排泄性尿路造影(IVP・DIP)|腎・泌尿器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、排泄性尿路造影(IVP・DIP)について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

排泄性尿路造影(IVP・DIP)とはどんな検査か

排泄性尿路造影は静脈に造影剤(ヨード系)を投与し、その後、経時的にX線撮影を行い、その造影剤が腎から尿路へ排泄されることで腎杯、腎盂、尿管、膀胱を撮影する検査である。この検査は形態や機能を推測する上で重要で、尿路系の大部分の疾患に必要な検査である。

 

造影剤を急速に注入し、その後、5分、15分臥位および15分立位を撮影する経静脈性腎盂造影(IVP)、10~15分かけて点滴静注し、造影剤注入後10分、20分、30分の臥位および30分立位を撮影する点滴静注腎盂造影(DIP)がある。

 

また排尿後撮影や60分後撮影など追跡検査をすることもある。

 

排泄性尿路造影(IVP・DIP)検査の目的

  • 腎排泄機能を知る。
  • 石の有無、狭窄、拡張、屈曲、尿流など)を知る。腎、腎杯、腎盂、尿管、膀胱の機能及び形態(結
  • 左右腎機能を別々に知る(分腎機能検査法)。

 

排泄性尿路造影(IVP・DIP)検査の実際

  1. 医師から患者家族へ検査の必要性、方法、合併症の可能性について説明し同意を得る。
  2. 排尿を済ませ、貴重品を除去し、検査着に着替える。
  3. 造影剤をインジェクター(造影剤自動注入器)に準備をする。
  4. 撮影台に立ち、撮影台のグリップをしっかり握ってもらい、横にする。
  5. 静脈ラインの確保をする。
  6. 単純撮影後、造影剤を静脈内注射する。
     ※ 造影剤を50~100 mL使用するが、はじめに1 mL注入し、患者のアレルギーなどの反応を観察後、残りを1~ 2分かけて注入する)
  7. 造影剤注入5分後、臥位で撮影を行い注射針を抜く。
  8. 造影剤注入15分後、臥位と立位でそれぞれ撮影を行う。
  9. 排尿後撮影や60分後撮影が追加される場合、そのタイミングで撮影する。
     ※ 腎機能障害や尿路閉塞などの排泄遅延のある患者の場合、30 分、60 分、120分後の撮影や体位を変えた撮影を追加する場合がある。
  10. 終了後、更衣し身支度をする。

 

排泄性尿路造影(IVP・DIP)検査前後の看護の手順

患者への説明

  • 腎臓、尿管、膀胱の形と働きを調べる検査である。
  • 造影剤(ヨード系)を注射し、その造影剤が腎臓から膀胱へ流れる状態を、時間を追ってX線撮影する。
  • 造影剤の副作用についての説明を医師より行い同意を得る。
  • 検査や造影剤の副作用などの疑問や不安に対応する。
  • 検査時間は30~60分を程度である。
  • 検査4時間前から画像を鮮明にするため絶食となる。飲水は可である。

 

準備するもの

・アルコール綿 ・駆血帯 ・肘枕 ・延長チューブ ・注射器 ・インジェクター ・22Gサーフロ針 ・絆創膏 ・ 造影剤(非イオン系:イオヘキソール(ヨード含有量15 g:300 mg/mL)など) ・血圧計 ステート ・救急カート(急変時の準備)

 

検査前の処置

  • 検査前1食を食止め(4時間あける)とし、水分摂取は可能である。
    ※ 消化管内にガスが貯留していると、尿路の影像と重なるため、読影の妨げとなる。
    ※ 造影剤の副作用として嘔気・嘔吐がある。
  • 薬の内服は、医師の指示を確認する。
  • 検査前に排泄を済ませ、検査室へ行く。
  • 尿カテーテルを留置している患者は、ペアンやカテーテルプラグでクランプする。
  • 腎瘻が造設されている場合も同様に、カテーテルをクランプする。

 

検査後の管理

  • 造影剤の副作用が特にみられなければ、飲食可能となる。
  • 水分制限がない場合、造影剤の排泄を促すため、水分を十分に摂取する。

 

排泄性尿路造影(IVP・DIP)検査において注意すべきこと

検査前

  • 前日にバリウム造影などの検査を受けていると、バリウムが腸に残っており、検査できない場合があるため医師に確認する。
  • アレルギーの体質、また既往症はないか、以前の造影剤の使用歴、その副作用の有無を確認する。
  • 禁忌:ヨード過敏症、血性クレアチニン2mg/dL以上(原則禁忌)、喘息発作などのアレルギー性反応の強い場合(原則禁忌)。

 

検査中

  • 造影剤注入中は、患者の側を離れず、副作用の有無を観察する(注入中から注入後5分後に起こりやすい、図1図2)。
  • 灼熱感、嘔気程度の症状は、正常でも起こるため、患者に深呼吸を数回行わせリラックスした状態とする。
  • 撮影ごとに声をかけ、副作用の観察、不安の除去に努める。
  • 検査は長時間に及ぶため、患者の保温に努める。

図1IVP検査(造影剤注入中)

IVP検査(造影剤注入中)

 

図2副作用

副作用

 

検査後

  • 患者への指導として、気分不快や皮膚発疹などが出現した際には連絡するよう説明する。
  • 検査終了後、飲食可であることの説明と水分制限がない場合、造影剤の排泄を促すため水分を十分に取るよう説明する。

 

排泄性尿路造影(IVP・DIP)検査に関する患者との問答例

排尿を済ませて検査着に着替え、時計、眼鏡など貴重品をはずして検査室にお入りください。

 

どれくらい時間は、かかりますか。

 

造影剤を注射して、5分後、15分後、排尿した後にレントゲンを撮り、終了になりますので30分くらいです。

 

わかりました。

 

寒くないですか?

 

わかりました。

 

では、撮影台の横に立って両脇のグリップを握っていてください。ゆっくり台を横にします。

 

はい。

 

これから造影剤を注射します。少しほてるようなことがありますが心配いりません。気分が悪くなったり、呼吸が苦しいかな・・・と思うようなことがあったらすぐにおっしゃってください。

 

少し熱くなってきました。

 

造影剤の影響なので心配ないですよ。吐き気はないですか? 少し深呼吸をしていてください。気分はどうですか?

 

大丈夫です。

 

これから撮影をします。この部屋にはマイクがついていますので、撮影中気分が悪くなったら声をかけてください。

 

わかりました。よろしくおねがいします。

 

略語

 

  • IVP:Intravenous Pyelography(静脈性腎盂造影)
  • DIP:Drip Infusion Pyelography(点滴静注腎盂造影検査)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護知識トップへ