シスプラチン+ペメトレキセド療法(化学療法のポイント)/肺がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「シスプラチン+ペメトレキセド療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『シスプラチン+ペメトレキセド療法(看護・ケアのポイント)/肺がん

シスプラチン+ペメトレキセド療法

 

久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:シスプラチンは抗がん剤の中でも嘔気・嘔吐の王様。制吐対策をしっかりしよう!
  • ポイントB:シスプラチンによる腎機能障害には注意が必要。水分摂取をしっかり勧めよう!
  • ポイントC:ペメトレキセドは1週間前から前処置が必要。忘れていませんか?

 

〈目次〉

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療

シスプラチン+ペメトレキセド療法とは、肺がんのうち非扁平上皮非小細胞肺がんの患者さんに対するファーストライン(初回化学療法)の際に用いられる治療レジメンの一つです。

 

ペメトレキセド(アリムタ)は非小細胞肺がんのうち、扁平上皮がんの患者さんには治療効果が乏しいことから、『肺癌診療ガイドライン』でも「ペメトレキセドは行わないよう勧められる」と記載されています1)

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法で使用する薬剤

シスプラチン+ペメトレキセド療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1シスプラチン+ペメトレキセド療法で使用する薬剤

シスプラチン+ペメトレキセド療法で使用する薬剤

 

(写真提供:日本化薬株式会社、日本イーライリリー株式会社)

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のレジメン

1日目(Day1)に、シスプラチン(ランダ)、ペメトレキセド(アリムタ)を投与し、2~21日目は休薬します(表2)。ただし、ペメトレキセド(アリムタ)投与の1週間前より葉酸 0.5mg/日の連日経口投与と、ビタミンB12 1mgの筋肉内投与(9週ごと)を開始します。

 

 

表2シスプラチン+ペメトレキセド療法のレジメン

シスプラチン+ペメトレキセド療法のレジメン

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3シスプラチン+ペメトレキセド療法の投与方法

シスプラチン+ペメトレキセド療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法の代表的な副作用

シスプラチン(ランダ)は、嘔気や嘔吐、食欲不振などの頻度がほかの抗がん剤に比べて高い薬です。その他、腎機能障害や骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、聴力低下・難聴などがあります。聴力低下については、1日投与量では80mg/m2以上で、総投与量では300mg/m2を超えるとその傾向が顕著となるので注意が必要です。

 

ペメトレキセド(アリムタ)は、葉酸とビタミンB12による前処置が行われていないと副作用が重篤になる危険性があります。

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントA

  • シスプラチンは抗がん剤の中でも嘔気・嘔吐の王様。制吐対策をしっかりしよう!

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントB

  • シスプラチンによる腎機能障害には注意が必要。水分摂取をしっかり勧めよう!

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントC

  • ペメトレキセドは1週間前から前処置が必要。忘れていませんか?

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法の治療成績

進行または再発非扁平上皮非小細胞肺がんに対する治療成績は、無増悪生存期間が5.3ヶ月、全生存期間が11.8ヶ月でした。Grade 3以上の好中球減少が15.1%、発熱性好中球減少症(FN)が1.3%で起こっています2)

 

また、シスプラチン+ペメトレキセド療法を4コース行った後に、ペメトレキセド(アリムタ)単剤による維持療法(メンテナンス)を行うことで、無増悪生存期間、全生存期間がさらに延長することが示されています3)

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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