各種心電図|心電図とはなんだろう(5)

 

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、各種心電図について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

モニター心電図

心電図を監視するための装置です。リードを直接モニターに接続する方法と、送信機から無線で情報を端末に飛ばして、ナースステーションなどで監視する方法があります。

 

モニター画面では、25mm/秒で波形を流して観察します。電極は、3極が一般的ですが、5~12極のものもあります。

 

3極の場合で装着を説明しましょう。電極はシールになっています。リードの先端はホックかクリップでシールに固定します。リード先端には色がついていて、赤・黄・緑の3色*です。装着位置は、赤が右鎖骨の下の上胸部、黄が左鎖骨下、側胸部で左肋骨の下端あたりがよいでしょう(図1)。

 

図1モニター心電図の装着部位

モニター心電図の装着部位

 

鎖骨の下は筋肉量が比較的少なく、筋肉の動きによるノイズ(筋電図)が少ない位置です。また、肋骨上は体動による影響が少ない位置です。電極3点で、誘導の切り替えが可能です。

 

たとえば、赤と黄色の電極でⅠ誘導、黄色と緑の電極でⅢ誘導になります。通常装着した状態ではⅡ誘導が出るように設定されます。誘導に使っていない残りの電極はアースの役目をしています。

 

モニター心電図は誘導がかぎられていますので、主に不整脈の監視用です。標準12誘導心電図のように、心臓全体の状態を判断するのには不適切ですが、24時間連続観察できる点、また状態の変化による、心拍数や不整脈が観察可能です。

 

また、最近は血圧酸素飽和度も同時にモニタリングし、しかも過去のデータを記憶しておく機能も充実していますので、患者さんの状態観察にはとても有用です。

 

*:赤・黄・黒のものもある。電極の装着位置が異なる。

 

ホルター心電図

まずウンチクを。1961年にホルター博士が開発したので、ホルター心電図になりました。皆さん、ホルダー心電図と濁って発音していないでしょうね。

 

これは、携帯式の記録装置に長時間の心電図を記録して解析するものです。電極は3~5極が主流で、現在は相当小さい装置になっています。装置を付けたまま、24時間通常の生活をしてそのデータを解析します。

 

解析は2つの誘導を用いますが、モニター心電図同様、主に不整脈を診断します。ただし、胸痛の患者さんのST-Tの変化で、狭心症の診断に用いる場合もあります。

 

運動負荷心電図

心臓に対して負荷をかけて心電図変化を見るものです。負荷は主に運動負荷です。

 

運動によって、心拍数、血圧を上昇させて心筋の仕事量を増加させますが、目標の心拍数は年齢によって設定されています。ただし、自覚症状や血圧、心電図の変化を見ながら無理のないところで負荷を終了します。

 

ローラーによって床を動かして、そのスピードや傾斜を変化させることで、運動の強度を変えながら心電図変化を見るものをトレッドミル負荷心電図といいます。自転車型の負荷装置をエルゴメーターといいます。

 

階段昇降による運動負荷はマスター負荷といいますが、トレッドミルやエルゴメーターと違い、標準12誘導心電図をモニタリングしながらの検査ができないのが難点です。

 

運動負荷心電図は12誘導の変化をとらえる検査ですので、労作性狭心症の診断に威力を発揮します。その他、運動負荷時の不整脈の出現や、運動能力の判定に用いる場合もあります。

 

まとめ

  • モニター心電図:持続観察する心電図。不整脈の監視が主な目的。入院患者さん対象
  • ホルター心電図:24時間の心電図波形を記録・解析する。不整脈、狭心症診断用。主に外来患者さん対象
  • 運動負荷心電図:心臓に負荷をかけて、心電図変化を見るもの。主に狭心症診断。外来、入院患者さんとも対象

 

 

[次回]

不整脈の読み方|不整脈の心電図(1)

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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