口腔ケアをしたら歯肉から出血してしまった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんに普段通りに口腔ケアをした際に、歯肉出血があり止血困難となった場合について解説します。
JA愛知厚生連 海南病院 看護部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
口腔ケアは日常生活援助の1つですが、私たちのケア1つで良くも悪くもなります。
口腔の評価を適正に行い、環境を維持することは患者さんの今後のQOLにも影響します。
口腔ケアは毎日のケアであり、多くのスタッフがかかわるため情報共有や手技の統一も重要です。
日々の観察により異常の早期発見につながり、状態悪化を最低限にすることができます。
- 入院患者さんでは、絶飲食、意識障害、治療の副作用などのさまざまな要因により口腔環境が悪化し、口腔の粘膜が傷つきやすい状態となっている場合があります。
このようなとき、通常通りに口腔ケアをすると歯肉や粘膜の損傷につながる可能性があります。
口腔ケア前に患者さんの状態や口腔の評価を行い、適切な口腔ケア方法を選択し、口腔環境を維持する必要があります。
起こった状況
症例
患者Aさんは化学療法を開始し、1クールを終了したところです。
採血では徐々に血小板数が減少していました。
食事や飲水も十分に摂ることができず、経静脈栄養が開始となりました。
ある日、Aさんは倦怠感が強かったため、看護師が口腔ケアを行いました。
口腔が乾燥していましたが、普段と同じように歯ブラシで口腔ケアをした結果、歯肉から出血が止まらない状態となりました。
急いでうがいをしてもらいましたが止血されず、どうしたらよいか困っています。
どうしてそうなった?
私たちの口腔は唾液で湿潤環境を維持しています。
普段、食事や飲水をしていると唾液が分泌されやすいのですが、このケースの場合は食事や飲水が十分にできず、口腔の唾液の分泌機能や浄化作用が徐々に低下したと考えられます。
さらに、化学療法により血小板数が低下し出血傾向になっていました。
口腔の粘膜は乾燥により傷つきやすいため、普段実施している歯ブラシも物理的な刺激となり、出血につながったと考えられます。
どう切り抜ける?
1 出血点を特定し、刺激しない
歯肉から出血した場合は、場所の特定を行い、出血部位を刺激しないようにします。
刺激を止めてもすぐに止血しない場合は圧迫止血を行います(図1)。
図1圧迫止血の様子

止血点を確認し清潔ガーゼで覆い歯肉を挟み込みように直接圧迫する。
5〜10分程度止血しても出血が継続する場合は止血効果のある薬剤の使用検討を行う。
さらに、圧迫止血でも効果が乏しい場合には、止血効果のある薬剤(表1)を検討する必要があります。
表1口腔出血で使用される薬剤の一例
圧迫止血法にて効果が乏しい場合に使用を検討する。
口腔外科医師や歯科衛生士などに専門治療を依頼し、対応することが推奨される。

血餅がある場合は、無理に除去する必要はありません。
止血のメカニズム1の中で一次止血に血小板を使用するため、刺激すると出血と止血を繰り返すことにつながります。
よって、血小板数が減少し、さらなる出血傾向を招きます。
止血をした場合は歯ブラシはもちろんですが、スポンジブラシでも刺激をせずにハチアズレⓇなどによる口腔洗浄や保湿剤の塗布にとどめるように口腔ケアを愛護的に行います。
2 口腔評価を行う
口腔ケア前後に口腔の評価を継続的に行う必要があります。
口腔評価には多くのツールがあります(表2)。
表2口腔ケア評価ツール

日本クリティカルケア看護学会口腔ケア委員会:気管挿管患者の口腔ケア実践ガイド.2021.(2024/05/23アクセス)を元に作成
これらのツールを活用して口腔ケアのプロトコルを遂行することで、口腔の状態によってケアの選択を適切に行うことができます。
また、口腔ケアを実践する中で、口腔の点数がどのように推移しているか経過観察することができ、口腔ケアの選択の評価もすることが可能です。
3 出血傾向を評価する
血小板数の正常値は15〜35万/mm3ですが、血小板数が5万/mm3以下まで低下すると、個体差はありますが、粘膜から出血しやすくなります。
血小板の減少には、骨髄での血小板産生の低下、血小板の消費や破壊、体の中の分布異常などさまざまな要因が関与しています。
そのため、限りある血小板をケアによって減少させず、愛護的なケアを行います。
さらに、血小板の減少は薬剤性でも起こります。
特に、NSAIDsや抗血小板薬を服用していると血小板が作用しにくく、出血傾向となりやすくなるため内服薬の確認が不可欠です。
4 口腔の湿潤環境を維持する
口腔環境を維持するためには口腔ケア方法を標準化する必要があります。
口腔ケアの介入時間や手法を統一することで、口腔にトラブルが起きたとしても原因を特定し迅速に対処することが可能になります。
また、口腔ケア以外に、口腔湿潤環境を維持するための方法として保湿剤があります。
保湿剤にはジェル、スプレー、洗口液などさまざまな種類(図2)がありますが、いずれも用法や用量を守って使用する必要があります。
図2洗口液や保湿剤の一例
〈洗口液〉

ネオステリンⓇグリーンうがい液0.2%(日本歯科薬品株式会社)
適正濃度に希釈して普段の口腔ケアで使用。洗い流しは不要
〈保湿剤〉

コンクール・マウスジェル(ウエルテック株式会社)
口腔の乾燥が著明、口腔の分泌物の軟化目的に使用
〈保湿剤〉

バトラージェルスプレー(サンスター株式会社)
口渇感のある患者さんにも使用可能
必要量以上に使用するとジェルでは長時間の放置で菌が繁殖しやすく、古いジェルがこびり付き除去しにくくなり、逆に乾燥してしまいます。
スプレーでは一度に多く噴霧すると咽頭部へ垂れ込み、誤嚥する可能性があります。
そのため、噴霧時は頭側拳上をするなど体位調整が必要です。
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1) 大野博司:ICU/CCUの薬の考え方・使い方.中外医学社,東京,2011.
2) 日本クリティカルケア看護学会口腔ケア委員会:気管挿管患者の口腔ケア実践ガイド.2021.(2024/05/23アクセス)
3) 松尾理:QUICK生理学・解剖学-人体の構造と機能・病態生理.羊土社,東京,2022:154−155.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



