ナースの被災地支援【1】認知症・孤独死防止のパンフ制作

2011.3.11.東日本大震災。その直後にはDMAT等の医療チームでナースが派遣されました。今も継続したケアのため、まだまだ多くのナースが必要とされています。

そんな中、災害医療の知識がなかったり、臨床現場から離れていたりすることで「私には何もできないのかな」と思ったナースは多いのではないでしょうか。

 

私、松鳥むうもその1人。今はイラストレーターで現役ナースではなく、被災地に行ってもできることなんてないかな・・・と思っていました。

でも実際には、豊富な経験がなくても、臨床現場から離れていても、ナースだからできることがあります。そして、自分にできることを実践しているナースも沢山います。

 

この連載では、さまざまな形で支援活動を行なっているナースにお話を伺い、元精神科ナースのイラストレーター・松鳥むうがご紹介します。

第一回目は、私自身のお話から。

 


 

今回のナース:松鳥むう(イラストレーター)
元精神科ナース。藍野学院短期大学看護学科卒業。駒木野病院に就職。男子急性期病棟(閉鎖)、認知症治療病棟に勤務後イラストレーターに転身。旅・看護・保育系の雑誌を中心に活躍中。

 

 

村から自殺者や孤独死は一人も出したくない!


私がお手伝いしたのは、津波の被災地・岩手県野田村。訪れたのは震災から1ヶ月後。避難所にいる認知症の患者さんが半壊している家まで帰ってしまったり、これから仮設住宅ができても、阪神・淡路大震災のときのような自殺者・孤独死が出ることが心配されていました。それを防ぐために、周囲の人たちが協力して心のケアにあたれるようにと、もともとお世話になっていた野田村にある古民家宿の奥さん(元ナース)と、村の保健師さんから依頼を受けたんです。「村からは自殺者や孤独死は一人も出したくない!」という強い気持ちを感じました。
私は元精神科Ns.で認知症ケアの経験もあり、イラストも描けるので、誰にでもわかるような心のケアについての冊子を作ることになりました。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援1精神科ケアブック2

(6種類の『こころのケアBOOK』)

 

 

実際に作った冊子は6種類。
『野田村のみなさまへ(一般成人用)』『お子さまがおられるみなさまへ』『高齢者のみなさまへ(仮設住宅入居後・セルフケア用)』『認知症の初期症状とケア』『高齢者のケア担当のみなさまへ』『ケアにあたるみなさまへ』の対象別に作りました。
それぞれ、見開き1~2枚のものですが、青森のボランティアさんの協力でハンドマッサージのコラムを作ったり、認知症のケアでは細かな具体例を挙げたりしました。被災者本人やケア担当者など皆がわかりやすく、親しみやすいものを、と、村の方々から親しまれているゆるキャラ「のんちゃん」を入れたり、村独自の「あいうえお体操」も入れました。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援1精神科ケアブック3

(子どもは年代別に症状と対応を記載)

 

 

また、同じ村の中でも津波の被害にあって家を失った方・そうでない方がいたために、その人間関係に溝ができ始めているのを目の当たりにしました。「私は潮を被ってない(=津波の被害にあってない)から」と、避難所にいるご近所さんが心配でも、気まずくて避難所に出向けない方もいらっしゃいました。だから、この冊子を見て、両者が自分でできることから少しずつ関わりをもってもらえて、溝が埋まっていく助けになれば、と思っていますいけば嬉しいですね。

 

 

 

元精神科ナースとしてできること・できないこと

 

実はそれまで、「精神科ナースだから、どう接したらいいかアドバイスして」と言われても、なくしたものの多さや、津波の恐怖を思うと何も言えませんでした。精神科ナースとして、そういう自分を情けなく思う気持ちもあったので、声をかけてもらえて嬉しかったですね。その反面、災害看護の心のケアに関しては私も素人です。なので、災害看護の書籍やネット、過去の災害の事例や村の保健師さんからもらった資料など、片っ端から読みました。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援1精神科ケアブック4 

 

本来、心のケアは、長期間寄り添って信頼関係を築いていかないとできないものです。でも、自分の生活を考えると、被災地に長期滞在することや、定期的に長期間通うことは、時間的にも金銭面的にも難しい。そんな中、今回作成させて頂いた『こころのケアBOOK』シリーズは、現地で必要な人が必要な時に見てもらえます。


実はこの冊子、野田村だけではなくて、気仙沼市や宮古市にも配布されはじめています。
対面してのケアだけがボランティアではないんですよね。こうやって、自分が関わったものが広まって多くの人に届いていくというのも、ボランティアのひとつの形だと気づきました。
これから、まだまだ続く心のケア。『こころのケアBOOK』が何かしらの「きっかけ」になってくれたら嬉しいです。

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援1精神科ケアブック1

(保健師さんとDr.からの依頼で、村の医療MAPも作成) 

 


 

【ナースの被災地支援 その他の記事】

Vol.1 認知症・孤独死防止のパンフ制作―松鳥むうさん(イラストレーター)

Vol.2 自分の得意を活かす!メディカルアロマセラピー―三好里恵さん(メディカルアロマセラピスト)

Vol.3 キャンナスで「自分でできる範囲」の継続支援―在間さとみさん(キャンナス)

 


 

【松鳥むう】元精神科ナース。精神科病棟に勤務後、イラストレーターに転身。旅・看護・保育系の雑誌を中心に活躍中。

 

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