最終更新日 2018/02/15

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎とは・・・

虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん、ischemic colitis〈IC〉)とは、大腸の可逆的な血流障害により、限局的に大腸粘膜に浮腫、出血、潰瘍などを生じる急性疾患である。

臨床経過により、(1)一過性型(transient type)、(2)狭窄型(stricture type)、(3)壊疽型(gangrenous type)の3型に分類される。

発生頻度は不明で、男女比は3:7と女性に多い。好発年齢は平均60歳前後であるが、動脈硬化のない若年者にもしばしば見られる。

【症状】
突然の腹痛と圧痛、その後に続く血性もしくは水様下痢が典型的である。他に悪心・嘔吐や腹部膨満感、発熱を認めることがある。腹痛が左下腹部に多いのは、虚血性大腸炎の好発部位が左側結腸であることにも起因する。
一過性型では通常、腸管安静のみで1週間以内に症状が改善するが、狭窄型では発症1カ月を経過しても開放性潰瘍が残存し、管腔狭小化を起こし症状が長期にわたることがある。病変が筋層に及ぶと、腹膜刺激症状として反跳痛を認めることがある。手術適応となり得る壊疽型の場合には、腹痛は通常より激しいものの、発症初期には腹膜刺激症状を伴わないこともあるため注意が必要である。

【診断】
急な腹痛や血便を認めた場合には虚血性大腸炎を疑い、抗菌薬を未使用であることを確認し、便培養あるいは大腸生検組織の細菌培養などで、薬剤性大腸炎、感染性腸炎を除外することが必須である。特に虚血性大腸炎は下行結腸からS状結腸の間に発症することが多く、他の急性腸炎との鑑別点になることが多く、確定診断には大腸内視鏡検査は極めて有用である。
急性期には粘膜の発赤や浮腫、出血、びらんや潰瘍などが観察されることが一般的だが、経時的変化が著しく、軽度例では数日以内に病変が消失してしまうことも多い。また、潰瘍病変は半数以上で縦走性にみられる。

【治療】
腸管安静による保存的治療が原則で、高度の炎症反応や症状が強い場合には、入院による絶食・補液管理が必要かつ有用である。まれに急性期に腸管壊死や穿孔に伴う腹膜刺激症状や大量出血があった場合には外科的切除が必要となる場合もあり注意が必要である。

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