皮膚の検査とは|皮膚科の検査①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚の検査について解説します。

 

白濱茂穂
聖隷三方原病院皮膚科部長

 

 

Minimum Essentials

1診断するうえで、患者の話を聞く、皮疹を見る、皮疹を触ることは重要である。

2皮膚の状態、全身の状態を知るうえでさまざまな検査が必要となる。

3診断を確定するため、あるいは鑑別するために、必要な検査を選択し組み合わせて行う。

 

皮膚の検査とは

病気を診断するうえで、よく患者の話を聞く(問診)、よく皮疹を見る(視診)、表面を触る(触診)ことは重要である。さらに皮膚の状態、あるいは全身の状態を把握するためにさまざまな検査が必要となる。

 

おもな検査としては、一般血液検査、皮膚の生理学的検査、アレルギー検査(パッチテスト、皮内テスト、スクラッチテスト)、光線検査(光テスト、光パッチテスト)、免疫機能検査(ツベルクリン反応)、微生物検査(真菌、細菌、ウイルス)、細胞診、ダーモスコピー、皮膚生検などがある。

 

一般血液検査

皮疹から複数の疾患が疑われたとき、その鑑別に血液検査が必要になる場合がある。また、診断が確定し治療を開始したあと、病勢や治療効果を判定する目的でも行う。

 

皮膚の生理学的検査

硝子圧法

透明なガラス、あるいはプラスチックの板で皮疹を圧迫して、色調の変化を見る。紅斑では色調が退色するが、紫斑では残る。

 

皮膚描記法

先端が尖っているかたいもので、皮膚表面をこする。正常では赤くなる(紅色皮膚描記症)。人工蕁麻疹では、こすった部分に一致して浮腫を生じ隆起する(隆起性皮膚描記症、「蕁麻疹」参照)。擦過により蒼白になるものを白色描記症という( アトピー性皮膚炎」参照)。肥満細胞腫(色素性蕁麻疹)では、色素斑部をこすると膨疹を生じる〔ダリエー(Darier)徴候〕。

 

ニコルスキー(Nikolsky)現象

一見正常に見える皮膚を指などでこすると、水疱や表皮剝離を生じる(「天疱瘡」「先天性表皮水疱症」「薬疹、中毒疹」「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)」参照)。

 

アウスピッツ(Auspitz)現象

乾癬の鱗屑を剝離すると点状の出血を見る(「乾癬」参照)。

 

ケブネル(Köbner)現象

健常な皮膚に刺激を加えると、その部に先行する病変と同じ病変が生じる。あるいは搔破に一致して線状に病変が生じる(「乾癬」「疣贅[いぼ]」参照)

知覚試験

触覚はさばいた筆の穂先で、温覚は温水を入れた試験管で、痛覚は針先で、それぞれ刺激して調べる。

 

アレルギー検査

考えられる原因物質を皮膚に貼付あるいは注射することにより、原因や悪化因子を検索する。さらに、これらの因子がアレルギー性か、一次刺激性かの判断にも使う。パッチテスト、皮内テスト、スクラッチテストなどがある(「アトピー性皮膚炎」「接触皮膚炎[かぶれ]」「手湿疹[主婦湿疹]「痒疹」「光線性皮膚症」参照)。

 

血液中の好酸球(アレルギーに関係する白血球)数、IgE(免疫グロブリンE)の総量、特定の抗原に対するIgE 抗体量、アトピー性皮膚炎の病勢を見るうえでタルク(TARC)などを測定する(「血液検査の読み方」参照)。

 

 

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光線検査

「パッチテスト、光テスト、光パッチテスト」参照。

 

免疫機能検査

ツベルクリン反応では、結核菌を培養した液から分離したPPDを皮膚に少量注射して、48時間後の反応を見る。結核の感染の有無や生体の細胞性免疫に異常がないかを見る。

 

病原体の検索

真菌の検査

「真菌検査」参照。

 

ウッド(Wood)灯検査

「真菌検査」参照。波長365nmの長波長紫外線を病変や培養上の菌に照射して、特異な蛍光を発するか見る。

 

トレポネーマの検出

第2期の梅毒疹をこすって得られた漿液を、パーカーブルーブラックインクや墨汁で染色して検鏡したり、暗視野装置顕微鏡下で観察する(「梅毒」参照)。

 

細胞診

ツァンク(Tzanck)試験

天疱瘡などの水疱を認める場合、水疱底の細胞をメスでやさしく削り取り、スライドグラスに塗り、その標本にみられる細胞を調べる検査である。天疱瘡ではギムザ(Giemsa)染色で、ばらばらになった表皮細胞(棘融解細胞)が検出される(「天疱瘡」参照)。

 

ウイルス性巨細胞検査

ツァンク試験と同じ操作で、単純疱疹や帯状疱疹ではウイルス感染により生じた巨細胞を見る。

 

ダーモスコピー

ダーモスコピーという実体顕微鏡を用いて、皮膚病変を10~20倍に拡大、および表層を透視し観察することで診断的根拠を得るための検査である。痛みを伴わず、短時間で結果が出る。たとえば足底に生じた色素斑が良性(ほくろなど)か悪性(メラノーマなど)か、診断の有力な手段となる。

 

病理組織学的検査(生検)

見た目だけでは確定診断できないものや、皮膚症状が似ていても互いに全く異なる病気であることが少なくない。皮膚生検は、診断をより正確なものにするため、病変のある皮膚組織の一部を採取し、それをもとに病理標本を作製し顕微鏡で観察することである。場合によっては組織を用いた免疫染色検査や培養検査を行う。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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