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2017年03月13日

硬膜外投与と静脈投与ではどちらが疼痛緩和に有効?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

今回は「硬膜外投与と静脈投与」に関するQ&Aです。

森 至弘
医療法人医誠会医誠会病院消化器外科医長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

硬膜外投与と静脈投与ではどちらが疼痛緩和に有効?

硬膜外投与です。

〈目次〉

 

硬膜外投与ってなに?

硬膜外投与とは、脊髄神経が存在するクモ膜下腔の、1つ外側の硬膜外腔という空間に麻酔薬を注入することで、神経をブロックして痛みを抑える鎮痛法で、広い意味での局所麻酔の一種です(図1)。

図1局所麻酔と全身麻酔による侵害刺激の差異(2,3)

局所麻酔と全身麻酔による侵害刺激の差異

 

術後の鎮痛に用いる場合には通常、硬膜外腔に細いカテーテルを入れ、そこから持続的に薬剤を投与する持続硬膜外麻酔を行います(図23)。また、局所麻酔薬以外に、モルヒネ等のオピオイド(医療用麻薬)を投与することもできます。

図2腰部の硬膜外腔

腰部の硬膜外腔

図3硬膜外カテーテルの挿入

硬膜外カテーテルの挿入

 

静脈投与ってなに?

経静脈的にモルヒネ等のオピオイドを全身に投与することで疼痛を管理する鎮痛法です。中枢神経と末梢神経の両方に作用して鎮痛効果を発揮します。

 

硬膜外投与と静脈投与ではどう違うの?

静脈投与は点滴があればそこから薬剤を投与できますが、オピオイドを全身に投与するため、呼吸抑制や、腸管蠕動の抑制による便秘や吐き気などの副作用が出現する可能性があります。体動時の鎮痛効果は硬膜外麻酔に比べて劣るとされており、また、オピオイドの全身投与の際の鎮痛効果が得られる投与量は個人差が大きいため、患者ごとに投与量の調節が必要となります。

硬膜外投与は静脈投与より鎮痛効果(特に体動時)にすぐれ、術後の呼吸器合併症が少なく、消化管運動も早期に回復するとされています。しかし、穿刺に技術を要し、また患者の脊椎の形状や体型、手術部位によってはできない場合もあります。穿刺中に安静を保てない患者や出血傾向のある患者にも行うことはできません。また、硬膜外腔の血腫や膿瘍、硬膜穿刺による頭痛や神経障害などの特有の合併症もあります。

 

表1静脈投与と硬膜外投与の利点と欠点

  IV-PCA(静脈投与) 硬膜外PCA(硬膜外投与)
利点
  • 投与経路の確立が容易
  • 適応症例が多い(硬膜外穿刺禁忌症例に も使用できる)
  • 効果発現が速い
  • 体動時の鎮痛効果が高い
  • 術後呼吸器合併症が比較的少ない
  • 消化管運動の早期回復
  • 大手術後、血管手術後の循環器合併症の減少
欠点
  • 体動時の鎮痛効果が劣る
  • 術後呼吸器合併症が比較的多い
  • 消化管機能回復の遅延
  • 悪心・嘔吐
  • 瘙痒感
  • 過度鎮静作用による離床の遅れ
  • 呼吸抑制
  • 部位・併存疾患により対象が限定
  • 穿刺に特別な技術が必要
  • 血圧低下
  • 悪心・嘔吐
  • 瘙痒感
  • 神経障害
  • 脊髄硬膜外血腫
  • 遅発性呼吸抑制(モルヒネ)

IV-PCA:intravenous patient-controlled analgesia PCA:patient-controlled analgesia 井上莊一郎, 平幸輝, 瀬尾憲正:IV-PCA と硬膜外PCA(PCEA)の選択と適応 - IV-PCA の適応- . 日臨麻会誌 2010;30:676-682. より一部改変して引用

 

硬膜外投与と静脈投与では、どちらが疼痛緩和に有効?

前述のとおり、単純に鎮痛効果を比べると硬膜外投与のほうが効果が高いとされています。

しかし、静脈投与も個々の患者に合わせて投与量を調節すれば十分効果を発揮するので、患者の背景疾患や手術部位によってはむしろ静脈投与のほうが有利な場合もあります。

それぞれの患者に合わせて最適な鎮痛法を行うことが重要です。

 

⇒〔術前・術後ケア〕記事一覧を見る


[文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

著作権について

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