前腕に静脈注射したら、指先の痺れを訴えた!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、前腕に静脈注射したら、指先の痺れを訴えた場合について解説します。
製鉄記念八幡病院看護部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
静脈穿刺の際は、できるだけ太い静脈を選択します。
橈側皮静脈(肘窩部の親指側)が最も安全です。
避けるほうがよい血管は、肘窩部内側の尺側皮静脈(付近に比較的太い神経が走行)、手関節部の橈骨皮静脈(橈骨神経浅枝が近い)です。
正しく穿刺しても神経損傷を来す可能性があるため、穿刺を避けます。
非利き手から穿刺部位を選ぶことも必要です。
複数回の穿刺や深く穿刺しないよう血管を十分に怒張させるようにします。
- 静脈注射では、穿刺から投与直後、投与後まで何らかの作用や障害が発生することがあります。
静脈穿刺による末梢神経障害はまれに発生し、治療にもかかわらず疼痛や感覚障害が残ります。
症状は、数日の経過で消失する痛みや痺れから、数年にわたり持続する痛みや痺れ・運動障害まで、重症度はさまざまで、日常生活に支障を来す障害が残る場合もあります。
起こった状況
症例
医師から消化性潰瘍薬の静脈注射を依頼され、患者さんに静脈注射を行いました。
逆血は確認できましたが、患者さんから指先の痺れと痛みの訴えがありました。
逆血はあったのにどうしてと思いつつ、すぐに抜針し患者さんの状態を確認しました。
どうしてそうなった?
静脈と神経の解剖を見ると、静脈のそばに神経が走っています(図1)。
図1前腕部の静脈と神経の走行

尺側正中皮静脈の近傍には正中神経本幹や内側前皮神経が、手関節部の橈側皮静脈の近傍には皮神経が走行しているため、特に手関節部の橈側皮静脈や肘部尺側での穿刺は神経損傷の危険性が高い部位となっています。
皮膚近くの神経は個人差があるので、神経損傷を100%防止することはできません。
どう切り抜ける?
まず、指先の痺れの原因を追求することが必要です。
注射してすぐに疼痛、痺れを訴えていれば、穿刺時に神経を損傷したことが考えられます。
薬剤を入れている途中ならば、注射時に針が動き損傷した可能性や薬剤が漏れている可能性があります。
患者さんが疼痛や感覚障害を訴えたら、とにかくすぐに抜針を行ってください。
逆血がある、採血ができているからといって終わってから抜くのでは遅いのです。
また、患者さんが痛みを訴えているのにすぐに抜かないのは、後々の信頼関係にも影響します。
そして、患者さんの状態、痺れや痛み(どこからどこまで、どのくらい)、運動状態の確認を行います。
局所の保温と安静を保ち、整形外科受診などを行ってください。
後日であっても、異常な痛みや痺れ、知覚異常があれば、神経内科や整形外科へ紹介し、受診していただきます。
そして、発生したことを上司や主治医、安全管理者へ報告することが必要です。
また、採血が不成功の場合は、他の実施者に交代することも大切です。
患者さんには穿刺前に異常な痛みを我慢しないよう説明しましょう。
採血後に少しでも違和感や感覚の異常があれば、すぐに来院するよう伝えます。
「気のせいですよ」「大丈夫だと思います」などの勝手な判断や発言はしないことが重要です。
医療過誤問題に発展する恐れがあるためです。
目次に戻る
1) 有川智子,眞鍋治彦,久米克介,他:静脈穿刺により末梢神経障害をきたした16症例.日本ペインクリニック学会誌 2007;24(2):100-104.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社


