麻しん(はしか)【ケア編】|気をつけておきたい季節の疾患【3】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

 

→麻しん【疾患解説編】はこちら

麻しん_はしか_麻疹

 

麻しん_麻疹_はしか_麻疹の主訴_はしかの主訴_麻疹の身体症状_はしかの身体症状_コプリック斑_二峰性_赤色斑状皮疹

 

柳瀬安芸
和歌山県立医科大学附属病院 感染管理認定看護師

 

 

 

〈目次〉

 

1合併症で重症化する場合がある

麻しんには特効薬はなく、発熱や全身倦怠感などの麻しんの臨床症状への対症療法が中心となります(1)。また、中耳炎や肺炎、喉頭炎、また脳炎などの合併症が重症化することもあるため、注意して観察を行いましょう(観察ポイントなどは後述)。

 

合併症がなく、自宅療養となる場合、医療機関を受診するサイン(熱が長く続く、ぐったりする、顔色が悪いなど)が見られた場合はすぐに再受診するように説明しておく必要があります。

 

2空気感染対策を徹底する

麻しんは飛沫核によって空気感染する病気です。外来受診時や入院中は、空気感染対策を行う必要があります。

 

外来では、麻しん患者さん(疑い例含む)は、ほかの患者さんとは別の場所で待っていただく必要があり、また、診察室もほかの患者さんとは別な場所を確保しましょう。

 

入院する場合は、陰圧の個室が必要です。そのため、隔離病室での生活を強いられる患者さんのストレスへの配慮が必要となります。また、可能な限り、麻疹患者さんへの対応は、麻しんウイルスに対する免疫を獲得している医療従事者が行いましょう。

 

ナースの視点

1観察のポイント

病期による特徴的な症状と観察ポイント

前駆期(カタル期):発症~4日程度

38℃前後の発熱咳嗽汁、結膜充血、眼脂、口腔頬粘膜の小斑点(コプリック班)の有無。

 

発疹期:発症後5~8日

一時解熱した後の高熱(2峰性)、顔、首、全身の斑状丘疹性発疹などの有無。

 

回復期:発症後9~14日

解熱の有無、結膜充血やコプリック班の消失、発疹消退の程度

 

合併症

中耳炎や肺炎、喉頭炎、また炎などの合併症に伴う症状の有無を観察します。特に、発疹期を過ぎても発熱が続いたり、意識障害や痙攣などの症状が出た場合には注意が必要です。

 

小児・乳幼児の観察ポイント

麻しんは小児に多い疾患です。顔色、口唇の色、手足の温度、機嫌、食欲など、いつもと違うところがないか注意する必要があります。特に乳幼児の場合は、自分の症状を言葉で表すことが困難である場合が多いため、より注意が必要です。

 

2看護のポイント

前述したとおり、麻しんに対する特異的な治療法は確立していません。安静、栄養・水分補給などの対症療法が中心となります。看護のポイントも特別なケアではなく、症状による苦痛の緩和を中心に、さまざまな面で制限される患者さんの日常生活の援助を行います。

 

発熱時のケア

寒気や悪寒戦慄がある場合は、部屋を温かくし、毛布などの掛け物、電気毛布や湯たんぽなどで保温します。寒気や悪寒戦慄が治まった時は、掛け物を調整し、患者さんの希望に沿ってクーリングを行いましょう。

 

水分補給と栄養補給

発熱が続くと、脱水を起こしやすくなるため、適宜水分補給を行います。小児の場合は脱水を起こしやすいので特に注意しましょう。また、発熱や口腔粘膜の異常により、食欲が低下することがあるため、消化のよい、柔らかい食べ物を勧めるようにします。

 

精神的ケア

解熱後3日は人に感染する期間が含まれるため、自宅療養の場合は保育園、幼稚園、学校に登校はできません。成人の場合も、就業制限となることがほとんどです。
また、入院の場合、患者さんは検査などの必要時以外は病室内で過ごさなければならないため、隔離によるストレスにも配慮するようにしましょう。

 

3感染対策

麻しんは人に感染する感染症です。外来においても、入院においても、空気感染対策が必要です。早期に症状を見極め、麻しんの疑いがある場合は、速やかに待合室を別にするなどの空気感染対策を開始する必要があります。

 

発症した人が周囲に感染させる期間は、症状が出現する1日前(発疹出現の3~5日前)から発疹出現後4~5日目くらいまでですが、学校保健法に基づいて、学校は解熱後3日を経過するまで出席停止となります。入院中の場合でも、解熱後3日を経過するまでは、陰圧室での入院など空気感染対策を実施します(2)

 

外 来

麻しんの初期症状は、発熱、、鼻汁など、かぜ症状と類似しており、外来受診された場合は、診断までに周囲の患者さんに感染する可能性があるため、注意が必要です。

 

情報収集(問診)

麻しんが疑われる場合は、症状だけではなく、家族や身近な人に同じような症状の人はいないか、保育園、幼稚園、学校などで流行している病気はないかなどの情報を確認する必要があります。麻しんが疑われる場合は、ワクチン接種歴も確認しましょう。

 

隔離と優先診察

麻しんが疑われる場合は、優先して検査・診察を行い、多数の患者さんが待つ外来に滞在する時間をできるだけ短縮する必要があります。

 

待合室などでもほかの患者さんに感染する可能性があるため、専用の待合室や診察室が必要です。専用の部屋が準備できない場合は、ほかの患者さんと分離した待合室や診察室に案内します。日ごろから、麻しんが疑われた場合に使用する診察室や受診経路を決めておくとよいでしょう。

 

また、感染症疑い患者さんを早期に発見できるように、待合室の様子を観察し、患者さんや家族にも協力が得られるように啓発用のポスター(図1)などを貼付しておくとよいでしょう。

 

図1患者さん向け啓発ポスター

感染疾患_啓発ポスター

 

入 院

麻しん患者さんが入院する場合も、外来同様に空気感染対策が必要です。病室は陰圧の個室が必要です。

 

麻しんウイルスに対する免疫のない職員は病室に入るとき、微粒子用マスク(図2)の着用が必須となります。

 

図2微粒子用マスク

N95マスク_微粒子用マスク_スリーエムジャパン_3M_3M Aura_N95微粒子用マスク_医療用マスク

 

写真提供:スリーエム ジャパン株式会社

 

マスクは病室内に入る前に着用し、病室を出た後に外します。マスクを着用したときはユーザーシールチェックをする必要があります。ユーザーシールチェックとは、マスクが十分開いているか、鼻当て部がきちんと密着しているかを確認するために行うものです。両手でマスクを覆い、息を吸ったり吐いたりしながら、隙間がないかをチェックします(図3)。隙間があれば、もう一度ゴムバンドや鼻当てを調整しましょう。

 

図3ユーザーシールチェック

ユーザーシールチェック_N95マスク_感染対策

 

ユーザーシールチェックは着用するたびに必ず行いましょう。

 

微粒子用マスクの着用以外は、標準予防策(スタンダードプリコーション)を行います。

 

4関係各所への連絡

保健所への連絡

麻しんは感染症法に基づく5類感染症で、全数把握疾患です。5類感染症は基本的には診断後7日以内に届出を行う必要があります。しかし、麻しんは24時間以内をめどに最寄りの保健所に届けるよう求められています。
発生届は医師が記入しますが、速やかに届出が必要な疾患であることは理解しておきましょう。

 

施設内関係部署への連絡

麻しんは感染症のため、患者さんが院内を自由に移動することは避けるようにしますが、検査などで移動しなくてはならない場合があります。そういう場合は、移動先でも空気感染対策が実施できるように、患者さんが麻しんであることを移動先の部署に連絡しておく必要があります。院内での情報共有が重要です。

 

また、施設内の感染対策部門への連絡も必要です。医療従事者が麻しん患者さんに接触した場合、接触した職員の麻しん抗体検査やワクチン接種が必要な場合があるためです。

 

麻しんは空気感染する感染症です。医療従事者が感染し発病した場合、ほかの患者さんに感染する危険性があります。よって、医療従事者は、自分自身の麻しんウイルスに対する抗体の有無を知っておくこと、抗体が基準を満たさない医療従事者で、ワクチン不適当者以外はワクチン接種を行い、抗体を獲得しておくことが重要です。

 


[参考文献]

 

 


[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

 

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 看護副部長

 


[Design]
高瀬羽衣子

 

[Illustration]
田口和代

 


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