摂食嚥下障害看護認定看護師になるには?資格取得の流れや費用を解説

看護師が取りたい資格図鑑「摂食嚥下障害看護認定看護師」の記事のMV

 

摂食嚥下障害看護認定看護師は、「食べる」「飲み込む」を支援するスペシャリストであることを証明する資格です。

 

この記事では、摂食嚥下障害看護認定看護師の仕事内容資格を取るメリット、資格を取るまでの流れなどについて解説します。

 

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師とは?

摂食嚥下障害看護認定看護師は、病気や障害で食事ができない患者さんや、誤嚥のリスクが高い患者さんへの「飲み込み」について、専門性の高い看護を提供する認定看護師です。

 

元々は、「摂食・嚥下障害看護認定看護師」という名称でしたが、制度の変更に伴い、2019年より「・」が削除され、「摂食嚥下障害看護認定看護師」となりました。

 

摂食嚥下障害看護認定看護師は1,229人が登録しており、脳神経外科、歯科外来、消化器科など幅広い部署の看護師さんが取得をしています。

 

「口から食事ができない患者さんと関わる中で、よりよいケアの仕方を模索している」

「誤嚥に困っている患者さんへのケアやサポートのスキルアップがしたい」

 

と考える看護師さんが取得する場合が多いです。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の役割

認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

摂食嚥下障害看護認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」は飲み込みの機能が落ちている患者さんに対して質の高い看護を行うことです。

 

患者さんの摂食・嚥下機能を評価し、病状に合わせた食事内容などを考えます。また、飲み込みだけでなく、口腔ケアの方法なども検討し、誤嚥性肺炎や窒息、脱水の予防・改善を図ることも、実践の一つです。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、ほかの看護師に対して、摂食・嚥下機能の評価方法や口腔ケアの仕方、病状の悪化防止に関する考え方をレクチャーすることです。

 

院内で勉強会や研修を企画し、誤嚥のメカニズムについて理解を深めたり、口腔ケアなどの誤嚥予防に関する講義を行ったりします。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」では、医師や栄養士、歯科衛生士などの多職種と連携し、患者さんにとって最適な治療を考えます。

 

患者さんの「食べたい」「飲み込みたい」という欲求に応えるために、栄養サポートチームを結成し、多方面からリハビリの内容や食事形態について検討することなどを行います。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるには?

摂食嚥下障害看護認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

認定看護師になるまでの流れを表した図版。実務経験を満たす→教育機関に入学し、カリキュラムを修了→認定審査を受ける→登録を行う

参考:日本看護協会「認定看護師

 

摂食嚥下障害看護分野の実務経験については、次の実績や勤務状況であることが望ましいとされています。

 

  • 摂食嚥下障害患者が多い保健医療福祉施設、または在宅ケア領域での看護実績
  • 摂食嚥下障害患者の看護を5例以上担当
  • 現在、摂食嚥下障害患者の看護に携わっている

参考:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるための学校や勉強内容

認定看護師を取得するには、指定された教育機関でカリキュラムに沿って学習する必要があります。摂食嚥下障害看護分野の対象学校は次の3箇所(2024年4月時点)です。

 

  • 茨城県:茨城県立医療大学地域貢献研究センター認定看護師教育課程
  • 群馬県:群馬パース大学看護実践教育センター認定看護師教育課程
  • 愛知県:愛知県看護協会 認定看護師教育課程

出典:日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧((特定行為研修を組み込んでいる教育機関:B課程認定看護師教育機関)

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の資格を取得するには、1年以内に800時間程度の教育課程を修了する必要があります。

 

教育課程は「共通科目」「専門科目」「演習・実習」に分かれています。

 

専門科目のカリキュラムではリハビリテーション総論、摂食嚥下障害病態論、摂食嚥下機能評価論、摂食嚥下障害看護技術論、リスクマネジメント論、摂食嚥下障害援助論を学びます。

 

詳しくは日本看護協会の認定看護師教育基準カリキュラムを確認しましょう。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師の試験内容と難易度

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:都道府県ごとの所定の会場
  • 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年 第32回認定看護師認定審査実施概要」

 

難易度は易しくはないようです。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。

 

認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるためにかかる時間と費用

摂食嚥下障害看護認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるまでにかかる時間

摂食嚥下障害看護認定看護師の資格取得までには、約2年かかります。

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
4月 入学
5月 講義、演習、実習開始
翌3月 修了試験、修了式
10月 認定審査
12月  合格判定通知
翌々年2月 認定証通知

参考:愛知県看護協会「令和7年度 摂食嚥下障害看護認定看護師教育課程(B課程:特定行為研修を含む)募集要項

 

また、教育機関に通っている約1年間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。

 

病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるまでにかかる費用

認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で120万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5万円
受講料 100万円
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

参考:愛知県看護協会「令和7年度 摂食嚥下障害看護認定看護師教育課程(B課程:特定行為研修を含む)募集要項

 

さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。

 

費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。


 

摂食嚥下障害看護認定看護師の仕事内容

摂食嚥下障害看護認定看護師の仕事は、飲み込みの機能に障害がある患者さんの病状を評価し、必要なケアや効果的な食事の内容などを考え、健康状態やQOLの悪化を防ぐことです。

 

患者さんの「口から食べたい」という思いにできる限り応えられるよう、医師や栄養士、歯科衛生士と連携して口腔ケアや嚥下の訓練、食事形態や食べる姿勢の調整などを行います。

 

また、院内ラウンドを通してほかの看護師から口腔ケアや服薬方法などの相談を受け、適切なケアをレクチャーしたり、栄養管理や食事摂取に関する知識やスキルを磨く勉強会を実施したりすることもあります。

 

中には、院外で地域住民の方へ口腔機能や嚥下機能低下予防の啓発活動を行う認定看護師もいるようです。

 

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるメリットとは

摂食嚥下障害看護認定看護師の資格取得には、次のようなメリットがあります。

 

摂食嚥下障害看護認定看護師になるためのメリットを解説した図版。1)スキルアップにつながる、2)キャリアアップにつながる

 

スキルアップにつながる

摂食嚥下障害分野に関する専門的な知識を得ることで、ケアの方法について今までよりも多くの選択肢が考えられるようになり、患者さんの嚥下機能に適した看護を実践しやすくなるでしょう。

 

また、多職種と連携する機会が増えることで看護師としての視野も広がり、看護師としてさらにステップアップすることができます。

 

「口から食べたい」という思いを持つ患者さんに対して、何ができるか悩んでいる看護師さんは、資格取得に挑戦する価値があるでしょう。

 

 

キャリアアップにつながる

認定看護師になると、ほかの看護師の育成や、研修会・啓発活動などに関わる機会が増えます。

 

摂食嚥下障害分野の専門性を広める立場として活躍する場が多くなることで、看護師としてのキャリアアップにつなげられるでしょう。

 

今後の日本は、高齢化により摂食嚥下看護に関する需要が今後も高まります。摂食嚥下障害看護認定看護師の、「食べること」を支援する専門家としての知見が必要とされることも増えていくでしょう。

 

 

まとめ

摂食嚥下障害認定看護師は、口から食べられない患者さんや飲み込みに障害がある患者さんに高度な看護ケアを提供する認定看護師です。

 

患者さんの「口から食べたい」という思いに応え、摂食嚥下障害についてさらに詳しくなりたいと考える看護師さんにおすすめの資格です。

執筆:看護roo!編集部

 

 

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