気管挿管困難であることはわかっていたが挿管に30分以上かかってしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんが気管挿管困難であることはわかっていたが、挿管に30分以上かかってしまった場合について解説します。

金 姫静

社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 看護部
救急看護認定看護師

 

 

患者が気管挿管困難であることはわかっていたが、挿管に30分以上かかってしまい、その様子に焦っている医療スタッフたちのイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

気管挿管困難が予想された場合は、外科的気道確保を行う可能性があるため、すぐに使用できる状態に準備する必要があります。
気管挿管困難時のシミュレーションを行い、医療チームで共通認識を持ち行動できるように、日頃より緊急時に備えておく必要があります。

 

POINT
  • 患者さんの状態から気管挿管困難が予測される場合、安全な気管挿管方法や代替手段について検討し、最大限事前に準備し対応する必要があります。

 

 

起こった状況

症例

60歳代、男性、肺炎治療で一般病棟入院中。
酸素投与をしていましたが、呼吸状態が悪くなり人工呼吸器管理を行うことになりました。
既往に甲状腺がんがあり、鎮静をしてビデオ喉頭鏡を使用して気管挿管を試みましたが、30分かかっても気管挿管できず、SpO2の低下がありました。

 

 

どうしてそうなった?

甲状腺がんの影響で気管が左右どちらかに偏る“気管偏移”があるため、声帯を確認しづらく気管挿管に時間がかかった状態です。
鎮静剤を使用しているため自発呼吸は低下または消失しており、A(気道:Airway)の異常(気道確保できない)が続くと気道が閉塞してしまいます。
呼吸停止した場合は、低酸素血症に陥るまでの時間は短く、生命が危険な状況になる可能性があり、とても注意が必要です。

 

 

どう切り抜ける?

1 気管挿管の手技を中止し酸素化を改善する

気管挿管の手技中にSpO2酸素飽和度)が低下して90%になると、呼吸不全の定義であるPaO2動脈血酸素分圧)60Torr以下となります。
組織への酸素供給量が低下しているため、気管挿管の手技を中断して、酸素化を改善する必要があります。

 

同一医師の気管挿管操作あるいは同一器具(直視型喉頭鏡やビデオ喉頭鏡[図1])を用いた操作を3回以上繰り返すと、上気道浮腫のリスクが高くなります。

 

図1ビデオ喉頭鏡(マックグラス)

ビデオ喉頭鏡(マックグラス)を表す図

 

気道内操作を繰り返すことで上気道浮腫を起こし、マスク換気の状態が悪化することで予後不良となるためです。
その時点におけるマスク換気の状態を確認し、胸郭の挙上があるか、すばやくSpO2が上昇するか、マスクフィットは適切か評価します。
ガスリークがある場合は、酸素流量を増加します。

 

2 気管挿管困難(失敗)の判断を行う

熟練した医師が2回試みても気管挿管できず、マスク換気でも酸素化を保てない(SpO2 90%以下)場合、気管偏移による気管挿管困難と判断します。
緊急の外科的気道確保に切り替えることを医療チームで確認し、救命を最優先する必要があります。
病院内の救急応援体制(コードブルー)がある場合は、気管挿管困難であることを報告し、応援を要請します。

 

気管挿管に時間がかかっているため、重篤な低酸素血症と高二酸化炭素血症による重症不整脈や心停止に備え、緊急カートやAEDなどの蘇生対応も迅速に進めておく必要があります。

 

3 外科的気道確保の方法

緊急の外科的気道確保として、輪状甲状膜切開または輪状甲状膜穿刺が選択されます。
医師の指示に従い、必要物品を準備し介助を行います(図2)。

 

図2外科的気道確保の必要物品

外科的気道確保の必要物品を表す図

このほか、局所麻酔薬、注射針、注射器、パルスオキシメータ、吸引チューブなどを準備する。

 

輪状甲状膜切開は、内径6mm以上の気管切開チューブや輪状甲状膜切開用キット(図3)を切開孔から気管挿管し、バッグバルブマスク(BVM)を接続して換気します。

 

図3輪状甲状膜切開キット

輪状甲状膜切開キットを表した写真

上:Melker(緊急用輪状甲状膜切開用カテーテルセット(クックメディカルジャパン合同会社)

下2点:トラファイン®(株式会社トップ)

 

輪状甲状膜穿刺は、14G留置針(3〜4本)やクイックトラックTM、トラヘルパー(図4)を気管に使用します。

 

図4輪状甲状膜穿刺キット

輪状甲状膜穿刺キットを表した写真

上2点:クイックトラックTM(ICUメディカルジャパン株式会社)

下:トラヘルパー(株式会社トップ)

 

穿刺した静脈針や静脈留置針に2.5mLのシリンジの外筒と気管チューブから外したコネクタを接続し、BVMで換気します。

 

4 外科的気道確保後の対応

外科的気道確保は、酸素化と換気を維持する手段としては不適当なため、一時的な救命的気道確保の手段と考え、72時間以内に気管切開に移行する必要があります。

 

輪状甲状膜穿刺は、気管吸引と換気が不十分なため、速やかに輪状甲状膜切開へ移行するか検討します。

 

 

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参考文献 閉じる

1) 山勢博彰:クリティカルケア アドバンス看護実践.南江堂,東京,2013:19-25.

2) 清水敬樹:ICU実践ハンドブック.羊土社,東京,2013:111-113.

3) 日本気管食道科学会:外科的気道確保マニュアル第2版:日本気管食道科学会,東京,2023:35-52.(2024/5/23アクセス)

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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