【後編】『看護覚え書』第15章を訳しなさい、の意味がすごい!『風、薫る』とナイチンゲール看護学校をつないだ史実

(写真提供:NHK、以下同)
▶前編に続き、朝ドラ『風、薫る』のナイチンゲール考証を務めた金井一薫先生にインタビュー。100年前の史実と現代の看護がつながる舞台裏に迫ります。
ナースのお団子ヘアは清潔のため?「髪型どうする問題」の裏側

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金井先生が考証に入られて、印象的なトピックスはありましたか?
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一番困ったのは「ナースの髪型」でした。当時の日本は明治中期。女性はまだ着物に日本髪が主流の時代です。
当時の日本髪は1か月ほど洗髪しないのが普通で、衛生面で課題がありました。
看護師は患者さんを感染から守り、清潔を保つのが原則ですから、「日本髪はやめましょう」と提案したんです。
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実は私、実際に「日本髪の患者さん」が緊急入院された経験があって!スタッフみんなでピンを外す作業から始めた経験があります……!
数日洗っていないだけでもフケや衛生面が気になりました。
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まさにそこなんです。
当時は、今のように切ってお団子にまとめるスタイルへ変革していく過渡期。
今のナースの髪型の原点は、当時の「清潔を守る」という強い意志から生まれているんですよ。
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ユニフォームも、現代から見ると可愛いデザインですよね!

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残っている資料の多くは式典用のロングドレスですが、ドラマでは「現場で動きやすく、看護師らしさが出る装い」を意識してアレンジされています。
デザインひとつにも「現場でどう機能するか」という看護の視点が活かされているんです。
葛藤は現代と同じ。「What is nursing?」を問いかけるドラマの凄さ
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ドラマの中では、主人公のりんたちが患者さんとのトラブルや失敗に悩み、葛藤するシーンが多く描かれていますよね。
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ええ。大関和さんの物語という史実をベースにしつつ、現場での葛藤や心の機微はドラマとして丁寧に描かれています。
特に、患者さんとの向き合い方に悩むシーンは、現代の看護師にとっても答えのない問いばかりですよね。
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臨床経験のある私たちが観ても、「自分ならどうするだろう」と考えさせられます。
SNSでも同世代のナースたちが、ドラマの感想としてよく語り合っていました。
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まさにナイチンゲールの『看護覚え書』にある「What is nursing?(看護とは何か)」を、時代を超えて私たちに突きつけていますよね。
100年以上前の看護師も、今の私たちと同じように現場で悩み、成長していたんですよね。
台本を見て鳥肌!『看護覚え書』第15章に隠された歴史の伏線

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台本をチェックされていて、先生ご自身が一番驚かれたシーンはどこですか?
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看護学校の教員であるバーンズ先生が「『看護覚え書』の第15章を訳しなさい」と宿題を出すシーンです。
最初は「本当に彼女たちは『看護覚え書』を読んだのかな?」と半信半疑でした。
それで、大関和さんが明治41年に書いた『実地看護法』の復刻本を調べ直したんです。
すると、驚くべき事実がわかりました。
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どんな事実だったんですか……!?
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大関和さんが書いた資料に「ナイチンゲール曰く、看護に第一大切なのは新鮮な空気である」と明確に記されていたんです。
これは正に、『看護覚え書』を読まないと書けない文章です。

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さらに調べると、本場のナイチンゲール看護学校では、入学時に「まず第15章から読み進める」という独自の学習順序が指定されていたことも判明しました。
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ドラマの指導シーンが、本場のナイチンゲール学校のカリキュラムと完全に一致していたんですね!
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そうなんです。バーンズ先生のモデルとなった人物が直系の弟子だったからこそ、その教え方が忠実に再現されていた。
史実とドラマの設定が見事につながった瞬間は、本当に鳥肌が立ちました。
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ただのドラマの演出ではなく、当時のリアルな看護教育の熱量がそのまま描かれているんですね。
画面越しに伝わってくる熱量の理由がわかりました!
看護って、本来楽しいものなんですよ。

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最後に、金井先生から現代の看護師さん・看護学生さんたちにメッセージをお願いします。
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『風、薫る』でも、「What is nursing?」という問いが、物語の根っこにありました。
これは、昔の看護師だけに向けられた問いではありません。
今日、患者さんを観察したこと。
声をかけたこと。
そばにいたこと。
できることを一緒に考えたこと。
その一つひとつを、
「これは看護だったのかな?」
と考えてみてください。
そして、「その人のもてる力を活かせたか」「生命力の消耗を最小にしたか」という2つのものさしで振り返ってみる。
そうすると、何気なくやっていたことの中にも、「これも看護だったんだ」と気づく瞬間があると思います。
悩むことも多いと思います。
どうか看護が楽しくなりますように!
心からエールを送っています。
編集・取材時写真/坂本綾子(看護roo!編集部)
●文献
・湯槇ます,薄井坦子,小玉香津子,他訳,フロレンス・ナイチンゲール:看護覚え書―看護であること 看護でないこと(改訳第8版).現代社,2023
●新刊
・金井一薫 著:介護とは何か―いのちのしくみに基づくケア.現代社,2026
・金井一薫 著:ナイチンゲールKOMIケア理論―生命科学モデルに基づく看護理論.現代社,2026
・小南吉彦 著,金井一薫 監:看護とは何か―連続講義『看護覚え書』を読む.現代社,2025
●これならできるKOMIシステム
KOMIシステムは「ナイチンゲール看護思想」と「KOMIケア理論」とを合体させたうえで、 その理論にもとづいて実践を展開できるように開発された実践記録のためのツールです。
「無償版」と「有償版」があります。(▶詳しくはコチラ)
●訪問看護ステーションユーナ
「ユーナ」とは、ナイチンゲールが彼女の一番弟子、アグネス・ジョーンズにつけた愛称です。
訪問看護ステーションユーナでは、ナイチンゲール思想を大切にし、KOMIケア理論を学び合い、KOMIシステムを活用したケアを展開しています。
●ナイチンゲール研究所
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●主な経歴
1993年1月~2008年3月
日本社会事業大学社会福祉学部 福祉援助学科 講師・助教授を経て教授
2008年4月~2009年3月
東京有明医療大学設立準備室
2009年4月~2013年3月
東京有明医療大学 看護学部看護学科 教授・看護学部長
2013年4月~2015年3月
東京有明医療大学 看護学部 看護学科 特任教授
2015年4月~現在
東京有明医療大学 名誉教授
2017年10月~2025年3月
徳島文理大学大学院 看護学研究科 教授
2019年6月
『新版 ナイチンゲール看護論・入門』(現代社)
著書・論文多数
●2026年度前期 連続テレビ小説「風、薫る」
【放送予定】 2026年3月30日(月)より、全26週(130回) ※NHK ONEで同時・見逃し配信中
【原案】 田中ひかる 『明治のナイチンゲール 大関和物語』
【主題歌】 「風と町」Mrs. GREEN APPLE
【出演】 見上愛、上坂樹里 ほか
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