚されることが多い
・脱水を補おうと口渇中枢が刺激される(口渇・多飲という代償反応)
⬇
③【循環血液量減少】
・水分摂取が追いつかないと脱水がさらに進行する
・血圧が下がり、脈が速くなる
⬇
④【意識レベル低下】
・重症化すると脳への血流も減り、意識がもうろうとする
3)糖尿病の三大合併症

糖尿病により高血糖状態が続くと、体中に張り巡らされた細い血管(毛細血管)が少しずつ傷ついていきます。
血管の内側に糖がこびりついてしまうのです(水道管の内側が少しずつ錆びついていくようなイメージ)。
特に、毛細血管が集まっている神経・網膜・腎臓の3か所で不具合が目立つようになります。
これが糖尿病の三大合併症です。
頭文字をとって「しめじ」(し=神経、め=目(網膜)、じ=腎臓)と覚える語呂合わせもあります。
表糖尿病の三大合併症(しめじ)
| 合併症 | 何が起こる? | サイン・症状など |
|---|---|---|
| 【し】糖尿病神経障害 | 末梢神経・自律神経が障害される | 足のしびれ・感覚低下、便秘、立ちくらみ |
| 【め】糖尿病網膜症 | 網膜の細い血管が傷つき出血・血流障害 | 視力低下・失明。重症化まで自覚症状に乏しい |
| 【じ】糖尿病腎症 | 糸球体(血液をろ過する部分)の血管が傷つく | 尿蛋白→ろ過機能低下→人工透析 |
・看護学生が特に要注意の合併症【足病変】
三大合併症のうち、看護学生が実習でとくに観察・ケアに留意したいのが「足病変」です。
足病変の初期では、「足の傷に気づけない」ことも多く、悪化しやすいのが特徴です。
糖尿病では、この足病変に気づくため(防ぐため)の「フットケア(足を清潔・健康に保つケア)」が重視されます。
【関連図に使える流れ!】
神経障害から足病変にいたる流れ
①【神経障害】
・感覚が鈍くなり、傷に気づきにくくなる
(体の「警報装置」が壊れていくイメージ)
⬇
②【動脈硬化】
・高血糖・高血圧により血管が硬く狭くなる
・足先まで十分な血液が届きにくくなる
⬇
③【足病変】
・気づかないまま傷が悪化し、治りにくくなることがある
・潰瘍・壊疽が進むと、切断にいたることもある
4)大血管合併症(動脈硬化性疾患)
高血糖は、毛細血管だけでなく、心臓や脳につながる太い血管(大血管)の動脈硬化も進行させる場合があります。
特に、糖尿病に加えて、脂質異常症や高血圧が重なる場合は要注意です。
【関連図に使える流れ!】
生活習慣病(高血糖・脂質異常症・高血圧)がいくつも重なる
⬇
【動脈硬化の進行】
血管の内側が傷つき、血管が硬く・狭くなる(動脈硬化)
⬇
心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患などのリスクが高くなる
また、動脈硬化や高血圧などによって心臓に負担がかかり続けると、心不全につながることもあります。
糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて、心臓や血管の病気(心血管疾患)を起こすリスクが高いことが知られています。
5)糖尿病の代償反応(シックデイで血糖値が乱れるしくみ)
ケガや感染症、手術などは、体にとって大きな「非常事態」です。
非常事態が起こると、体は乗り切るためのエネルギー(ブドウ糖)を増やそうと、「血糖値を上げるホルモン」をたくさん出します。
これは体を守るための正常な反応(代償反応)です。
しかし、糖尿病の人にとっては、この仕組みが裏目に出てしまいます。
体調を崩して食事が取れない日(シックデイ)でも、ホルモンの影響で血糖値がぐんぐん上がってしまうのです。
「食べていないのに血糖値が高い」という現象が起こり、血糖値が乱れてしまいます。
【関連図に使える流れ!】
体調不良(ケガ・感染症・発熱など)
⬇
体が「非常事態だ!」と判断する
⬇
血糖値を上げるホルモンが増える
⬇
食事を取っていなくても、血液中の砂糖(血糖)が増える
⬇
【シックデイ】食べていないのに血糖値が上がってしまう!

表高血糖と低血糖のおもな症状と対応
| 高血糖 | 低血糖 | |
|---|---|---|
| おもな症状 | 口渇・多飲・多尿・倦怠感 | 冷汗・振戦・動悸・空腹感 |
| 進行すると | 脱水・アシドーシス(血液が酸性に傾くこと) | 眠気・脱力・見当識低下 |
| 重症化すると | 意識障害・昏睡(DKA:糖尿病性ケトアシドーシス/HHS:高浸透圧高血糖状態) | 痙攣・意識消失・昏睡 |
| 対応 | インスリン投与・輸液 | 糖質の補給(ブドウ糖など) |
1)高血糖・脱水のサイン
- 口渇・多飲・多尿(普段より水分をよく欲しがる、トイレの回数が増える)
- 皮膚・口腔粘膜の乾燥、ツルゴール(皮膚をつまんで離したときに戻る速さ)の低下:戻りが遅いほど脱水が進んでいるサイン
- 血圧低下・頻脈:脱水による循環血液量減少のサイン
- 意識レベルの変化(JCS:Japan Coma Scale、GCS:Glasgow Coma Scaleなどで評価)
- 呼吸様式の確認(クスマウル呼吸:血液の酸性化を代償しようとする、深く速い呼吸)
- 呼気のアセトン臭(ケトン体が分解されるときに出る、甘酸っぱいにおい)の有無
- 尿量・水分摂取量の変化(IN-OUTバランス:摂取量と排泄量の差)
- 血糖値・尿ケトン体(または血中ケトン体)の推移:数値が上昇傾向なら要注意
2)低血糖のサイン
・一般的に血糖値70mg/dL未満が低血糖
・インスリンやSU薬(膵臓を刺激してインスリン分泌を増やす飲み薬)などを使用している患者さんでは特に要注意
・高齢者では、「なんとなく元気がない」「ろれつが回らない」などの訴えの背景に、低血糖が隠れている場合も
上記表の症状に加え、血糖値がさらに下がるにつれて、次のような症状が段階的に現れます。
- 交感神経症状:冷汗、振戦(手のふるえ)、動悸、顔面蒼白、空腹感、不安感 ※血糖値55mg/dL程度から出現
- 中枢神経症状:眠気、脱力、集中力低下、めまい、見当識低下(今がいつで、ここがどこかが分からなくなること)※血糖値50mg/dL程度から出現
- 重症化すると痙攣・意識消失・昏睡にいたることもある
3)慢性合併症のサイン(足病変・視力・腎機能)
- 足病変:傷・胼胝(たこ)・発赤・水疱の有無、皮膚の色や温度の変化、感覚(触覚・振動覚)の低下、足背動脈の触知(弱いと血流低下のサイン)
- 視力の低下、目のかすみの訴え
- 浮腫(むくみ)の有無、尿量・体重の変化(腎機能低下のサイン)
- しびれ・便秘・立ちくらみなど自律神経障害の症状の有無
4)シックデイの兆候・その他
- 発熱・下痢・嘔吐・食欲不振などで食事が摂れているか(=シックデイの状態にないか)
- インスリンや内服薬を自己判断で中断していないか
- 血糖自己測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)や食事・活動量の記録がとれているか

【STEP①】大前提:糖尿病は「治らないが、コントロールできる病気」と理解する
糖尿病は、多くの場合は治療・ケアを続けながら一生付き合っていく病気です。
「症状が落ち着いた」「血糖値が下がった」を「治った」と混同しないようにしましょう。
また、患者さん自身にも誤解されないよう、丁寧な説明とアセスメントが必要です。
【STEP②】「今、どこにいるか」を把握する
(1)血糖コントロールの目標値を把握する
「患者さんの血糖コントロールがどの程度の状態か」を把握します。
HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは、「過去1〜2ヵ月の平均的な血糖の状態を示す血液検査の指標」です。
目標値は、患者さんの状態に応じて、医師が段階的に設定します。
医師のカルテや看護記録で確認しましょう。
表HbA1c(ヘモグロビンA1c)の目標値の目安
| 目標 | HbA1c | 対象となる患者さんの例 |
|---|---|---|
| 血糖正常化を目指す | 6.0%未満 | 低血糖などの副作用なく達成可能な場合 |
| 合併症を予防する | 7.0%未満 | 多くの患者さんに対する基本の目標 |
| 治療の強化が難しい | 8.0%未満 | 高齢者や低血糖のリスクが高い場合など |
高齢の患者さんでは、認知機能や身体機能、低血糖のリスクなどを踏まえて、若い患者さんよりもやや緩め(7.0〜8.0%程度など)の目標になる場合があります。
高齢者ケアでは、血糖を下げすぎない配慮も重要です。
(2)慢性合併症の状態を把握する
あわせて、慢性合併症(網膜症・腎症・神経障害の有無や重症度)の状態を把握します。
上記2点を踏まえ、
- 退院後に安定した血糖コントロールを維持できそうか
- 再入院のリスクはどの程度か
を考えてみます(アセスメント)。
【STEP③】「入院時と今」を比べてアセスメントする
入院時と比べて、以下のような変化があれば、血糖コントロールの改善サインです。
・血糖値が安定してきた・血糖の変動幅が小さくなってきた
→ 治療が効いてきているサイン
・口渇・多飲・多尿が改善してきた
→ 高血糖・脱水の改善
・意識レベルが清明になってきた
→ 脱水・アシドーシスの改善
・創部(足病変)の発赤・浸出液が減ってきた
→ 感染・血流の改善
・食事摂取量が安定し、血糖自己測定を自分でできるようになってきた
→ セルフケア能力の回復
逆に、
- 低血糖を繰り返している
- 血糖値が不安定
- 食事療法や薬物療法へのアドヒアランス(治療方針を患者さん自身が納得して守れているか)が低い
といった場合は、「なぜそうなっているのか」を生活背景まで含めて理由を考えてみましょう。
そのうえで、退院後の生活を見据えた指導につなげられると、より良いアセスメントになります◎!

看護問題の優先順位は、マズローの欲求段階をベースに考えるとわかりやすいです。
1)【糖尿病の場合】看護問題の優先順位
- 1 生命に直結する問題(意識障害・脱水・電解質異常などの急性代謝失調)
- 2今まさに苦痛・不安になっている問題(低血糖リスク・足病変・食事制限など)
- 2今後の生活・退院後に関わる問題(自己管理・服薬・シックデイ対応)
2)【糖尿病の場合の例】看護問題リスト
| 看護問題 | 具体的なサイン・症状 |
|---|---|
| 意識障害・急性代謝失調のリスク状態 | ・口渇・多飲・多尿 ・意識レベルの低下 ・クスマウル呼吸、呼気のアセトン臭 |
| 低血糖のリスク状態 | ・冷汗、振戦 ・動悸、空腹感 ・意識レベルの変化 |
| 皮膚統合性障害リスク状態(足病変) | ・足の傷、発赤、浸出液 ・感覚の低下 ・傷が治りにくい |
| 非効果的自己健康管理 | ・服薬や食事療法が守れない ・血糖自己測定ができていない ・運動療法が続かない |
| 不安 | ・合併症や将来の生活への不安 ・スティグマ(誤解や偏見)に対する不安 |
| 知識不足 | ・食事療法の必要性を理解できていない ・低血糖時の対応が分からない |
以下は、各看護問題に対する具体的なケアと根拠です。

1)生命に直結する問題への看護ケア(最優先)
(1)血糖値・意識レベル・バイタルサインの経時的モニタリング
【ケア】
- 血糖値を頻回に測定し、意識レベル(JCS/GCS)、呼吸数・呼吸様式、血圧・脈拍を経時的に観察する。
- 指示された輸液・インスリンの持続静注が適切に投与されているか確認する。
【根拠】
- HHS(高浸透圧高血糖状態)などの急性合併症では、急激な血糖・電解質・循環動態(血液の巡り方)の変化が生命の危機に直結する。
- 「点」でなく「線」で比較することで、治療効果や急変の兆候を早期に捉えられる。
(2)脱水・電解質バランスの管理
【ケア】
- 尿量・水分摂取量を正確に記録し、IN-OUTバランスを確認する。
- 血清カリウム値の推移に注意する。
【根拠】
- インスリン投与により細胞内へカリウムが移動するため、治療開始後に低カリウム血症をきたしやすい。
- カリウム値を確認しないままインスリンを増量すると、致死的な不整脈のリスクがある。
(3)低血糖への迅速な対応
【ケア】
- 低血糖症状の出現時は速やかに血糖値を確認する。
- 経口摂取が可能であれば、ブドウ糖を中心とした糖質を摂取してもらう。
- 意識障害がある場合は、ブドウ糖の静脈内投与やグルカゴン注射などの準備をする。
【根拠】
- 低血糖は、放置すると意識消失や致死的な事態にいたる可能性がある。
- 症状がいったん改善しても再発したり、長引いたりすることがあるため、注意深い経過観察が必要。
2)苦痛・日常生活に関わる問題への看護
(1)フットケア
【ケア】
- 毎日、足の傷・発赤・胼胝(たこ)・皮膚の色や温度を観察する。
- 爪切りや保湿など、基本的なフットケアを行い、傷を発見した場合は速やかに報告する。
【根拠】
- 神経障害による感覚低下と血流障害が重なると、小さな傷に気づかないまま潰瘍・壊疽に進行しやすい。
- 早期発見が重症化を防ぐポイント。
(2)食事・血糖コントロールに関わる支援
【ケア】
- 食事摂取量や間食の状況を確認し、食事療法の必要性を患者さんの生活背景に合わせて伝える。
- 管理栄養士と連携する。
【根拠】
- 食事療法は、薬物療法と並ぶ治療の柱。
- 食べる量やカロリー、炭水化物の量を意識することが、血糖コントロールの改善に直結する。
- 無理な食事制限はかえって続かなくなるため、生活習慣に寄り添う工夫が重要。
(3)心理的サポート
【ケア】
- 診断や合併症の告知に伴う患者さんの気持ちを傾聴する。
- 「自己管理ができていないからだ」といった偏見(スティグマ)を助長しない言葉かけを心がける。
【根拠】
- 糖尿病は、生活習慣だけでなく遺伝的要因や自己免疫など多様な原因で起こる病気。
- 誤解や偏見は、治療を続ける気持ちを損なう。
- 安心して相談できる関係づくりが治療継続の土台になる。
3)今後の生活・退院後に関わる問題への看護
(1)自己注射・自己血糖測定の指導
【ケア】
- インスリンの自己注射手技、血糖自己測定(SMBG)の方法を、患者さんの理解度や手先の器用さに合わせて段階的に指導する。
【根拠】
- 手技を一人でできるようになるかどうかが、退院後も血糖コントロールを続けられるかを左右する。
- 一度にすべてを教えず、できたことを一緒に確認しながら進めることで自己効力感(自分にもできるという自信)を高められる。
(2)シックデイの対応指導
【ケア】
- シックデイ(発熱・下痢・嘔吐・食欲不振などがある日)の対応について、以下のように具体的に指導する。
- 自己判断でインスリンや内服薬を中断しない
- 水分と糖分を摂りやすい形(お粥・果汁など)で補給する
- 早めに医療機関へ連絡すること
【根拠】
- シックデイに自己判断で薬を中断すると、著しい高血糖やケトアシドーシスになりやすい。
- 逆に食事が摂れないまま薬を継続すると、低血糖になりやすい。
- 日ごろから対応方法を共有しておくことが重症化を防ぐ。
(3)セルフモニタリングと生活習慣改善への支援
【ケア】
- 退院に向けて、体重・血糖値の記録習慣づけを支援する。禁煙、節酒、活動量の維持など、患者さんが取り組みやすい目標から一緒に考える。
- 「HbA1c(ヘモグロビンA1c)が下がった」「足の傷が治ってきた」など、小さな改善も言葉にして伝える。(ポジティブフィードバック:前向きな声かけ)
【根拠】
- 糖尿病は、自覚症状に乏しいまま進行することが多く、自己管理のモチベーションを維持しにくい病気。
- 小さな成功体験を積み重ねることが、自己管理の継続につながる。

1)食生活(糖質・アルコール)
【個別性を引き出せる質問例】
・お食事は誰が作りますか?
・外食や間食はどれくらいの頻度ですか?
【質問のポイント】
- 食べる量やカロリーを適切にすることは、体重や血糖のコントロールに直結する。
- 普段どんな食事をしているのか(甘い物は何をどれくらい食べるのか)、具体的に確認することが大切。
- 太り気味の場合、体重を数%減らすだけでも血糖が改善することがある。
- 接待や付き合いなど、長年の食習慣がある場合は無理に禁止するのではなく、量や頻度を調整する工夫を一緒に考える。
【関連図に活かす例】
外食・接待・過食が多い生活
⬇
インスリン抵抗性の悪化
⬇
血糖コントロールが乱れる可能性
2)飲酒・喫煙
【個別性を引き出せる質問例】
・お酒は普段、どのくらい飲まれますか?(どんなお酒を/どのくらいのコップで/何杯)
・宴会や付き合いのときはどうですか?
・タバコは吸いますか?1日に何本くらいですか?(過去の喫煙歴についても確認)
【質問のポイント】
- アルコールは血糖値を下げる作用があり、インスリンや飲み薬と一緒に摂取すると低血糖のリスクが高まる。高カロリーで血糖コントロールを乱す要因にもなる。
- そのため、「普段どのくらい飲むか」だけでなく、「特別なときにはどのくらい飲むか」まで確認する。
- 喫煙は動脈硬化を進行させ、心筋梗塞・脳梗塞などの大血管合併症のリスクをさらに高める。
- 本人だけでなく家族からも普段の様子を確認すると、より正確に把握できることがある。
【関連図に活かす例】
飲酒・喫煙
⬇
大血管合併症の悪化
⬇
心筋梗塞・脳梗塞のリスク増加
3)仕事・活動量
【個別性を引き出せる質問例】
・どんなお仕事をされていますか?
・日常生活でどのくらい体を動かしていますか?
【質問のポイント】
- 座位中心の生活か、通勤や仕事で体を動かす機会があるかを確認する。
- 退院後に運動療法を無理なく組み込めそうかどうかの見立てにつながる。
【関連図に活かす例】
職業・活動量
⬇
誘因(運動不足)→ インスリン抵抗性の悪化
⬇
血糖コントロールが乱れる可能性
4)家族歴・社会的背景
【個別性を引き出せる質問例】
・ご家族に糖尿病の方はいますか?
・退院後は、誰と一緒に暮らしますか?
【質問のポイント】
- 2型糖尿病は遺伝的な影響も大きく、家族歴は重要な情報。
- また、独居かどうか、誰が食事を作るか、キーパーソンは誰かという社会的背景も、退院後の自己管理体制を考えるうえで大切な情報。
- 高齢で認知機能が低下している患者さんの場合は、介護保険の利用や家族のサポート体制まで含めて情報収集する必要がある。
【関連図に活かす例】
一人暮らし・家族の支援が少ない
⬇
服薬・食事・通院などの自己管理が難しい
⬇
血糖コントロールが乱れる可能性
5)心理・精神面(スティグマへの配慮)
【個別性を引き出せる質問例】
・糖尿病と言われて、どんなことを考えましたか?
・これからの生活で心配なことはありますか?
【質問のポイント】
- 糖尿病は「生活習慣のせい」「自己管理ができていないせい」といった誤解や偏見(スティグマ)の対象になりやすい病気。
- しかし実際には、遺伝的な要因や自己免疫など、さまざまな原因が絡み合って起こる。
- 患者さんが「自業自得だ」と自分を責めていたり、周囲からの心無い言葉に傷ついていたりすることもある。看護師(看護学生)自身がスティグマを助長する言葉かけをしていないか振り返りながら、安心して相談できる関係を意識する。
【関連図に活かす例】
自己管理ができていないという誤解・偏見(スティグマ)
⬇
自分を責める・相談しづらい
⬇
治療継続へのモチベーション低下

・2型糖尿病の慢性合併症進行例
事例概要【A氏、68歳、男性】
・A氏: 68歳・男性 身長168cm・体重74kg・BMI 26.2(肥満)
・診断名: 2型糖尿病、糖尿病性腎症(第3期)、糖尿病足病変
・既往歴: 2型糖尿病(12年前の健診で指摘。内服治療を開始したが5年ほど前から自己判断で通院を中断していた)、高血圧(同時期に内服治療を開始するも、糖尿病と同様に5年ほど前から自己判断で治療を中断していた)
・職業: 元会社役員(営業職)。65歳で定年退職後は自宅で過ごすことが多い。現役時代は外食や接待の機会が多かった
・家族・キーパーソン: 妻と二人暮らし。子どもは独立して別居。キーパーソンは妻
・趣味・嗜好: 週2〜3回の麻雀。晩酌はビール中瓶2本程度が習慣
(2)現病歴・入院時
- 現病歴:通院中断後は自覚症状もなく過ごしていたが、半年ほど前から両足のしびれを感じるようになった。最近になって右足の小指にできた傷が治らず、色も悪くなってきたため受診。精査・血糖コントロール目的で入院となった。
- 入院時所見:HbA1c(ヘモグロビンA1c) 9.8%、随時血糖286mg/dL、尿蛋白(3+:数値が大きいほど尿にタンパクが多く出ていることを示す)、eGFR 38mL/分/1.73m²(腎機能低下)。右第5趾に発赤・浸出液を伴う潰瘍。両下肢の異常感覚・振動覚低下。足背動脈の触知やや弱い。
- 治療:インスリン療法の導入、食事療法・運動療法の指導、フットケア、創部の処置(デブリードマン:傷んだ組織を取り除く処置・抗菌薬)
(3)患者の様子・価値観
「今さら生活を変えろと言われても」と抵抗を示す一方、傷がなかなか治らないことには不安を感じている。
「現役の頃、仕事の付き合いを優先してきたツケが回ってきたのか」と悔やむような発言も聞かれるが、これから先の生活が大きく変わることへの心配も口にしている。

1型糖尿病は、免疫の異常によって、膵臓の膵β細胞(インスリンを作る細胞)が壊されてしまう病気です。
糖尿病患者さん全体の中では約5%だといわれています。
生きていくためにインスリンの注射が欠かせない「インスリン依存状態」になる点が、2型糖尿病との大きな違いです。
食事療法や運動療法だけでコントロールすることはできず、治療の基本はインスリン注射です。
看護のポイントとしては、「急性期は脱水・電解質異常の管理が最優先になること」「退院後は自己注射・自己血糖測定の手技を身につけてもらうこと」が中心です。
【関連図に活かす例】
自己免疫により膵β細胞(膵臓にあるインスリンを作る細胞)が破壊される
↓
インスリンがほとんど分泌されなくなる(← 治療:インスリン注射)
↓
・細胞が糖を取り込めない → 血糖値が急上昇
・(同時に)エネルギー不足を補おうと脂肪分解が亢進 → ケトン体産生↑ → 血液が酸性に傾く(アシドーシス)
↓
高血糖により尿に糖が漏れる(尿糖)→ 浸透圧利尿 → 多尿・脱水・口渇・体重減少
↓
アシドーシスを代償するための過呼吸(クスマウル呼吸)・呼気のアセトン臭
↓
代償が追いつかず脱水とアシドーシスが進行
↓
意識障害(糖尿病性ケトアシドーシス:DKA)
<おわりに>
1型も2型も、「なぜそうなるのか」を1本道でつなげれば関連図は書けるようになります。
看護学生のみなさんが、少しでも長く眠れますように…。応援しています!
参考文献
1)日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂,2024.
2)土方ふじ子:糖尿病看護のキホン|入院から退院までのポイントを解説.看護roo! (2026年8月アクセス)
3)山田幸宏 監修:糖尿病はどうして起きるの?.看護roo! (2026年8月10日アクセス)
4)片野由美,内田勝雄:糖尿病|内分泌.看護roo! (2026年8月10日アクセス)
5)石田敦子:糖尿病性ニューロパチー.看護roo! (2026年8月10日アクセス)
6)糖尿病情報センター:糖尿病についての基礎知識.(2026年8月10日アクセス)
7)糖尿病情報センター:高齢者糖尿病の療養支援 (2026年8月10日アクセス)
8)医療情報科学研究所 編:病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版.メディックメディア,2023.
関連図PDF作成:菊池信悟
(ロケットデザイン)
イラスト:今村佳世
(Medi+プロダクション)
編集:坂本綾子
(看護roo! 編集部)
デザイン:伊神理咲
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