医療的ケア児への在宅看護-事例2

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は医療的ケア児への在宅看護の事例について解説します。

 

 

佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師

 

 

訪問看護は、各家庭の環境に合わせながら、訪問時の児の様子のみではなく、訪問前までの様子も踏まえて総合的に判断する。ここでは、実際の様子を訪問看護の流れに沿って紹介する。

 

Bちゃんの場合(12歳/女児/訪問看護・訪問リハビリ利用/週3回訪問による授業)

訪問看護の様子

清拭

・気管カニューレを抜去しないよう、気管カニューレの固定状況をケア前に確認する。
・訪問時は一人で清拭することが多いため、側臥位時の支えを確実に実施する(図1)。必要に応じてクッション等の固定具を使用する。

 

図1 清拭

清拭

 

洗髪

・頸部を後屈した際に起こる頸椎圧迫による動脈血流不良が起きないように、頸部は過度に後屈させない(図2)。

 

図2 洗髪

洗髪

 

・ペットボトルのキャップに穴を開けてシャワーの代わりにするなど、家庭内にある物品を代用する(図3)。

 

図3家庭内にある物品を代用する

家庭内にある物品を代用する

 

肺理学療法

・Bちゃんの様子、呼吸の状態によって、施行する部位、方法(クラッピング、スクイージングなど)を選択する。
・施行前後の呼吸音や胸郭の動きを見て、肺理学療法図4)による効果を評価する。

 

図4 肺理学療法

肺理学療法

 

体位変換

・Bちゃんは自分で体位を変えることができないため、2時間ごとに体位変換をする(図5)。身体の拘縮の状況、程度によって、固定具を選択する。
・本人の安楽な反応(表情、脈拍、呼吸)などを把握する。

 

図5 体位変換

体位変換

 

家族との関わり

・日々の訪問を通じて、きょうだいの思いにも目を向け、Bちゃんと関わりがもてるようにする(図6)。

 

図6 関わりがもてるようにする

関わりがもてるようにする

 

 

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家族への対応

医療的ケア児の親は、24時間、365日、家庭内で介護を行っているため、疲労が蓄積される。

 

負担の軽減を図るために、方法の検討や社会的資源(レスパイト利用)の活用等を提案する。家庭内でのケアは、介護者がケアしやすく、経済的な負担が少なく、かつ安全な方法を家族と共に検討し、家族が適切なケア方法を選択できるようにする。

 

また、医療的ケア児に関わる医療者や多職種者が、ケアの方法を統一できるよう、訪問看護師、理学療法士、保健師、保育士、教員などが常に情報を共有して実践していくことも重要である。

 

また、親は医療的ケア児への関わりを優先せざるを得ないため、きょうだい児は我慢を強いられることがある。医療的ケア児へのケアと同様に、家族一人ひとりの観察とコミュニケーションを密にし、必要に応じた支援を行う。

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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