分娩準備教育2 呼吸法

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は分娩時の呼吸法の準備について解説します。

 

藤本 薫
保健医療技術学部看護学科教授

 

 

呼吸法とは

呼吸法は、単に効果のよいガス交換にとどまらず、呼気を意識した腹式呼吸とともに気持ちを集中させ、身体の力を抜いていく療法である。

 

開始の時期

妊娠30週を過ぎたあたりから行う。あまり早すぎると、お産へのイメージがわきにくい。また、遅すぎると十分な呼吸法の習得ができないままお産を迎えるため、効果的に呼吸法が実施できないことがある。

 

目的

・陣痛発作時においても緊張を緩和し、筋肉の弛緩を促すことでリラクセーション効果を得る。
・リラックス効果により疲労を予防し、娩出力を高める。
・分娩中、胎児への十分な酸素を供給する。
妊娠期から呼吸練習をとおしてセルフコントロールの能力を養う。
・分娩第2期では、腹筋を使っていきむことで娩出力を助ける。
・児頭娩出時、呼吸法を切り替えることで、娩出力の調整をし、会陰の損傷を最小限にする。

 

呼吸法の効果

①心理的効果
・妊娠期から練習することにより、産婦が主体性をもって分娩に臨むことができる。
・分娩に対する恐怖心を和らげ、痛みの閾値を高めることができる。

 

②身体的効果
・呼気時に細く長く息を吐き出すことで、気道に予備圧を生じさせ、肺胞でのガス交換がスムーズになり、より少ないエネルギーで換気ができる。
・骨盤底筋群の緊張がほぐれ、胎児の圧迫や産道の損傷も少なくなり、母児への負荷を最小限にできる。

 

呼吸法の種類と特徴

①呼吸法
呼気に集中し、ゆっくりと息を吐くことでリラクセーションをはかる。

 

②ラマーズ法
創案者:フェルナンド・ラマーズ(Lamaze, F.) 1952年
パブロフの条件反射学説に基づく呼吸法。「子宮収縮=痛み」の条件反射を「子宮収縮=呼吸反射」として、呼吸法に集中することにより、痛みを軽減する方法である。

 

ラマーズ法における呼吸法

ラマーズ法における呼吸法 図のみかた

●基礎になる呼吸

ラマーズ法における呼吸法 基礎になる呼吸

5~6秒に1回のゆっくりした呼吸

 

●ヒー、フー式呼吸

ラマーズ法における呼吸法 ヒー、フー式呼吸

少し痛みが強くなり、子宮口が3~5cm開大してから行う。「ヒー」は短めに、「フー」は長めに息を吐く

 

●ヒッ、ヒッ、フー式呼吸

ラマーズ法における呼吸法 ヒッ、ヒッ、フー式呼吸

2回目の「ヒッ」の後に「フー」と長めに息を吐く

 

●フー、ウン式呼吸

ラマーズ法における呼吸法 フー、ウン式呼吸

2回目の「ヒッ」の後に「フー」と長めに息を吐く

 

●フー、フー式呼吸

ラマーズ法における呼吸法 フー、フー式呼吸

発露してからの呼吸法。深くゆっくり行う

 

③ソフロロジー法

創案者:アルフォンソ・カイセド(Caycedo, A.) 1960年
産科への応用:ジャンヌ・クレフ(Creff, J.) 1976年

痛みとの関連を断つのではなく、陣痛を「必要なエネルギー」であり「積極的な喜び」として捉える方法。座禅による瞑想的イメージトレーニングやヨガなどの要素を取り入れている(図1)。意識を眠る前の意識段階(ソフロリミナル)にして、リラックスをはかることが特徴である。

 

図1 ソフロロジーのイメージ

 

ソフロロジー法の語源

Sos(調和・安定・平和)、Phren(精神・意識・霊魂)、Logos(研究・学問・論議)の3つを合わせた造語。

 

ソフロロジーのメリット

・疲れにくく産後の回復が早い。
・胎児への不要な圧迫が少ない。
・分娩進行を促進。
・ βエンドルフィンの分泌を促進し、痛みを和らげる。
・ アドレナリンの分泌が少なく、胎児へのストレスが軽減する。

 

④リーブ法
創案者:橋本明、鮫島浩二 1990年

気功の概念を取り入れた方法。ゆっくりとした腹式呼吸によりリラクセーションをはかる。「痛みは乗り越える」を基本姿勢とし、胎児をイメージし、母子共同で分娩を進行させるという姿勢が特徴である。

 

呼吸法の援助

分娩への対処法として呼吸法を取り入れる場合、対象者が主体的に行えるように看護者は援助する必要がある。

 

①呼吸法の効果・目的について説明する。
②呼吸法が胎児に与える影響を説明する。
③呼吸法を具体的に説明するとともに、実際に行ってみせる。
④対象者が上手に実施できているか確認しながら進める。
⑤とくに、呼気時に力を抜くことへ意識を向けるように促す。
⑥呼吸法が上手に実施できていたら、そのことを評価し、励ましながら継続できるよう声をかける。

 

呼吸法のポイント

呼吸法で重要なことは、産婦がいかに身体の力を抜くことができるか、ということである。

 

基本は、吸う息の2倍くらい長くゆったりと吐く、で吸って、口で吐く。身体の自然なペースに任せて呼吸をすることが大事である。したがって、多くの呼吸法があるが、必ずこれを行わなければならないということはない。

 

落ち着いた産婦なら産婦の心地よい呼吸にまかせ、パニックになりそうな産婦にはリズムのある呼吸法を誘導するなど、個々にあわせて援助する。

 

分娩第2期の呼吸法

分娩第2期になると、陣痛発作前後に深呼吸を入れつつ、「長くいきみましょう」と努責の誘導をする場合がある。この方法をバルサルバ法と呼ぶが、『WHOの59カ条』では、このバルサルバ法は特記すべきメリットはなく、母子間のガス交換に悪影響があるとしている。

 

長いいきみとは10~30秒間息を止め続けるもの、自然のいきみとは、1つの陣痛につき3~5回、4~6秒間のいきみが繰り返されるものである。長いいきみ方だと分娩第2期にかかる時間をいくらか短縮するが、心拍数や拍出量の変化が起こる。

 

とくに仰臥位の場合、大動脈が圧迫され、子宮への血液循環が減少する。臍帯動脈のpHの平均値の低下が低く、アプガースコアも落ち込む傾向がある。よって、短い自然のいきみのほうが優れていることが明らかとなっている。

 

Q.どうして呼吸法は「呼気」を意識するの?

Column 医師イラスト

A.呼吸において、呼気時には副交感神経が亢進し、吸気時に交感神経が亢進するともいわれている。交感神経が亢進すると呼吸数は増加し、副交感神経が亢進すると呼吸数は減少する。そのため、ゆったりとした呼吸はリラックスを生み、効果的なガス交換や産痛の緩和につながる。

さらに、陣痛の痛みにより過呼吸になりやすいため、呼気に集中することで、過呼吸を予防する。

 

 

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補助動作

・疼痛部位をマッサージしたり、圧迫法を行うことによって、疼痛緩和効果が高まる(「産痛のケア(後日公開)」参照)。
・ 呼吸法とともに動作を行うことにより、呼吸に集中しやすくなる。

 

 

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引用・参考文献

1)ジャネット・バラスカス著、佐藤由美子、きくちさかえ訳:ニュー・アクティブ・バース.現代書館、1993
2)我部山キヨ子、武谷雄二編:助産診断・技術学Ⅱ(2)分娩期・産褥期.助産学講座7、医学書院、2007
3)戸田律子訳:WHOの59カ条お産のケア実践ガイド.p.111~112、農文協、2005

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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