創を押さえながらの咳嗽が痛みの予防に効くって本当?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「創を押さえながらの咳嗽が痛みの予防に効くって本当?」に関するQ&Aです。

 

伊東七奈子
前橋赤十字病院看護部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

創を押さえながらの咳嗽が痛みの予防に効くって本当?

 

本当です。創自体が引っ張られないようにすることで、機械的刺激を最小限にできます。

 

〈目次〉

 

術後の創痛は機械的刺激により発生する

痛みにはさまざまな種類がありますが、国際疼痛学会は「痛み」を「実際に何らかの組織損傷が起こったとき、あるいは組織損傷が起こりそうなとき、あるいはそのような損傷の際に表現されるような、不快な感覚体験および情動体験」(1)と定義しています。

 

痛みは主観的な症状であり、心理社会的、スピリチュアルな要素の修飾を受けますが、痛みの神経学的機序(性質の分類)は、侵害受容性疼痛(体性痛内臓痛)、神経障害性疼痛に大きく分類されます。

 

術後の創痛は体性痛にあたり、皮膚や骨、関節、筋肉、結合組織など体性組織への、切る、刺すなどの機械的刺激が原因で発生する痛みで、手術による皮膚や筋肉などを切開したことよって起こります。その程度は、手術部位や創の大きさに左右され、手術中に内臓器官が引っ張られたり、引き裂かれたりしたことに対する生体反応によっても痛みが生じます。開腹術では、下腹部に比べて上腹部の痛みが強く、肋骨下縁に沿った横切開は、縦切開に比べて痛みは弱いといわれています。

 

創が引っ張られることで痛みが増強する場合もあります

開腹や開胸術後は、切開創が横隔膜に近いために深呼吸やなど呼吸運動に影響されやすく、また起き上がりや横を向くなど身体を動かすことで傷(創)が引っ張られ、痛みが引き起こされます。

 

腹部の皮下脂肪も痛みに影響する要因です。動作により創部が揺れることで創部張力の伸長を増大させ、痛みが増強することもあります。

 

特に皮下脂肪の多い患者では、「腹帯をしっかりと巻く」「動作時には創部を手で押さえる」など、創部が動かない工夫をすることが必要です。

 

これらは実際の臨床現場で行われている有効なケアであり、咳をするときも、機械的刺激を少なくするように創部を手で押さえ、傷自体が引っ張られないようにすることが痛みの予防につながります。

 

また、術後は気道内分泌物が貯留しやすい状態であり、単に咳をするだけでなく、効率よく排痰させることが重要です。そのためには、痛みのない術前に疼痛を軽減しながら、効率よく行えるACBT(active cycle of breathing technique;自動周期呼吸法)(*1)などの自主訓練法を指導することが必要でしょう。

 

用語解説ACBT(active cycle of breathing technique;自動周期呼吸法)

呼吸の大きさ(換気量)を変化させることで分 泌物の移動を促す方法。「深呼吸・huffing・咳嗽・ 安静時呼吸」を数回ずつ繰り返す。

 


[文献]

  • (1)日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員 会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2010 年版.金原出版,東京,2010:14.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

この記事をシェアしよう

看護知識トップへ