1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. 場面別でわかる看護のポイント>
  4. 脳梗塞で入院した患者さん ルーチンのケアが優先?それともリハが優先?|場面別でわかる看護のポイント【1】

2017年01月05日

脳梗塞で入院した患者さん ルーチンのケアが優先?それともリハが優先?

自分で考えて行ったケアが、後から先輩看護師に注意されることってありますよね。「それなら先に指示してくれればいいのに…」なんて思ったり…。
本企画では、新人看護師が普段のケアで間違いやすい、もしくは気付きにくいポイントについて、ベテラン看護師が解説します。ぜひ、ベテラン看護師の「考え方」を知り、日常の看護で実践してみましょう。

 

どう考える?どう動く?場面別でわかる看護のポイント【2】

脳梗塞で入院した患者さん ルーチンのケアが優先?それともリハが優先?

小池伸享
日本赤十字九州国際看護大学 専任教員

 

〈目次〉

◆ここがポイント!
POINT1 ケアの優先順位がつけられていない
POINT2 治療方針が把握できていない
POINT3 早期リハビリテーションの重要性が理解できていない

◆どうすればよかった?
1)ケアの優先順位をつける
2)看護過程をきちんと理解する

 

患者紹介Bさん、70歳代、男性

入院時の診断名

脳梗塞

 

既往歴

高血圧・脂質異常症(高脂血症)

 

現病歴

構音障害、左上下肢に麻痺を認め、脳梗塞と診断され入院となった。入院翌日より、構音障害、左不全麻痺のリハビリテーションが始まっていた。

 

経過

入院日より、アテローム血栓性脳梗塞と診断され、オザグレルナトリウム、ヘパリン、エダラボンの点滴治療がなされており、経過は順調であった。
また、バイタルサインも安定しており、意識レベルはJCS1、構音障害、左上下肢の麻痺は同様であった。
医師は発症翌日(入院1日目)から早期リハビリテーションを予定し、リハビリテーション科へ依頼していた。しかし、リハビリテーション科の都合により入院2日目午後からの介入予定となっていた。

 

先輩看護師はなぜ、
リハビリテーションを早めるよう
指示したのでしょうか?

 

 

ここがポイント!

POINT1 ケアの優先順位がつけられていない

 

新人看護師は、リハビリテーション科からのスケジュール変更依頼に対し、(この患者さんの治療方針を把握していなかったこともありますが)ケアの優先順位を考えずに断ってしまいました。
「一斉に清拭したほうが合理的ですよね?」というセリフからも分かるように、患者さん個々のケアの優先順位を考えるのではなく、「自分が任せられた看護業務をきちんとやり遂げる」方を優先してしまっています。

 

確かに、ほかの受け持ち患者さんへのケアもあるなかで、スケジュールの変更を行うという多重課題に柔軟に対応することは新人看護師にとっては難しいことかもしれません。
しかし、患者さんの情報をアセスメントし、医学診断、看護診断に対して優先順位をつけて看護を実践する…つまり看護過程を展開するということが、本来の看護師の役割のはずです。

 

POINT2 治療方針が把握できていない

 

医療はチームで行われています。 医師は診察や検査結果などから治療方針を定め、投薬などの治療内容を確定していきます。
看護師はその治療方針に沿って投薬・点滴などを行いながら患者さんのニーズに沿って援助を行い、患者さんの状態を観察し、医師に報告・共有します。

 

チームとして医療を行う以上、治療内容だけではなく、その患者さんに関わるチーム全員が治療方針も把握しておかなければなりません

 

POINT3 早期リハビリテーションの重要性が理解できていない

 

この場面では、先輩看護師が「なぜ、たとえ半日でも早くリハを開始できるよう指示したのか」を、新人看護師は理解できていません。

 

脳卒中などの長期の安静臥床が求められる患者さんは、廃用性筋萎縮が進行するため、可能な限り早期からリハビリテーションを開始する必要があります

 

脳卒中患者さんの健側上下肢は、発症からリハビリテーション開始までの期間が長くなればなるほど廃用性筋萎縮が著しくなり、さらに歩行不能な患者さんの場合ほど筋萎縮が進行します
また、早期離床を行うことは、深部静脈血栓症、褥瘡、関節拘縮、沈下性肺炎など長期臥床で起こる合併症を予防することになり、入院期間の短縮につながります

 

どうすればよかった?

1)ケアの優先順位をつける

看護師は、患者さんの経過にとって何が必要であるかをはっきり理解し、判断しなければいけません。生命の危機を脱出したのであれば、次の優先順位は社会復帰に向けた機能回復です。患者さんがおかれるフェーズに沿って、キュアとケアの側面から患者さんをアセスメントすることが看護師には求められます。

本来、看護師は仕事の開始とともに、自分の受け持ち患者さんに関する情報、実施すべきケアとチーム全体の看護業務を把握した上で、自身の看護実践力を踏まえた業務の優先度や順序構成を考え、一日の業務計画を立案・実施・調整しなければなりません。

 

しかし、新人看護師にとってそれが難しいのは言うまでもありません。新人看護師が少しずつでも上記のようなことを行っていけるよう、先輩看護師や病棟全体でバックアップすることが必要です(表1)。

 

表1新人看護職員を支える組織体制の例

新人看護職員を支える組織体制の例、プリセプターシップ、チューターシップ、メンターシップ 、チーム支援型

文献(1)より引用

 

とはいえ、新人看護師であっても看護師のライセンスを得た以上、プロとして、患者さんにとって必要なケアや治療・処置の実施・調整、患者さんの経過にとって何が必要であるかをはっきり理解し、判断しなければなりません。
そのためには、十分な専門的知識と判断力が必要であり、看護師は専門職として生涯学習が絶対的に必要な職業なのです。

 

2)看護過程をきちんと理解する

治療方針の重要性は先に説明しましたが、以下に、看護師が行う看護過程の展開においても治療方針が重要であるということについて説明します。

 

アメリカ看護師協会(American Nurses Association;ANA)は「看護とは実在または潜在する健康問題に対する人間の反応を診断し、治療すること」と述べています(2)。その診断した問題を解決(治療) するための科学的な思考過程を表したのが看護過程です。つまり、看護過程は、「個別的かつ人間的ケアを実践するための系統的な問題解決アプローチ方法」を表したものであり、看護を実践するのに必要なツールなのです。

 

今回、新人看護師は受け持ち患者さんに対する医師の治療方針を把握しておらず、清拭を行うことを優先しようとしました。これをANAが述べたように、「健康問題に対する人間の反応を診断し、治療すること」に当てはめて考えると、「清潔ケア」の看護は実践できていたのかもしれません。

しかし、この患者さんに対する「入院翌日から早期リハビリテーションを介入して、患者さんの機能回復を優先的に行う」という健康問題に対する医師の治療 との兼ね合いを考えていません
つまり、チーム医療として行うべき治療が医師と看護師でちぐはぐになってしまっているのです。 これでは、患者さんは最適な療養環境におかれているとはいえません。

 

看護過程を展開する上で、医師の治療方針はわれわれ看護師にとってとても重要な情報です。そういった客観的・科学的情報と、看護師による 主観的情報をアセスメントし、統合することで初めて看護診断がなされるのです。そして、問題に対するプランの立案、プランの実施、プランの評価と一連のプロセスをたどることが看護過程の展開といえます。

 

経験や慣習にのみ頼るのではなく、科学的根拠(エビデンス)を持って行うことで、より効果的な看護が行えると言えるでしょう。

 


[文 献]


[マンガ]
おのようこ


著作権について

この連載

もっと見る

いちおし記事

「ぼくねぇ、もうすぐ死ぬんだ…」にどう答える?

マンガ『おうちで死にたい~訪問看護の現場から~』の続編です。 [ 記事を読む ]

褥瘡の悪化を防ぐのに最適なポジショニングは?

褥瘡発生原因のアセスメントから「動きの過程」と「座位の保持」を評価した上でどのようなポジショニングがベストかを解説します。 [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

上司に怒りを感じるのはどんなとき?

投票数:
1489
実施期間:
2017年10月31日 2017年11月21日

なかなか寝られないとき、どうしてる?

投票数:
606
実施期間:
2017年11月03日 2017年11月24日

看護師国家試験、苦手科目は?

投票数:
768
実施期間:
2017年11月07日 2017年11月28日

一番好きな医療ドラマはどれ?

投票数:
532
実施期間:
2017年11月10日 2017年12月01日

J-アラート作動(弾道ミサイル発射)!どうする?

投票数:
394
実施期間:
2017年11月14日 2017年12月05日

「こんなドクターいたらいいな…」一緒に働いてみたい俳優は?

投票数:
333
実施期間:
2017年11月17日 2017年12月08日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者1228

78歳女性、持続する発熱と下腹部から臀部回りの痛みを訴え、老健施設より救急搬送にて来院しました。肋骨脊柱角叩打痛もあり、尿路感染症の診断で入院となりました。尿の培養は104CFU/mLであり、検鏡にてブドウ球菌様のGPCが認められ、3日後にブドウ球菌と確定しました。当初から抗菌薬としてVCMが開始とされていました。1週間以上抗菌薬を投与してもなかなか発熱も痛みも治まらず、腹部CTを撮影したところ、腸腰筋膿瘍であることが判明し、血液培養からはMRSAが検出され、臓器移行性も考えて抗菌薬をLZDに変更されました。解熱と炎症所見の改善がありましたが、投与2週間目に白血球と血小板が減少、また貧血傾向になりました。次のうち最も考えられることと行うべきことはどれでしょうか?

  • 1.白血球や血小板減少は、抗菌薬による骨髄抑制が原因と考えられるため、再度、VCMに変更するなど、他剤へ変更することを検討する。
  • 2.貧血傾向は、抗菌薬投与による腎機能障害から来る、腎性貧血であるため、医師と相談し、腎性貧血の治療を実施してもらう。
  • 3.LZDは臓器移行性が最も良いため、白血球減少や血小板減少、貧血に対し治療を行いながら使い続ける。
  • 4.解熱と炎症所見も改善していることから、抗菌薬を中止とし経過を見る。
今日のクイズに挑戦!