ボランティア看護師被災地レポート「気仙沼で過ごした1週間」/後編
今回のボランティア派遣では、医師、看護師、理学療法士、鍼灸師、歯科医師、栄養士などがチームを組んで活動を行っており、草間さんは、医療チームメンバーの関係で鍼灸師として活動。
仮設の“治療院”は、避難所で唯一プライバシーを守れる場所とあり、患者さんからは様々な悩みが飛び出したそうだ。
「主訴の多くは、ストレスや不便な生活からくる肩こりや腰痛、不眠などですが、患者さんの話を聞けば聞くほど“病気の種”が隠れていることに気づきます。
例えば、新聞配達の仕事に復帰できた方は、夜避難所を出て、朝帰ってくる生活で、まわりがガヤガヤしているなかで寝なければならず、自然と体も不調になっていました。
また、仮設住宅に入りたいものの、次の生活が不安でジレンマに陥るなど、皆さん目に見えない病に苦しんでいました」

草間さんが活動した仮説の鍼灸治療院
そんなギリギリの状況のなかで、患者さんの支えになっていたのは確かに「看護師」だった。
「当時、現地での大切な仕事の一つが“医療ニーズの発掘”でした。
東北の方って本当我慢強いので、ギリギリまで医師に相談するのを我慢してしまう傾向があります。取り返しがつかなくなる前に、患者さんの状態を把握しなければならず、積極的にコミュニケーションをとっていくことが大切。
そういった意味で、向こうで出会った看護師さんは、皆さん明るいしパワフルな方ばかりでした。明るい看護師が明るい空気を作っていたのは間違いないです。
日々の細やかなコミュニケーションから救われた患者さんも多かったと思いますよ」

1日に何度もミーティングを行うことで問題点はすぐに洗い出す
実際現地での看護師の活動を聞いてみると、
「今でこそ患者さんを取り巻く環境は整いつつありますが、当時はまだ模索している状態で、看護師の仕事は主に、被災されたお宅をまわる“在宅”と、避難所や医療施設で医療チームと協働する仕事に分かれていました」とのこと。
「私が行ったときは、国内だけでなく、海外からもボランティアの看護師さんが来てました。
向こうで出会った看護師さんは6名くらいです。皆さんとても元気で、余談ですが、夜になっても宿舎では盛り上がっていました。楽しかったです(笑)」

会議は常に真剣そのもの
「先ほどもお話しましたが、“患者(医療ニーズ)の発掘”が何より大切になってきます。
教室や体育館を回って、わずかな異変を察知し、医師やほかのスタッフ、または自治体などのミーティングにフィードバックするんです。
やるべきことは、血圧測ったり、簡単な手当てだったりと難しいことはありませんが、看護師さんたちのフィードバックが次の医療方針につながっていきました」
毎日6:00起床、朝食後「医療者連絡会議」を経て、避難所へ。
9:00からは避難者の代表や、行政、医療者との連絡会議、その後、午前の診察や昼食を経て、医療者のみのミーティング、午後の診察後、再び「医療者連絡会議」と、1日のなかで“患者や環境の共有”にかなりの時間を割いていたという草間さん。
情報交換の際、看護師からのフィードバックが“素の声”として重宝されたという。

気仙沼市の復興はまだまだ始まったばかり
最後に、草間さんは1週間のボランティア活動を振り返ってこう話す。
「僕は、現地で出会った医療チームとの“チーム力”や、避難所の方とのコミュニケーションの大切さを改めて学びました。血圧測れればコミュニケーションもとれるし、必ずみんなの役に立ちます。
僕がいた頃はちょうど5月でハエが出始めたころでした。普段の生活では考えられない状況もありましたが、ぜひ、一度現地の“ニオイ”を肌で感じてきて欲しいです。
今までの価値観も少なからず変わると思うし、何より看護師としての成長にもつながると思うんです」
東京に戻るときには「むしろこちらこそありがとうございました、と感謝の気持ちでいっぱいでした」という草間さん。
「またボランティア行きますか?」と聞いてみると、
「もちろんです。まだまだ復興途中、看護師をはじめ医療者の力はこれからも当分必要でしょうね。でも、復興した後は普通に遊びにも行きたいですよ(笑)」と一言。
あの震災から早1年。復興に向け歩み続ける被災地では、看護師のパワーがまだまだ求められているようだ。
【看護roo!編集部】
草間健二…鍼灸師・看護師。「鍼灸 健美・大山」(東京都板橋区大山東町28-6 ダヴィンチ板橋Ⅰ-203)院長
http://kenbi-ohyama.net/index.html
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