2017/10/24 のクイズ

Aさんは40代男性で、統合失調症と診断されています。18歳の時に発症し、これまでに5回の入院歴があります。入院後も自閉的な生活が続いており、ほとんどほかの患者さんとの交流はありません。最近は一日中コップを片手に持ち、洗面所と部屋を行き来するなど飲水行為が目立っています。身長168cm、今朝の起床時の体重は60kgでしたが、昼食後に再度測定すると、67kgまで増加していました。表情もボーっとしており、問いかけにも返答がありません。歩行時にふらつきが見られ、昼食前にズボンの前を濡らしたまま歩いていました(尿失禁)。このような状態の多飲水患者さんへの看護として最優先される対応はどれでしょうか?
  1. 1. 患者に朝と夜に体重測定を行ってもらい、1日で摂取できる水分量を伝え、それをうまく配分、コントロールできるよう看護師が教育的な援助を行う。
  2. 2. 水に集中している意識がほかのものに向くよう、作業療法やレクリエーションなどを導入し、気分転換を図るよう援助する。
  3. 3. コップを看護師が管理し、飲水量を厳しくチェックする。それでも飲水が止まらず体重がプラス5kgになれば、保護室で隔離を行い、水分摂取を強制的に制限する。
  4. 4. Aさんは、昼食後の体重が基礎体重よりプラス5%を超えており、意識障害も疑われるため、血液検査を考慮する。

挑戦者3794人 正解率48%

1. 患者に朝と夜に体重測定を行ってもらい、1日で摂取できる水分量を伝え、それをうまく配分、コントロールできるよう看護師が教育的な援助を行う。
不正解

軽症レベルで、多飲はあるものの、体内への水分の貯留の異常はない状態であれば、できる限り水分を一方的に制限するのではなく、患者さん自身でセルフコントロールできるように援助することが、多飲症患者さんへの看護の基本となります。しかし、Aさんの場合は、中等度レベルの多飲水で、歩行時のふらつきや尿失禁ありといった行動面の様子から既に軽度の意識障害を起こしている可能性が考えられます。軽度でも意識障害があると、教育的介入は効果がありません。

2. 水に集中している意識がほかのものに向くよう、作業療法やレクリエーションなどを導入し、気分転換を図るよう援助する。
不正解

多飲水患者さんに対する中・長期的な援助方針としては、患者さんの水への渇望をほかの関心へ向けるこの対応が最も適切ではありますが、Aさんの場合、すでに多量の水が体内に貯留し、尿失禁まで見られる状態のため、このようなかかわりの優先度は低いと考えます。

3. コップを看護師が管理し、飲水量を厳しくチェックする。それでも飲水が止まらず体重がプラス5kgになれば、保護室で隔離を行い、水分摂取を強制的に制限する。
不正解

Aさんのように、意識障害を起こしている可能性があるような状態では、水分を強制的に制限することは不可欠で、保護室隔離も必要な状態と言えます。しかし、基礎体重と増加率だけのデータで一律に隔離を行うことは適切とは言えません。隔離を行うことでかえって患者さんの水への渇望が高まり、悪循環に陥る可能性もあります。隔離は慎重に判断する必要があります。

4. Aさんは、昼食後の体重が基礎体重よりプラス5%を超えており、意識障害も疑われるため、血液検査を考慮する。
正解

Aさんの場合、症状などから中等度レベルの多飲水症が疑われます。基礎体重(起床時の体重)から計算してリミットの目安は64~65kg程度であることや、歩行時のふらつきや尿失禁などから意識障害を起こしている可能性も否定できません。多飲水については出来る限り強制的な水分制限ではなく、自己コントロールによる水分摂取を援助するのが基本です。しかし、軽度でも意識障害があると教育的介入は効果がありません。そのため、低ナトリウム血症による意識障害が出現していないかを血液検査により確認した上で、看護師の観察下での水分制限が必要となります。強制的な水分制限や保護室隔離を行うかどうかは、こういった一連のアセスメントを行った後に判断します。

引用参考文献など

1)新津功務ほか.川上宏人ほか編.3章 多飲症看護の具体的方法.多飲症・水中毒:ケアと治療の新機軸.医学書院,2010,79-107.
2)深沢裕子.宇佐美しおり編著.多飲水、水中毒から意識障害を呈する患者.困ったときの精神看護.医学書院,2002,15-26.
3)吉浜文洋編著.PART2.ケアの発想を変える多様な視点.水中毒・多飲症患者へのケアの展開 取り締まりから患者参加のケアへ.精神看護出版,2010,30-56.

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