「看護職の役割拡大の推進」をめざす日看協の特定看護師像とは

平成28年度 日本看護協会通常総会

 

日本看護協会(以下協会)が2015年度に引き続き2016年度の重点政策に挙げたのは「地域包括ケアシステムの構築と推進」「看護職の労働環境の整備の推進」「看護職の役割拡大の推進」「少子超高齢社会に対応する人材育成」の4つ。

中でも、「看護職の役割拡大の推進」の重点事業として挙げられている特定行為研修制度については、質疑の際に会場から多くの要望や疑問が聞かれた。その様子をリポートする。


 

研修を受けていない看護師が特定行為を行うことはできる?
特定看護師から認定特定看護師(仮称)へ

 

研修を受けていない看護師が特定行為を行うことはできる?

看護師が特定行為を行うことについては、同制度が制定される以前から、各施設で医師の指示により行われていたという状況があった。
これについて、洪 愛子常任理事は「この制度が制定されたことにより、これまで診療の補助かどうかが不明であった行為、いわゆるグレーゾーンの行為の一部は特定行為として明確化された」と話す。
そして、診療の補助であっても特定行為と同等に侵襲性が高く、技術的な難易度が高い医行為は「安全性の担保なくしては看護師が実施すべきではない」という協会の考えを示し、「(特定行為研修を受けていない看護師に)医師よりそういった医行為の指示があった場合は、慎重に対応いただきたい」と述べた。

 

この問題について、別の参加者からも「特定行為を指示されても(研修を受けていない看護師は)断れるのか」と重ねて質問があり、さらに「(特定行為を指示されても)実施しない看護師を不利益扱いにしないということを協会として要望してほしい」とも述べられた。

 

これに対し、洪常任理事は「今までは(特定行為を指示されると)断れなかったが、研修制度ができたことで断れるようになった」という声があることを紹介し、さらに会場にいる参加者に向け、「ぜひ、研修を修了していない看護師が特定行為を医師より指示され、拒否できない状況が発生していないかを自施設で確認してほしい」と訴えた。

 

さらに、「院内の体制整備を行うことは、看護管理者の責任とも考えられる」と指摘し、「この制度の創設を機に、自施設において診療の補助行為の実施状況をぜひ確認していただき、患者さんと実施する看護師の双方の安全性の観点から、特定行為を含めた難易度の高い診療の補助行為について自施設で対策を講じていくことが求められる」と述べた。

 

また、「特定行為を業務とする看護師は責任に見合った処遇改善、事故の際の支援や救済方法が示されているのか」という質問に対し、洪常任理事は特定行為研修を行う指定機関は安全対策に関するシステムとして、特定行為安全管理委員会を設置することが求められていることを説明した。
また、特定看護師が所属する施設でも、医師の承認を得た手順書に沿って行うことで、特定行為を行う病態の範囲を定めていることや、あくまでも医師の指示下で行う診療の補助という位置付けであるため、「責任は(看護師だけではなく)医師もともに担うということが基本」だと述べた。

 

なお、特定行為により何らかの事故が起こった場合の救済方法については、それが診療の補助の一つであることから、看護職賠償責任保険制度の補償に含まれることが確認されていると答えた。

 

特定看護師から認定特定看護師(仮称)へ

2017~2019年度の3年間、看護研修学校と神戸研修センターでの認定看護師教育過程を休講することが先日、協会のホームページにて発表された。
これに関連して、坂本すが会長が初日の挨拶の中で、「認定看護師教育に特定行為研修を組み込んだ研修の検討開始」について触れたが、洪常任理事より詳しい説明が行われた。

 

現在は認定看護師の資格取得後に、特定行為研修を受けるが、認定看護師教育の中に特定行為研修を取り入れることで、「専門性や病態判断力を強化することに加え、より高度なアセスメント力を発揮することが期待できる」という。

 

また、今後は、教育環境の整った大学、あるいは大学院での特定行為研修が拡大するよう、県協会と連携した働きかけを行うとともに、教育経験が豊かな認定看護師教育機関が、特定行為研修を実施できるよう、(協会が行っている特定行為研修)プログラムの情報提供を行うなど、支援していくことが明言された。

 

これについて、会場からは看護研修学校と神戸研修センターでの認定看護師教育過程の休講による、認定看護師育成人数の減少などの懸念が聞かれた。

 

ある参加者は休講期間中に教育されなくなる具体的な認定看護分野とその育成人数を挙げ(表)、休講期間の短縮やほかの教育機関への委託の検討などを求めた。

 

皮膚・排泄ケア分野 150名から120名に減少。東北と関東甲信越での教育機関がなくなる。

 

集中ケア分野 教育機関は1施設のみとなり、60名から30名に減少。
糖尿病看護
分野
教育機関は1施設のみとなり、48名が18名に減少。
小児救急看護分野 教育機関はなくなり、0名に。
認知症看護
分野
180名から150名に減少。神戸研修センターが休講するため、東海地方から西日本にかけての養成機関は0になる。

日本看護協会2016年度教育機関別開講状況・定員数一覧より(PDF)

 

洪常任理事によると、協会としてもこれについては認識しており、ほかの休講している施設が再開できるような働きかけをしているところだと説明する。
小児救急看護分野については、現在救急看護認定教育をしている教育機関で開講できないかを交渉しており、また認知症看護分野や緩和ケア分野については、教育機関として新たに申請される機関があることから、協会として可能な限り支援していくとした。

 

今回の認定看護師教育機関の休講は、協会として「さまざまな教育機関がさまざまなレベルで研修生を修了させてくる」ことから「どこで特定行為のクオリティや安全を担保するか」を議論した結果だという。

それらを担保するには、「これまで臨床現場で最も活躍してきた認定看護師こそがリーダーになっていく必要がある」とし、超高齢化社会において質の高いキーパーソンとなる看護師が育っていない現状では、「10年後、このクオリティや安全は守れないし、地域包括ケアシステムの中でのキーパーソンにもなれないと判断した」と説明した。
あわせて協会としては、将来的に10名に1名くらいは特定行為ができる認定看護師を育てていくということが目標だと明言した。

 

なお、認定看護師教育に特定行為研修を組み込んだ研修を経て誕生した看護師について、「特定認定看護師(仮称)」という呼称が「将来構想プロジェクト」の中の教育関連事業の中間報告プロジェクトの中で使用されていたことについても参加者から質問があった。

洪常任理事は、呼称をはじめ、この研修はこれから検討を開始する段階であることを重ねて強調し、「認定看護師をはじめ、認定看護師教育にかかわっている方や現場の看護管理者、都道府県看護協会の会員などから、これから1年かけて意見を聞いていく」と話した。

 

【看護roo!編集部】

 

 

2016年6月7日(火)~8日(水)
平成28年度 日本看護協会通常総会

【会場】

幕張メッセ 幕張イベントホール

 

【プログラム】

6月7日(火)  
会長挨拶、来賓紹介 など
議決事項 第一号議案 名誉会員の推薦(案)
第二号議案 定款及び定款細則の改正(案)
第三号議案 平成 28 年度改選役員及び推薦委員の選出について


6月8日(水)
選挙結果報告
報告事項 報告事項1 平成 27 年度 事業報告
報告事項 2 平成 27 年度 決算報告及び監査報告
報告事項 3 平成 28 年度 重点政策・重点事業並びに事業計画
報告事項 4 平成 28 年度 資金収支予算及び収支予算
退任役員代表挨拶 など

 

【学会HP】

公益社団法人 日本看護協会

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