胆嚢壁肥厚は胆嚢炎のサイン

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、「胆嚢壁肥厚は胆嚢炎のサイン」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室)

 

消化器科にいると、腹痛を訴える患者さんがよく来院すると思います。
右季肋部痛の代表的な疾患の一つが、胆嚢炎ということを知っていましたか?

 

知らなかったです。
そもそも、胆嚢って右季肋部にあるんですか?

 

胆嚢は、肝臓の下に張り付いています。
実は、胆嚢はエコーで観察しやすい代表的な臓器なんですよ。

 

胆囊って、普段、あまり馴染みがないから、いまいちピンと来ないです。

 

胆囊は、消化を助けるための胆汁を蓄えておく臓器です。
この胆囊に炎症が起こった状態を胆嚢炎と言いますが、これは右季肋部痛の重要な鑑別疾患です。
ここでは、胆囊の仕組みや、炎症した胆囊について、しっかりと押さえてください。

 

〈目次〉

 

胆囊壁が肥厚している状態

胆嚢壁肥厚とは、胆嚢の壁が通常時よりも分厚くなっている状態です。

 

通常、健康なヒトの所見は、「胆嚢壁肥厚なし」の状態です。「胆嚢壁肥厚あり」は異常所見で、胆嚢が炎症を起こしていることを指しています(図1)。

 

図1炎症によって肥厚した胆嚢壁

 

炎症によって肥厚した胆嚢壁

 

正常な胆囊に比べ、炎症すると胆嚢壁が分厚くなります。

 

ココが大事!胆嚢壁の肥厚は異常な状態

胆嚢壁肥厚なし・・・正常

 

胆嚢壁肥厚あり・・・異常 → 胆囊に炎症が起きている

 

エコー検査を行う必要がある患者

胆嚢壁の肥厚の有無を調べるためのエコー検査は、主に右季肋部痛を訴える患者さんに対して行います

 

この検査の目的は、胆嚢炎の有無を評価することです。胆嚢炎には、急激に発症し、緊急の処置が必要になる急性胆嚢炎と、慢性的に軽度の炎症が持続している状態の慢性胆嚢炎の2種類があります。

 

両者ともに、右季肋部に痛みを訴えることが多いので、右季肋部痛を訴える患者さんには、まずこの2つの疾患を否定することが重要です。

 

なお、『閉塞性黄疸を疑う肝内胆管拡張症』で解説した閉塞性黄疸と急性胆嚢炎は、どちらも緊急に処置が必要な疾患です。

 

ココが大事!胆嚢炎の有無を検査

右季肋部痛の患者を見たら、まず閉塞性黄疸と急性胆嚢炎を否定しよう

 

胆嚢壁肥厚の疾患解説

胆嚢は胆汁を一時的に蓄えておくための臓器

胆嚢は、肝臓で作れた消化液の一種である胆汁を一時的に蓄えておくための袋状の臓器です。

 

胆嚢は、肝臓の下に位置しており、その一部は肝臓に張り付いています(図2A)。

 

図2食前・食後の胆嚢の位置

 

食前・食後の胆嚢の位置

 

A:食前は肝臓の下にあり、一部は肝臓に張り付いています。
B:食後は胆囊が収縮します。

 

胆囊は食事の摂取を感知して収縮し、溜めておいた胆汁を十二指腸内に分泌します。このため、食後は胆嚢が収縮していて、エコーで観察することが難しくなります図2B)。

 

胆嚢炎の原因は胆汁の流れの阻害

胆嚢炎とは、その名の通り、胆嚢の炎症です。その原因の多くは、胆嚢内にできた結石(胆石)が胆嚢の出口に詰まり、正常な胆汁の流れが阻害されるためです(図3)。

 

図3胆嚢内に詰まった胆石

 

胆嚢内に詰まった胆石

 

結石によって胆汁がせき止められ、胆囊がパンパンに腫れています。

 

外科的な処置が必要な急性胆囊炎と経過観察の慢性胆囊炎

胆嚢炎は、結石の詰まり方の程度によって2種類に分けられます。急激に発症する胆嚢炎を急性胆嚢炎、慢性的に胆嚢に炎症が起こるものを慢性胆嚢炎と言います。

 

急性胆嚢炎は、基本的には外科的な手術が必要です。患者さんの状態によっては、一時的に胆嚢内に針を刺したり、チューブを入れたりして減圧することで急場を凌ぐこともあります。

 

慢性胆嚢炎は、症状によって治療法が異なります。軽症の場合は経過観察が可能ですが、場合によっては、外科手術が必要になることもあります。

 

ココが大事!急性胆嚢炎には要注意

急性胆嚢炎は緊急手術が必要な疾患です!

 

マーフィー徴候は胆嚢炎の特異的な身体所見

胆嚢炎の患者さんに、右季肋部を押された状態で深呼吸をしてもらうと、痛みのために深呼吸ができないことがあります。これをマーフィー徴候(Murphy sign)と言います。

 

具体的には、ドクターは胆嚢炎の患者さんの右の肋骨の下縁に沿って手を当てて、まっすぐに押します。その状態で患者さんに深呼吸をしてもらいます。マーフィー徴候が陽性の患者さんの場合は、「痛い! 痛い!」と言って、呼吸を止めてしまいます(図4)。

 

このような疾患による特異的な身体所見は、知っていると役に立つことが多いです。

 

図4マーフィー徴候の患者にプローブを当てた場合

 

マーフィー徴候の患者にプローブを当てた場合

 

マーフィー徴候の患者さんの場合、プローブを右季肋部に強めに押し当てると痛がります。

 

ナースへのアドバイス

右季肋部痛は、救急外来でエコー検査を行う代表的な症状です。検査の目的は、閉塞性黄疸と急性胆嚢炎の診断と、その否定です。これらの疾患だと断定された場合には、迅速に治療を行う必要があります。

 

実際には、CT検査を行って最終的な診断を行うことがほとんどですが、血液検査の結果が出るまでの時間で、簡易的にエコー検査を行う医師が多いと思います。これは、検査の順番と、時間的なことが関係しているからです。

 

詳しく解説すると、腹部のCT検査は、造影剤を用いた造影CTを行うことが望ましいですが、造影CTを行うためには血液検査で腎機能を確認する必要があります。そのため、CT検査は血液検査の結果が出た後に行うことが多いからです。

 

 

Check Point

  • 右季肋部痛は救急外来でエコー検査を行う代表的な症状です。
  • 胆囊炎には、急激に発症し、緊急の処置が必要になる急性胆嚢炎があります。
  • 右季肋部痛に対するエコー検査は、閉塞性黄疸と胆嚢炎の診断・否定を目的として行う場合がほとんどです。

 

次回は、実際の胆嚢壁が肥厚している患者さんのエコー写真を紹介します。
検査の準備や、申し送り時、看護記録記入時のポイントについてもしっかりと覚えましょう。

 

[次回]

胆嚢壁が肥厚しているエコー像

 

[関連記事]
  • ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室

 


Illustration:田中博志

 


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