経腸栄養剤っていろいろあるけれど、違いは?どのように選ぶの?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「経腸栄養剤」に関するQ&Aです。

 

山中昇
大阪市立総合医療センター栄養部保健副主幹
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

経腸栄養剤っていろいろあるけれど、違いは?どのように選ぶの?

 

一般的に、栄養剤は窒素源(タンパク質)の分解の程度で分類されます。

 

〈目次〉

 

経腸栄養療法とは?

経腸栄養療法は、食事摂取が不十分か不可能、または消化器機能が低下しているときの栄養素補給のために使用されています。経静脈栄養より低コストで、安全な栄養療法として認識されています。消化管機能に問題がなければ経腸栄養を適応すべきであり、腸を通して栄養素などを体内に取り込む経腸栄養は栄養管理の基本です。

 

経腸栄養法(経栄養法、瘻・空腸瘻栄養法など)で注入される栄養剤を経腸栄養剤といいます。腸から消化吸収される栄養剤のことで、経鼻・胃瘻・空腸瘻チューブなどから注入されます。

 

経腸栄養療法が必要なケース

経口的な栄養摂取が不可能な場合、あるいは経口摂取のみでは必要な栄養量を投与できない場合には、経腸栄養を選択します。合併症を予防し予後を改善するためであり、その最終目的は経口摂取です。

 

基本的には嚥下障害の原因が改善せず長期間続くような場合は、経腸栄養法か中心静脈栄養法になります。血管障害などの後遺症や末梢神経や筋肉の疾患、悪性腫瘍などの場合は、嚥下困難が長期間続く場合が多いため、経腸栄養法が選択されるケースが多いです。

 

経腸栄養剤はどのように選択する?

1.天然濃厚流動食と人工濃厚流動食

経腸栄養剤は天然食品を原料とした「天然濃厚流動食」と、天然食品を人工的に処理もしくは人工的に合成したものからなる「人工濃厚流動食」に分けられます(表1)、(図1)。

 

表1経腸栄養剤の比較

経腸栄養剤の比較

 

図1経腸栄養剤の分類

経腸栄養剤の分類

 

人工濃厚流動食は、窒素源の違いにより、半消化態栄養剤・消化態栄養剤・成分栄養剤に分類されます。半消化態栄養剤は、窒素源がタンパク質であり、消化の過程が必要です。これに対し、消化態栄養剤はアミノ酸と低分子のペプチドを窒素源とし、成分栄養剤は窒素源がアミノ酸のみからなる栄養剤で、消化の過程が必要ありません。

 

消化・吸収機能が保たれている場合は、半消化態栄養剤を第1選択とします。消化・吸収障害がある場合やクローン病は、成分栄養剤、消化態栄養剤が適応になります。

 

2.特殊組成経腸栄養剤

特殊組成経腸栄養剤は、特別な病態に適した栄養組成の「病態別経腸栄養剤」と免疫力を高めるといわれている成分を配合した「免疫賦活化経腸栄養剤」に分かれます。耐糖能障害、腎機能・肺機能・肝機能障害などの病態に対し、エネルギーと栄養素組成が調整された病態別経腸栄養剤を選択します。周術期や高度侵襲期症例では、免疫調整栄養素が強化された経腸栄養剤が有効な場合があります。

 

濃度によって経腸栄養剤を使い分けるケースも

その他にも、栄養剤の形状(粉末状、液状)、医薬品か食品扱いかなどでも分類されます。栄養剤の種類は一般タイプ、高濃度タイプ、半固形化栄養剤などがあります。

 

液体の栄養剤の場合、高濃度栄養剤という分類も可能です。「高濃度タイプ」とは一般的に1mL当たりのカロリーが1.5kcal以上の栄養剤のことを指します。

 

高濃度栄養剤は、「水分摂取制限が必要な病態」「経腸的にはあまり水分を摂取したくない」「エネルギー消費量が亢進している」「経腸栄養剤の投与量を減らしたい」「投与時間の短縮が望ましい」といった場合も適応になります。栄養剤の固形化(ゲル化)・半固形化・トロミ剤による粘度増強などの投与方法も工夫されて使用されています。

 

経腸栄養剤の選択のポイントは、患者さんの消化吸収能と病態です。消化吸収能が低下している場合(例えば絶食期間が長かったなど)は、消化があまり必要ない成分栄養剤(エレンタール®)からはじめて、消化態栄養剤(ツインライン®NFなど)、半消化態栄養剤(ほとんどの栄養剤はこれです。ラコール®、エンシュア®など)と上げていきます。肝機能・腎機能が悪い場合や糖尿病の場合など、さまざまな病態用の経腸栄養剤があるので、患者さんの病態に合わせて選択しましょう。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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