RI(核医学)検査|画像検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、RI検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

RI検査とはどんな検査か

放射性種を標識した放射性医薬品を人体に投与し、集積された放射性医薬品より放出されるγ線を体外より測定装置(シンチカメラ・ポジトロンカメラなど)で画像化し、定量測定(in vivo検査)を行ったり、採取した血液や尿などの試料を試験管内で試薬と反応させ微量物質の測定(in vitro検査)を行ったりする。

 

RI検査の目的

  • 臓器の機能や疾患の診断を行う。
  • 治療効果の評価を行う。

 

RI検査の実際

X線検査と核医学検査の違い

  • X線検査:体外からX線を照射し、X線の吸収の度合いにより臓器の輪郭形状・形態を把握する。
  • 核医学検査:患者に放射性医薬品を投与し、体外から放射性医薬品の分布を検出して画像化する。

図1X線検査と核医学検査の違い

X線検査と核医学検査の違い

 

画像検査法の種類

1)シンチグラフィ

体内に投与された放射性同位元素(radioisotope;ラジオアイソトープ、以下RI)から放出される放射線(γ線、X線)を検出して放射性同位元素の体内分布を投影像として画像化する方法。これに使用するカメラがシンチレーションカメラで得られた画像をシンチグラフという。

 

2)SPECT(single photon emission computed tomography;単一光子放射断層撮影)

体内のRI分布を断層像として画像化する方法である。

 

装置はシンチグラフィで使われるシンチカメラを身体の周囲で回転させて行うSPECTは基本的に同じ装置であるが、専用の小型SPECT装置もあり、脳や心臓領域で使われる。シングルフォトン(単一光子)のフォトンは電磁波(光)のことで、この場合はγ線をさしている。

 

 

 

3)PET(positron emission tomography 陽電子放射断層撮影;ペット)

体内に投与された陽電子(ポジトロン)放出RIから放射される消減放射線(γ線)を検出し、その体内分布を断層像として画像化する方法。

 

PET装置の放射線検出方法は、消減放射線は正反対の方向に同時に対で放射されるため、体の周囲に検出器を配列し同時に検出された信号のみを用いて断層画像を作成する。PET/CT画像のみでは解剖学的情報に乏しいため、X線CTによる解剖画像を重ねた融合(フュージョン)画像による診断が行われる。また、CT画像単独による診断も行える。

 

代表的な検査項目と放射性医薬品投与時間・処置

核医学の代表的な検査項目と放射性医薬品投与時間・処置を表1に示す。

 

表1主な核医学検査

主な核医学検査

 

放射性医薬品注射手順

  1. 必要物品を用意する。
    シールドに入った放射性医薬品、サーフロー針22~24G、三方活栓付延長チューブ、10mL生理食塩液シリンジ、消毒綿、固定用絆創膏、駆血帯、防護具:手袋・マスク
  2. トレーに1患者分の必要物品を入れ、検査伝票と照合する。
  3. 手指消毒を行い、防護具を装着する。
  4. 患者にフルネームで名乗ってもらう。
  5. サーフロー針で血管確保を行い、生理食塩液を充填した三方活栓付延長チューブを連結し、刺入部を固定する。
  6. 三方活栓より放射性医薬品を緩徐に注入する。
  7. 10mLシリンジの生理食塩液を10mL注入する(図2)。
  8. シリンジは医療用廃棄物、それ以外は放射性廃棄物として分別して廃棄する(図3)。

図2シリンジ製剤とタングステン合金シールド

シリンジ製剤とタングステン合金シールド

 

図3使用物品の廃棄方法

使用物品の廃棄方法

 

RI検査において注意すべきこと

  • 放射線を使用する検査を受けることで、漠然とした不安を抱える患者は多い。患者より不安の相談を受けた場合は、以下の点を説明し丁寧な対応を心がける。
    ・ 使用する放射線はCT検査の1/5 ~1/2程度の被曝放射線量であること。
    ・ 使用薬剤は副作用が少ないこと。
    ・ 撮影装置は身体や顔に接近することが多いが、接触するなどの危険性はないこと。
    ・ 撮影時間は数分から数十分であるが、放射性医薬品の静脈注射から時間をおいて撮影を行うため、検査項目により数日を要する場合もあること。
  • 検査室は放射線管理区域内であり、職員は専用のスリッパに履きかえる。
  • 核医学検査では、放射性医薬品の入った注射器や使用医療材料、放射性医薬品を投与された患者が線源となることから、被曝低減の三原則を順守する。核医学検査室における被曝低減の三原則とは以下をいう。
    ・ 距離:使用しない放射性医薬品は遠ざけて、放射性医薬品から距離をとる。
    ・ 時間:放射性医薬品の取扱いは手早く行う。
    ・ 遮蔽:放射性医薬品は使用直前まで遮蔽容器に入れておく。
  • PET/CT検査の場合
    ・ 検査当日は問診を十分に行い、糖尿病患者の状態・食事・生理の有無等に関して確認し、検査が安全に行われるための情報を得る。
    運動負荷により筋肉にRI が集積するため、放射性医薬品投与後は1時間程度安静にしてもらう。
    ・ 医療従事者、他の患者への被曝を防止するため、放射性医薬品投与後は個室あるいはカーテン等で遮蔽された場所で安静とする。
  • 放射性医薬品の静脈注射を看護師が行う場合には、医師による一定時間の教育と運用基準を作成することが望ましい。
  • ダイアモックスを使用した負荷血流シンチグラフィは、2014年に日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本核医学学会およびアセタゾラミド(ダイアモックス)適正使用合同検討委員会による緊急メッセージにおいて、重篤な副作用対策として生体情報のモニタリングが要請されている。
  • 放射性医薬品は徐々に減衰する有効期限のごく短い薬剤である。したがって、予定検査に合わせて翌日分の必要量のみを注文する。検査の中止があった場合は、高価な薬剤を破棄することがないよう、病棟・外来・検査室が連携し合い余裕をもって連絡を取り合うことが必要である。
  • 検査項目により、放射線を遮蔽しその部位の集積低下あるいは欠損として誤った診断とならないよう、装飾品・貴金属類は検査前に外してもらう(時計・メガネ・ブローチ・ネックレス・鍵・財布・ベルトなど)。
  • 運動負荷を伴う検査では、動きやすいように検査着に着替える。
  • 被曝の疑いがある場合は、サーベイメーターによる汚染部位の特定を行い除洗する(図4、5)。

図4放射線測定装置

放射線測定装置

 

図5汚染検査機(サーベイメーター)

汚染検査機(サーベイメーター)

 

RI検査

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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