他疾患が原因で発症した間質性肺炎患者さんの聴診音

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

[前回の内容]

特発性間質性肺炎の疾患解説

 

今回は、「他疾患が原因で発症した間質性肺炎患者さんの聴診音」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

間質性肺炎は、さまざまな要因で発症するため、私のところにも色々な患者さんが訪れてきます。

 

難しい病気だから、先生も診察が大変ですね。
あ! 疾患の発症に色々な要因があるってことは、聴こえる聴診音もそれぞれの要因によって変わってくるんですか?

 

聴診音は、基本的に捻髪音が聴こえる点は同じです。
ただ、合併症があったりすると聴診音の鑑別が難しくなる場合もあるので、聴診の難易度は上がります。
ここでは、他疾患が原因で発症した2人の間質性肺炎の患者さんの症例をもとに、聴診音を紹介します。

 

〈目次〉

 

症例①:ANCA関連血管炎による間質性肺炎の患者さん

まずは、ANCA関連血管炎による間質性肺炎が発症した患者さんの症例について簡単に解説します。自分が担当する患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。

 

【74歳、男性】

 

主訴乾性咳嗽の増強と両下肢のしびれ。

 

現病歴:ANCA関連血管炎による間質性肺炎で、ステロイドおよび免疫抑制薬で治療中。最近、両下肢のしびれと乾性咳嗽が強いという訴えあり。末梢血の抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)の値は、著明な高値を維持している。血管炎の再燃が疑われる。

 

画像所見:胸部CTでは、右優位に網状陰影と牽引性の気管支拡張所見を認める(図1)。

 

図1ANCA関連血管炎による間質性肺炎の患者さんの胸部CT画像

 

ANCA関連血管炎による間質性肺炎の患者さんの胸部CT画像

 

右肺に網状陰影と牽引性の気管支拡張所見がみられます(青ライン)。

 

身体所見:右下肺野背側で捻髪音を聴取。

 

聴診音(1):右下肺野背側で聴こえる捻髪音

 

 

 

ココを聴こう!

1秒~4秒過ぎまで:「チリチリ、パリパリ」という音

 

  • 本症例では、吸気の始めは弱く、後半にかけて強くなる、高い音の捻髪音が聴こえることが特徴です。

 

 

memo音がだんだん強く聴こえれば捻髪音

通常、捻髪音は呼吸の後半にかけて強い音になります。そのため、吸気の始めには異常音が聴こえず、吸気の途中から聴こえ始めても、後半にかけて音が強くなっていれば捻髪音と判断できます。

 

 

聴診音(2):右中肺野背側で聴こえる捻髪音

 

 

 

ココを聴こう!

1秒手前、4秒、8秒過ぎ:「チリチリ、パリパリ」という音

 

  • これは、聴診音(1)と同じ患者さんに、呼吸を少し早めてもらった聴診音です
  • 本症例では、捻髪音が聴こえます。特に4秒の時点で、水泡音より若干高い音で、一つ一つの音が短く聴こえることが特徴です。

 

 

目指せ! エキスパートナース多臓器障害を起こすANCA関連血管炎

ANCA関連血管炎とは、わが国でとても増加している血管炎です。この疾患の名前にあるANCAとは、抗好中球細胞質抗体のことで、正式名称は、anti-neutrophil cytoplasmic antibodyです。

 

このANCA関連血管炎では、MPO-ANCA、PR3-ANCAという自己抗体が有名ですが、これらが毛細血管レベルの血管を障害します。主に、図2のような多臓器障害が現れます。

 

図2ANCA関連血管炎が引き起こす多臓器障害

 

ANCA関連血管炎が引き起こす多臓器障害

 

全身の臓器が障害されます。

 

(BMJ 2012; 344: 40-44.を参考に作成)

 

このため、肺胞出血を引き起こしている患者さんでは、ANCA関連血管炎が原因かどうかを考える必要があります。また、ANCA関連血管炎は、感冒様症状(発熱や体重減少、食思不振、全身倦怠感、多発関節痛、筋肉痛)を引き起こすこともあるので、覚えておきましょう。

 

 

症例②:強皮症、混合性結合組織病(MCTD)に合併した間質性肺炎の患者さん

 

次に、強皮症、混合性結合組織病(MCTD)の患者さんに合併した間質性肺炎の症例について簡単に解説します。自分が担当する患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。

 

【65歳、女性】

 

主訴労作時呼吸困難

 

現病歴:15年前から胸部に異常陰影を指摘され、強皮症、混合性結合織病(mixed connective tissue disease:MCTD)と診断された。肺病変は、強皮症によるものと診断されて経過観察。数年前から在宅酸素療法を導入している(安静時 1L/min, 労作時 3L/min)。

 

画像所見:胸部X線では両側の中下肺野主体に網状陰影がある(図3A)。胸部CTでは両側下葉に蜂巣肺を認め、一部では牽引性気管支拡張症を合併している(図3B図3C)。

 

図3強皮症、混合性結合組織病に合併した間質性肺炎の患者さんの胸部胸部X線・CT画像

 

強皮症、混合性結合組織病に合併した間質性肺炎の患者さんの胸部胸部X線・CT画像

 

A:両側の中下肺野に網状陰影が見られます(青ライン)。
BC:両側下葉に蜂巣肺が見られます(青ライン)。また、一部では牽引性気管支拡張症を合併しています。

 

身体所見身長 155cm、体重 35kgと痩せている。

 

SpO2 96%、呼吸数 24/min、血圧 120/60mmHg、脈拍 100/min。両側手指のソーセージ様腫脹あり、レイノー現象あり。

 

 

聴診音:右中肺野背側で聴こえる捻髪音

 

 

 

ココを聴こう!

1.5秒目:「グーグー」という音

 

全般:「パリパリ」という音

 

  • 本症例全般で、吸気に次第に強くなる「パリパリ」という捻髪音が聴こえることが特徴です。
  • 頻呼吸な患者さんのため、1.5秒目に聴こえる「グーグー」といういびき音も見逃さないようにしましょう。

 

 

目指せ! エキスパートナース副雑音の鑑別が難しい場合の対応法

症例②は、間質性肺炎が原因で牽引性気管支拡張症が起こっています。聴こえている聴診音は捻髪音ですが、聴き慣れていない方は、水泡音と区別することが難しいほど、複雑な音の組み合わせになっている状況です。

 

このように、聴診音が複雑で、副雑音の違いがわからない場合は、「副雑音が聴こえる」ということを認識するだけで大丈夫です。

 

 

ナースへのワンポイントアドバイス

 

間質性肺炎は、病変の程度によって捻髪音の聴こえ方が変わってきます。病気が進行した例では、頻繁に捻髪音が聴こえるため、かなりわかりやすいと思います。

 

 

Check Point

  • 間質性肺炎の患者さんでは、主にチリチリ・パリパリという捻髪音が聴こえる。
  • 副雑音の違いを聴き分けるのが難しい場合は、副雑音が聴こえると認識するだけでOK。

 

 

 

 

*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。

 


 

 


 

[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


 

Illustration:田中博志

 


 

協力:株式会社JVCケンウッド

 


 

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