嚥下機能が低下しているため、キザミ食にしたら誤嚥した!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、誤嚥したことを認識したが、その後の対処方法がわからなかった場合について解説します。
JA愛知厚生連 海南病院 看護部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
誤嚥を防ぐためのポイントは、患者さんの摂食嚥下の評価を適正にすることです。
食事開始前に水分やゼリーなどを摂取して評価を行い、誤嚥のリスクを減らすことが可能です。
嚥下機能低下時は患者さんへ十分に説明を行い、栄養士と協力しながら食事形態を選択することが必要です。
さらに、頸部伸展位では咽頭部位に食物や水分が残留し、誤嚥する危険が高くなるため、食事中の体位には十分に配慮します。
- 嚥下機能が低下している患者さんに対する食事の選択では、摂食嚥下機能を適切に評価する必要があります。
嚥下機能の状態と食事形態の不一致が起きてしまうと誤嚥を誘発しやすくなるため、注意が必要です。
起こった状況
症例
患者Aさんは手術後から3日間人工呼吸器管理を行っていました。
その後抜管し、食事が開始となりました。
もともとご飯は普通食を食べていましたが、早く食べる癖があること、さらに嚥下機能も低下しているという情報があり、看護師はキザミ食から開始しました。
Aさんは、「刻まれている食事」を食べ、咀嚼せずに飲み込み、誤嚥してしまいました。
咳をしますが、SpO2が低下してとても苦しそうにしています。
すぐに、看護師は緊急コールをして応援要請をしました。
吸引でもなかなか食物は取れない状態で困っています。
どうしてそうなった?
気管挿管が長期になった場合には、嚥下機能が著しく低下している可能性があります。
Aさんはもともと普通食を食べており、入院中に嚥下機能が低下していることを認識せずに食事摂取をしたことが原因で誤嚥したと考えられます。
さらに、Aさんは早くご飯を食べる癖があり、キザミ食で咀嚼が足りず、口腔で十分に食塊を作ることができずに、気道へ迷入したと考えられます。
どう切り抜ける?
1 気道閉塞はショックに移行することを認識する
食道に入るはずだった食物が気道に入ってしまった状態となるため、A(気道:airway)、B(呼吸:breathing)の評価を速やかにする必要があります。
咳嗽反射がある場合は、咳を促して排出してもらう方法もありますが、咳嗽力が弱く、発声不可、SpO2の低下といった状態であれば、気道閉塞の可能性があるため介入が必要です。
気道閉塞では空気の通り道が通行止めとなり、急激に低酸素血症となります。
そのため、気道・呼吸の安定化を速やかに図る必要があります。
異変を認識した際にどこに問題があるか漏れなく評価する方法として「ABCDEアプローチ」があります(図1)。
図1ABCDEアプローチ

・ 青色で示したものは、生体モニターで数値化できる
・ 黒色は、実際に患者のフィジカルアセスメントが必要
どの部位が異常を来しても生命の危機的状況に陥る可能性があることを念頭に置く必要があります。
2 気道閉塞を認識した場合の対応
気道閉塞を認識した場合は、気道を確保(頭部後屈顎先挙上)し、速やかに酸素投与を行い、口腔にある食物を除去する必要があります。
口腔の見える範囲や吸引で取れる部位に異物がある場合は、除去できる可能性があります。
しかし、無理に異物を除去しようとすると、吸引による酸素化悪化や気道の損傷、最悪の場合はさらに気管の奥に入る可能性があるため注意が必要です(図2)。
図2吸引チューブと気管の関係

腹部突き上げ法や背部叩打法を施行しても効果がなく、呼吸状態の悪化に加えて意識消失や頸動脈の触知不可といった心停止徴候を認めた場合は、すぐに心肺蘇生が必要となります。
救急カートや挿管セットをいつでも使用できるように準備しておく必要があります。
3 気道確保が困難な場合
気道確保をして、必要な場合は補助換気を行いますが、しっかりと換気が肺に入っているか観察が必要です。
呼吸音が聞こえるか、両胸郭挙上の左右差がないか、SpO2の値は出ているか、チアノーゼは出ていないかといった「B(呼吸)の評価」が必要です。
酸素化を維持するためには、まずは気道が開通してないといけません。
補助換気を行っても酸素化維持ができない場合は、正しく気道確保ができていない可能性があります。
特に、意識レベルが低下している場合は舌根沈下が起き、換気しづらい状況です。
また、気管挿管をするにしても十分に体の中の酸素化を維持する必要があるため、気道確保手技は重要です。
徒手的気道確保をしていても効果的な換気ができていない場合は、経口エアウェイや経鼻エアウェイの使用を速やかに行いましょう(図3)。
図3経口エアウェイと経鼻エアウェイの使用法

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1) American Heart Association:BLSプロバイダーマニュアルAHAガイドライン2020準拠.シナジー,東京,2020.
2) American Heart Association:ACLSプロバイダーマニュアルAHAガイドライン2020準拠.シナジー,東京,2020.
3) 松尾理編:QUICK生理学・解剖学 人体の構造と機能・病態生理.羊土社,東京,2022:166-167.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



