小児への経鼻栄養チューブの挿入と管理
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は経鼻栄養チューブの挿入と管理について解説します。
山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長
目次
経鼻栄養チューブの挿入と管理
経鼻栄養チューブは、正しく胃内に挿入されていることを確認し、栄養剤の誤注入を防止することが大切である。
1 必要物品の準備(経鼻胃の場合)
看護師は手洗いを行い、必要物品を準備(図1)。
患児と家族に説明を行う。
患児の体格と状態に合わせたチューブのサイズ、種類を用意する。
図1 経鼻胃の場合の必要物品

①経鼻栄養チューブ
②潤滑剤
③ガーゼ
④テープ(仮止め用・固定用)
⑤カテーテルチップシリンジ
⑥聴診器
⑦ペンライト
⑧指ガード
⑨手袋
⑩pH試験紙
⑪膿盆
⑫パルスオキシメーター
⑬油性フェルトペン
POINT
■仮止め用・固定用のテープはあらかじめ顔の大きさに合わせてカットしておく。
2 患児の準備
患児の全身状態が許せば、上体を挙上し、30~45度程度のファウラー位とする(図2)。
栄養チューブ挿入時には、挿入する鼻孔と反対側に頸部を回旋するため、実施者は患児が顔を向ける側に立つ。
図2 患児をファウラー位にする

POINT
左鼻孔からの挿入
■食道は、解剖学的に気管に対してわずかに左側に位置しているため、左の鼻孔を選択したほうが挿入しやすい。
3 チューブ挿入の長さを測定
❶経鼻栄養チューブ挿入の長さを測定する。
まず、チューブ末端を患児の外鼻孔に置き、頬に沿わせて、外耳孔までたどる(図3)。
図3 チューブ末端を外鼻孔に置き頬に沿わせて、外耳孔までたどる

❷次に、外耳孔に置いたチューブの位置を動かさずに、患児のあごのラインをたどり、正中線を下って、喉頭隆起にチューブを当てる(図4)。
図4 あごのラインから正中線を下って喉頭隆起にチューブを当てる

❸喉頭隆起に置いたチューブの位置を動かさずに、胸の正中線に沿って下り、心窩部までたどる(図5)。
心窩部の位置で、チューブに仮止め用テープでマーキングをする。この位置が、チューブを挿入する長さの目安となる。
図5 胸の正中線に沿って下り心窩部までたどる

4 経鼻栄養チューブの挿入
❶介助者は患児の顔を、チューブを挿入する鼻孔と反対側に向け、頸部前屈で頭部を固定する(図7)。
実施者は、チューブ先端から5cm程度まで潤滑剤を塗り、鼻の彎曲に沿ってチューブを挿入する。
咽頭部に達して抵抗を感じたら、ゴックンと唾を飲み込むよう説明し、ゆっくりとチューブを進める。
図7 チューブを挿入する鼻孔と反対側に顔を向け、頸部前屈で頭部を固定

POINT
安全に挿入するために
■挿入する鼻孔と反対側に頸部を回旋する。
■頸部前屈位で固定する。
■挿入時、せき込んだり、体動が激しい場合は、気管に挿入された可能性があるため、直ちにチューブを抜く。
EVIDENCE
挿入時の頸部回旋・頸部前屈位
■食物は喉頭の両側にある梨状陥凹という窪みを通って、食道に入る。
■右側に頸部を回旋すると、左側の梨状陥凹が広がり、左鼻孔から挿入したチューブが通過しやすくなる。
■頸部前屈位は、咽頭と気管に角度がつき、気管への誤挿入が起こりにくい。
❷上咽頭後壁にチューブを挿入し、さらにチューブを進める(上咽頭通過)。チューブを1/3ぐらい挿入したところで、いったん挿入を止め、チューブを仮止めし、口腔内の観察を行う。
指ガードを装着して舌を押さえ、ペンライトで照らして(図8)、チューブが口腔内でとぐろを巻いていないこと、咽頭部を交差して走行していないことを確認する。
図8 指ガードを装着して舌を押さえペンライトで照らす

EVIDENCE
チューブの咽頭部交差
■チューブが、挿入した鼻孔と同側の梨状陥凹を通過せず、咽頭部を交差して走行していると、嚥下時に喉頭蓋の閉鎖を妨げる場合があり、誤嚥の誘因となる。
❸栄養チューブ末端に耳を近づけ、呼気の漏れがないことを確認(図10)。さらに、チューブを測定した長さまで進める。
図10 呼気の漏れがないことを確認する

❹❺チューブをはじめに測定した長さまで挿入したら、先端が胃内にあることを確認する。チューブにカテーテルチップシリンジを接続して吸引し(図12)、吸引液の観察とpH試験紙による強酸性の測定を行う(図13)。
図12 チューブから吸引する

図13 pH試験紙による強酸性の測定を行う

POINT
吸引液の観察
■胃液・唾液:透明。
■胆汁:黄色、胃で酸化されると緑色。
■鮮血:赤色、時間経過とともに茶色。
■気管・気管支分泌物:粘液性。
吸引液のpH測定
■胃液:強酸性(pH≦5.5)。
■pHは水素イオン濃度(図14)。
■制酸薬を服用していると値が高くなるため、胃液の確定にはならない。
図14 pHは水素イオン濃度を表す
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チューブ位置のX線撮影
■現時点で最も信頼性の高い、チューブ位置の確認法。
■チューブを仮固定して撮影し、留置位置を確認後にしっかり固定する。
5 経鼻栄養チューブの固定
固定法(1)
❶鼻孔の位置でチューブにマーキングを行う。
角を丸くカットし、切れ込みを入れた固定用テープを鼻に貼る(図15)。切れ込みの片方をチューブに巻き付ける。
図15 固定用テープを鼻に貼る

❷固定用テープの切れ込みのもう片方を、さらにチューブに巻きつける。チューブ位置確認のため、固定用テープの上から鼻孔の位置にマーキングを行う(図16)。
図16 固定用テープの上から鼻孔の位置にマーキングを行う

❸チューブを緩やかに曲げ、頬で1箇所固定する。
見やすい位置にマーキングを追加する(図17)。
図17 チューブを頬で1箇所固定してマーキングを追加する

❹耳の手前で、さらにもう1箇所、テープを巻きつけて固定する(図18)。
図18 耳の手前でさらにもう1箇所固定

固定法(2)
❶鼻孔の位置でチューブにマーキングを行う(図19)。
❷チューブを鼻孔から緩やかに曲げて、頬で1箇所、耳の手前で1箇所固定する。
図19 鼻孔の位置でチューブにマーキングを行う

POINT
固定後の観察ポイント
■鼻孔の位置とマーキング位置が一致しているか?
■固定用テープによる固定が緩んでいないか?
■チューブによる鼻翼の圧迫、固定用テープによる皮膚トラブルはないか?
6 ミルク(栄養剤)の注入
❶看護師は手洗いをし、必要物品を準備する(図20)。指示された薬剤・栄養剤・ミルクなどの量と濃度、注入時間を確認。注入液を体温程度に温める。患児と家族に説明する。
図20 ミルク(栄養剤)注入の必要物品

①ミルク(注入液)
②注入筒*
③経管栄養セット*
④カテーテルチップシリンジ*
⑤微温湯
*②~④は、新規格では紫色もしくはオレンジ色となる。
❷鼻孔の位置とマーキングが一致していることを確認。チューブが口腔内でとぐろを巻いていないこと、咽頭で交差していないことを観察、チューブから呼気が漏れていないことを確認する。
さらに内容物を吸引し、pH試験(≦5.5)を行うとともに、胃内の残量をチェックする(図21)。
図21 内容物を吸引しpH試験を行う

POINT
注入直前の確認
①マーキング位置
②口腔内・咽頭の観察
③チューブからの呼気の有無
④ 吸引液のpH試験
*チューブの抜けが疑われるときは、医師に報告し、注入は行わない。
❸ルートに誤りのないことを確認。チューブを屈曲して閉鎖し、キャップを外して経管栄養セットを接続後、指を離して開放する(図22)。
図22 チューブを屈曲して閉鎖しキャップを外す

POINT
■栄養チューブを鼻からたどって、ルートに誤りのないことを確認。
■患児には「食事を始めます」とひと声かけて、ミルク(栄養剤)を注入する。
■意識障害・嚥下障害がある場合、鎮静中の場合は、注入前にパルスオキシメーターを装着。
■キャップを外す際は、チューブを指で屈曲させて閉鎖。
❹ベッド頭部の角度を45度程度に挙上し、ゆっくりと注入を開始する(図24)。
図24 注入速度と観察ポイント

注入速度は、注入液の条件と種類によって調整が必要である。ミルクや水分は消化吸収されやすいが、高カロリー・高蛋白の栄養剤はゆっくり注入する必要がある。
注入中はせき込み、悪心・嘔吐、腹部膨満、チアノーゼなどを観察。むせやせき込みがある場合、腹部膨満が強まる場合は、注入を中止する。
注入方法には、自然落下とポンプを使用する場合がある。微量で持続的に注入する場合、専用ポンプを使用する。
注入終了後の処置
注入終了後は、胃チューブの長さの分量の微温湯を注入。さらに、空気を注入して、チューブ内の水分を排出してからチューブを抜去する。
チューブを留置する場合は、接続部のキャップを閉め、不潔にならないようガーゼで包む。
患児にうがいを勧める。注入した注入液の種類、量、所要時間、胃残量を記録する。
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ






