真菌検査|皮膚科の検査②

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は真菌検査について解説します。

 

鈴木陽子
静岡市立静岡病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1真菌検査では、病変部にカビ(真菌)が寄生しているのを確認する。

2浅在性真菌症では、KOH直接検鏡法で皮疹部の鱗屑(りんせつ)などに真菌要素を見つける。疥癬(かいせん)などで皮膚に寄生するダニも同じ方法で確認できる。

3深在性真菌症では生検を行い、病理組織検査で真皮や皮下組織に真菌要素を見つける。

4で採取した検体の一部をサブロー(Sabouraud)培地で培養して、原因真菌を同定する。

 

真菌検査とは

臨床症状から真菌症を疑ったとき、病巣にカビが寄生しているのを証明し、真菌症の確定診断をするのに必須の検査である。さらに、最適な治療法の選択、治療効果の判定、および感染源の推定と予防に役立つ。疾患によっては、菌がいないことを確認して真菌症ではない、と判断するために行われる。

 

 

目次に戻る

検査手技

直接検鏡法(検鏡)

病変部から採取した鱗屑などの検体を、顕微鏡でじかに観察して、病原体などをその場で迅速に確認できる検査。

 

苛性(かせい)カリ(KOH)法(以下KOH法)(図1-a図1-b

外来で多い白癬、カンジダ症、癜風(でんぷう)などの浅在性真菌症の診断に不可欠な検査である。深在性真菌症のクロモミコーシスでも、褐色の菌要素が見つかれば診断できる(図2)。真菌症のほかに疥癬の虫体や卵、毛包虫など皮膚に寄生するダニの確認もできる。KOH(苛性カリ、水酸化カリウム)溶液は、鱗屑、毛、などの角質を溶かして菌を見やすくする試薬で、温めると速く溶ける。ほかに、加温を必要としないジメチルスルフォキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)を加えたKOH溶液(ズーム®)や、菌を青く染めるためにパーカーインクなどを加えたKOH溶液がある。

 

図1-a KOH直接検鏡法:検体採取に必要な用具

①カバーグラス
②スライドグラス
③色鉛筆、油性ペンなど
④KOH溶液
⑤眼科用ピンセット、毛抜き
⑥眼科用ハサミ
⑦刃を鈍くしたメス
⑧爪切り
⑨アルコール綿
⑩セロハンテープ

 

図1-b KOH直接検鏡法:標本の作製

a:足白癬の鱗屑採取とその介助。
b: 採取した検体をスライドグラスに載せ、KOH液を滴下しカバーグラスを被せて、70℃くらいで数分温める。
c:セロハンテープによる鱗屑の採取。
d: 標本は患者名と採取部位がわかるようにする。中央の癜風の標本や、下のセロハンテープ採取検体はパーカーインク-KOH法などで青く染めると観察しやすい。セロハンテープ採取検体は温めない。

 

図2 KOH直接検鏡像

a:白癬。糸状の菌糸。

b:カンジダ。細い菌糸とぶどうの房状胞子。

c:癜風のマラセチア。細長い菌糸と丸い胞子(パーカーインク-KOH法)。

d:マラセチア毛包炎のマラセチア。パーカーインク-KOH法で青く染まった胞子。

e:クロモミコーシスの胞子。大型で割れ目のある褐色の胞子。

 

墨汁(ぼくじゅう)法

クリプトコックス症では、病変部の膿汁、遠沈した髄液などをスライドガラスの上で墨汁と等量に混ぜ、カバーガラスで覆って標本をつくる。黒い墨汁の中に、厚いカプセルをもった円形の菌が白く見える。

 

PAS(パス)(periodic acid-Schiff)染色

スポロトリコーシスなどの深在性真菌症では、皮疹部の膿汁や滲出液などのスメア標本をPAS染色すると菌を検出できることがある。

 

病理組織検査

深在性真菌症では生検を行い、病理組織検査により真皮や皮下組織の中で真菌が増殖しているのを証明する。通常のHE染色標本で見つけるのは難しいため、PAS染色やグロコット染色などの真菌がよく染まる特殊染色をした標本で確認する。

 

真菌培養

真菌も細菌のように培養検査を行えば原因菌が同定できる。その結果から感染源が推定でき、治療や感染予防に有用である(図3)。深在性真菌症では、菌の種類や薬剤感受性によって治療が選択されるので必須である。皮疹部から採取した検体をサブロー培地(サブロー・ブドウ糖寒天培地:カビの生育に適した栄養を含む培地)に植えて、数週間、菌を培養する。白癬では鱗屑や毛などが雑菌に汚染されているのでマイコセル培地(雑菌が混じって生えないようにサブロー培地に抗菌薬を加えた培地)で培養する。原因菌が生えたらそれを詳しく検索して菌種の同定を行う。

 

図3 頭部白癬の真菌培養

a:病変部の毛髪の培養。柔道やレスリングなどの格闘技クラブで流行している白癬の原因菌であるトリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)が検出された。

b:頭部白癬のブラシ検査。患者の所属するクラブの部員の頭をシャワーブラシでまんべんなく梳かし、そのブラシを平板培地に図のように押しつけた。ブラシを取り除き、シャーレに蓋をして培養した。

c:保菌者ではブラシの先端についた菌が図のように生えてきた。自覚症状がなくても何人かで同じ菌が検出された。保菌者を見つけて同時に治療し、部内の集団感染を防いだ。

 

その他

ウッド(Wood)灯検査

ウッド灯(長波長紫外線ランプ、ブラックライト)を頭部白癬などの病変部に暗室で照射すると、菌の種類によっては蛍光を発するので(表1)、確認しにくい病変の広がりや、治療効果の判定に役立つ。癜風や細菌(コリネバクテリウム)による紅色陰癬でも蛍光がみられる(図4)。

 

表1 ウッド灯検査で蛍光を発する菌および疾患

参考:ほとんどのトリコフィトン属では蛍光は発しない。

 

図4 KOH法で菌が見つからない水虫

a:患者は水虫を主訴に受診したが、KOH法で真菌要素は見つからなかった。

b:ウッド灯検査でサンゴ色の蛍光(→)を確認し、コリネバクテリウムによる紅色陰癬と診断し、抗菌薬外用で治療した。

 

皮内テスト

菌に対する患者の免疫反応(遅延型皮膚反応)を見るテストで、ツベルクリン反応と同様に行い、48時間後に判定する。スポロトリコーシスではスポロトリキン反応、ケルスス(Celsus)禿瘡(とくそう)などの白癬ではトリコフィチン反応を行い、診断の参考とする。

 

 

目次に戻る

看護の役割

水虫の診断には真菌検査が必要なことを患者に理解させる。市販の外用薬などを使っていて菌が見つからないこともあり、期間をあけた繰り返し検査にも協力してもらう。

 

 

目次に戻る


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

SNSシェア

看護知識トップへ