ICUにおける早期リハビリテーションと他動関節運動
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「ICUにおける早期リハビリテーションと他動関節運動」について解説します。
関根庸考
市立青梅総合医療センター クリティカルケア特定認定看護師
杉中宏司
市立青梅総合医療センター 救急科副部長
早期リハビリテーション
- ICU での早期からの積極的なリハビリテーションは、運動能力、筋力、および生存日数を改善する可能性がある1)。
- 積極的なリハビリテーションとは、神経筋電気刺激療法(NMES)、他動関節運動、自動関節運動、端座位、歩行などである。
- ICU での重症患者における早期リハビリテーションは禁忌と開始・中止基準を明確に設定することで安全に実行できる。
- 早期リハビリテーションの禁忌と開始・中止基準について表1、表2、表3に示す。
表1早期リハビリテーションの禁忌

表2早期リハビリテーション開始基準

表3早期リハビリテーション中止基準

(日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会:集中治療における早期リハビリテーションー根拠に基づくエキスパートコンセンサス,日本集中治療医学会雑誌,2017,24(2):281より引用、一部改変)
- また、リハビリテーション中は、意識レベル、血圧変化、不整脈の有無、SpO2変化、自覚症状(動悸、呼吸苦、嘔気、疼痛、めまい、気分不快)、せん妄の有無などの 6 項目を評価していく。
- 患者状態に応じてリハビリテーションは段階的に組み合わせて実施していくことが重要である(図1)。
図1早期リハビリテーションのレベルと内容

- リハビリテーション内容をレベルアップするタイミングは、リハビリテーション負荷によって、上記の 6 項目に悪化がないか評価し、病態的に安静度の拡大が可能である場合にレベルアップを図っていく。
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他動関節運動
- ICU に入室する重症患者は、不安定な循環動態、意識レベルの低下、鎮静薬の使用などで早期から積極的運動療法を行うことが困難な場合が多い。
- そのため、ベッド上での他動関節運動が主体となる。
- 他動関節運動を実施する目的は、骨格筋内のコラーゲン含有量の減少、筋内膜コラーゲン繊維の配列の縦走化、骨格筋内のコラーゲン分子間架橋結合の減少化による骨格筋の伸張性の増大、関節可動域の拡大、筋繊維構造の維持である。
- 他動運動は疾患や病態により異なるが、 1日 1 回から数回、主要関節を 5 ~10回程度反復して動かす方法が一般的である。
- 主要関節の他動運動について写真 に示す。
写真主要関節の他動関節運動










- また、 神経筋電気刺激療法(NMES:neuromuscular electrical stimulation)の機器がある施設においては多面的な介入の 1つの手段として活用するとよい。
- NMES は重症患者の不動に伴う骨格筋障害に対して骨格筋を収縮させ、他動的な筋活動によってその障害を予防、改善する。
- 全体的な筋力低下、ICU 死亡率、人工呼吸期間、ICU 滞在期間を改善する可能性がある。
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1 )Tipping CJ,et al.: The effects of active mobilisation and rehabilitation in ICU on mortality and function: a systematic review. Intensive Care Med. 2017 Feb;43( 2 ):171-183. doi: 10.1007/s00134-016-4612-0. Epub 2016 Nov 18. PMID: 27864615.
2 )日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会:集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~,日本集中治療医学会雑誌,2017,24( 2 ):p.255-303
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


