「病院職員の降格は違法」理学療法士マタハラ訴訟で最高裁が判決
広島市の病院に勤務していた理学療法士の女性が、妊娠をきっかけに降格されたのは、男女雇用機会均等法に違反するとして病院を訴えていた裁判で、最高裁判所は降格を違法とする判決を下しました。いわゆるマタニティ・ハラスメントについて、最高裁が判断を出すのははじめてのことで、世間の大きな注目を集めています。
(参考)病院職員のマタハラで最高裁弁論 病院が敗訴の可能性も(2014/9/27)
この判決については新聞各紙がトップページで紹介し、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられるなど、社会の関心が高まっています。同時に、マタハラをなくすための草の根運動も広がりを見せはじめました。
マタハラ主張は「周りの迷惑」?
妊娠や出産、子育てと仕事を両立できる社会づくりを目指して活動する「マタニティnet」がその1例です。マタニティnetが政府に対して、「妊娠・出産を理由とした不利益な扱いの禁止の徹底」を求めて行った、ネット上の署名活動には、8000人を超える署名が集まりました。
これまでマタハラ問題には同じような批判がつきまとってきました。「権利ばかり振りかざすのはよくない」「妊娠によって労働力が落ちるなら、地位や給与もさがって当然」「まわりの迷惑を考えてほしい」等々。
ですが、今回の理学療法士の例をみると、必ずしもこうした批判は当てはまらないことがわかります。女性はもともとリハビリ科の訪問チームの1員として働いていました。その後、院内のリハビリチームに移り、10年勤続して副主任となります。
訪問リハから院内へ移動も 作業負担変わらず
第1子妊娠時は院内のチームでしたが、復帰後は再び訪問チームに所属。その後、訪問看護施設に移動し、副主任として子育てと両立します。第2子妊娠を妊娠した後に、軽い業務へ配置転換を申し出たところ、院内のチームに戻ると同時に副主任を解かれました。
病院側は「裁量権の範囲で行った」としていますが、最高裁はこれをしりぞけます。最高裁が指摘したのは、要約すると次の内容になります。
- ▼院内チームに移ったことで患者宅の訪問は不要となったが、リハビリ業務自体の負担が軽くなったわけではない。
- ▼降格は、軽い業務へ転換中の一時的な対応ではなく、その後も非管理職としてとどめるなど、女性の給与面での不利益は大きい。
一般社会より厳しい 病院内のマタハラ問題
今回の判決が、今後、同様の事例に与える影響は小さくありません。病院や企業も対応を迫られるでしょう。一方で、必要最低限の看護師配置数しかもたず、ぎりぎりの人数で働かざるをえない環境が改善されないかぎり、マタハラ問題の根本解決には遠いともいえます。
病院は女性が多数を占める職場にもかかわらず、一般社会よりも妊娠、出産に関して厳しい対応をする傾向もあるといわれています。すぐに環境を変えることは難しいことですが、まずは社会の動き、法律の動きを知って、自分の身を守ることも大切かもしれません。
(参考)
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