術後、末梢冷感があったため、温風加温器で加温したところ血圧が下がった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、術後に末梢冷感があったため、温風加温器で加温したところ血圧が下がった場合について解説します。

山下 美由紀

河北総合病院 看護部
手術看護認定看護師

 

 

 

術後、患者に末梢冷感があったため、温風加温器で加温したところ血圧が下がり焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

術後の末梢冷感は代償反応の1つです。
他にも代償的な症状が出現していないか見落とさないように観察を行い、適切な体温管理をすることで血圧低下を防ぐことができます。

 

POINT
  • 末梢冷感があるということは、代償的に末梢血管を収縮させ、血圧を維持している可能性があるということです。
    そのような患者さんに温風加温器で急激に復温すると、末梢血管が拡張し血圧が低下する可能性があるため注意が必要です。

 

 

起こった状況

症例

開腹手術を受けたAさん。
手術室から病室へ戻ったときのバイタルサインは血圧120/77mmHg、脈拍67回/分、体温36.3℃でした。
Aさんは寒気を訴えていたため、担当看護師は温風加温器を使用して加温しました。
30分後に再訪室し、バイタルサインを測定すると、血圧80/58mmHg、脈拍103回/分、体温36.8℃でした。
急激に血圧が下がってしまったことに驚き、すぐさま先輩看護師へ相談に行きました。

 

 

どうしてそうなった?

術後は、手術侵襲により血管透過性が亢進した状態にあり、血管内容量の減少が考えられます。
このような生体反応以外にも、手術中や術後の出血による循環血液量減少にも注意が必要です。

 

この状態で末梢冷感があるといって急激に加温すると、収縮していた血管が急激に拡張し血圧が低下してしまう“リウォーミングショック”という現象が起こりやすくなります。

 

 

どう切り抜ける?

1 術後に低体温になる理由を把握する

手術を受ける患者さんは、麻酔薬の使用や手術室の環境、手術操作によって体温が下がりやすい状況にあります。
そのため、手術室では適切な保温・加温を行い、低体温にならない体温管理を目指しています。

 

しかしながら、長時間や出血量の多い大きな侵襲が加わるような手術では、炎症性サイトカインや内因性発熱物質の影響によって体温調節中枢のセットポイントが上昇するため、退室時の測定温は異常値でないのに相対的に低体温になっている可能性があります(図1)。

 

図1術前・術中・術後の閾値間域の変化と自律性体温調節反応

術前・術中・術後の閾値間域の変化と自律性体温調節反応を表した図

 

2 末梢冷感がある原因をアセスメントする

1)末梢循環不全

循環血液量が減少しているとき、生体は恒常性を維持しようと働きます。
このときの代償反応として、心拍数呼吸数の増加、末梢冷感、チアノーゼ、冷汗、尿量減少といった症状が出現します。
末梢冷感は、循環血液量減少のサインかもしれません。

 

近年では、過剰輸液や制限輸液にならないよう手術中の適切な輸液管理が目標とされていますが、手術室から病棟にそのまま帰室するような症例の多くは、術後の状態を見てみないと血管内容量が足りているのかはわかりません。
患者さんが受ける手術の侵襲程度と合わせて、術中の出血量や輸液の内容・量を確認し血管内容量が維持されているかアセスメントを行う必要があります。
末梢循環不全の有無を確認する最もすばやくできる方法はCRT(毛細血管再充満時間)を確認することです。
それが2~3秒以上を要する場合は末梢循環不全が疑われます。

 

また、術後出血が起こっていないかドレーンや創部の観察も忘れずに行うことも大切です。
シバリングや痛みは高血圧を誘発し、術後出血につながる可能性もあります。
患者さんの訴えや全身状態の変化を見落とさないようにする必要があります。
術後に採血がある場合は、凝固線溶系異常がないか血液検査データも確認しておくことも大切です。

 

2)環境温の変化

麻酔薬の効果が遷延している場合は、周囲の温度変化を受けやすい状態にあるため、室温設定も適切であるか確認が必要です。

 

3 適切な復温方法を実践する

体温には末梢温と中枢温があります(表1)。

 

表1末梢温と中枢温

末梢温と中枢温を表した表

 

末梢温は外部環境の影響を受けやすいため、適切な体温管理を行う際は中枢温の測定が重要です。

 

しかしながら、現場では腋窩や口腔内など末梢温を測定する場面のほうが多いはずです。
中枢温とは温度差があること、術後の患者さんは麻酔や手術侵襲によって体温調節機構が不安定な可能性があることを認識しアセスメントする必要があります。

 

術後に末梢冷感を認め、かつ低体温になっている患者さんの復温では急激な加温を避けることは鉄則です。
英国国立医療技術評価機構(NICE)は周術期低体温予防に関するフローチャート(図2)を公表し、術前からの厳密な体温管理が見直され、術後も温風加温器による積極的加温が勧められています。

 

図2周術期低体温予防に関するフローチャート

(英国国立医療技術評価機構(NICE)が公表しているPerioperative hypothermia(inadvertent)ガイドラインより引用改変)

周術期低体温予防に関するフローチャート

中嶋康⽂:⿇酔・集中治療領域における体温管理のガイドライン作成の検討.⽇本臨床⿇酔学会誌 2010;30(3):393-397.より引用

 

このフローチャートから学ぶことは多いですが、患者さんの身体反応に応じた適切な復温方法を選択し実践することが重要になります。

 

多くの場合、術後は入室時と同程度まで復温しているため、室温の調整や毛布などで体を被覆することで患者さんの不快感を除くことができるはずです。

 

 

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引用・参考文献 閉じる

1) 飯島毅彦:術中輸液の考え方の流れ.昭和学士会誌 2018;78(5):440-448.

2) 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会編:周術期管理チームテキスト 2016;3(1):324-328.

3) 日本手術看護学会手術看護基準・手順委員会:手術看護業務基準 2018;1(2):31-34.

4) 中嶋康⽂:麻酔・集中治療領域における体温管理のガイドライン作成の検討.日本臨床麻酔学会誌 2010;30(3):393-397.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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