手術のため出棟しようとしたら、内服のためにおにぎりを食べたことがわかった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、手術のため出棟しようとしたら、内服のためにおにぎりを食べたことがわかった場合について解説します。
河北総合病院 看護部
手術看護認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
術前絶飲食の目的を理解し、協力を得られる患者さんであるかどうか見極める必要があります。
術前は何をいつまでどれくらい飲食して良いのかはっきり患者さんに示しておくことが大切です。
特に注意が必要な患者さんでは、飲食できない環境を作ることで術後の誤嚥性肺炎を予防することにつながります。
- 緊急手術を除く待機手術を受ける患者さんは、麻酔に伴う誤嚥性肺炎を予防するために、術前の絶飲食が必要です。
手術前に飲食をした場合、手術の延期や中止につながる可能性があるため、患者さんや家族に対して絶飲食時間を明確に示すことが重要となります。
起こった状況
症例
鼠径ヘルニア手術を受けるAさん。
担当看護師は手術オリエンテーションで、手術当日までの飲食可能時間や過ごし方、注意点等を説明しました。
その際、当日は内服薬があるため、食事はせずに少量の水で内服するよう説明し、Aさんから「わかりました」と返事がありました。
手術当日、看護師が訪室すると、テーブルの上におにぎりを食べたような形跡がありました。
Aさんに尋ねると、「食事はしていない。おにぎりは軽食だろ?それに薬は何か食べてから飲むものだろ」と返ってきました。
Aさんが内服のために飲食したことが発覚したため、手術の入室時間を遅らせることになりました。
どうしてそうなった?
胃内に食物や水分がある状態で全身麻酔を受ける場合、意識消失から気管挿管までの間に胃内容が逆流し、誤嚥性肺炎に至る可能性があります。
飲食物の種類によって、胃から十二指腸へ排出されるまでの時間は異なるため、飲食したものに応じて麻酔開始までの時間を空ける必要があります。
どう切り抜ける?
1 術前絶飲食が必要な理由を説明し理解が得られているか確認する
術前絶飲食の徹底には患者さんの協力が必要です。
術前絶飲食はなぜ必要か、いつから飲食してはいけないのかを十分に説明し理解が得られているか確認することが重要です。
小児や認知症患者、精神疾患患者においては、家族の理解も得られているか確認しておく必要があります。
家族の支援が得られない場合は、服薬行動を支援したり、絶飲食時間をわかりやすくベッドサイドに明記したりするなどして絶飲食が守られる環境づくりが必要です(図1)。
このケースでは、いずれにせよ手術時間を変更する判断が優先されます。
図1絶飲食を守る環境づくり

2 必要な絶飲食時間を確認する
日本や欧米の「術前絶飲食ガイドライン」によると、清澄水、母乳、人工乳・牛乳、固形物の摂取物によって絶飲食時間は異なります(表1)。
表1日本と米国の術前絶飲食ガイドライン

軽食とは、トーストを食べ清澄水を飲む程度の食事。
さらに、近年の研究では含有カロリーと胃の排泄時間の相関関係が明らかになってきたため1、担当医師や麻酔科医の絶飲食指示をしっかり確認しておくことが重要です。
患者さんによって決められた絶飲食指示を確認し、指示通り食事や飲水が停止されているか確認しておきましょう。
3 患者さんの不快感や脱水に注意する
術後早期回復を目的とするERAS(術後回復力強化)の積極的導入によって、術前経口補水液の摂取が推奨されています。
これによって、脱水の予防だけでなく、口渇感や空腹感の緩和、点滴による合併症軽減や行動制限回避など患者満足度の向上にもつながっています。
術前2時間前までの経口補水液の摂取では、胃内容の増加は認められていないため、安心して飲めることを説明しておきましょう。
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1) 岡部格:胃排泄速度の規定因子.臨床麻酔 2018;42(7):941-948.
2) 岡部格:全麻前にアンパン食べたら手術は翌日に延期?!【寄稿 目からウロコの術前絶飲食】.m3.com 臨床ダイジェスト;2019.(2024/3/18アクセス)
3) 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会編:周術期管理チームテキスト 2016;3(1):440-441.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社


