摂食障害|一般病棟でもよく出会う精神疾患・症状の基礎と対応のヒント

『エキスパートナース』2014年10月号<精神症状への対応>より抜粋。
一般病棟でもよく出会う精神疾患のひとつ、摂食障害について、基礎知識と現れやすい症状への対応をまとめました。
治療の場での精神症状へのかかわり方』で解説した基本的なかかわり方を、実際に現場で、どのような言葉かけで生かしていけばいいのかを紹介します。

 

宮内倫也
可知記念病院精神科

 

〈目次〉

 

摂食障害の基礎知識

社会生活の中で自分のやり方が通用しなくなり、谷底に突き落とされた感覚にさらされ、そのときにしがみつくのが“やせること”になる人たちがいます。食べなければ体重は減りますし、それは数字で明確に出ます。

 

すなわち、自分のやり方が通用するのが、体重を減らすことになります。しかし、コントロールできるはずの体重にいつの間にか縛られてしまい、摂食障害に陥っていくのです。

 

これは「神経性やせ症」と「神経性過食症」が二大巨頭。臨床で特に頭を悩ませるのは前者で、太ることへの恐怖からどんどんやせ、骨と皮だけになっても自分の身体がやせているとは確信をもって認識できなくなります(表面上は「やせてると思う」と言うことはありますが)。

 

神経性やせ症はさらに「摂食制限型」と「過食排出型」に分かれます。自分で吐いたり、下剤や利尿剤を使って出したりするのは過食排出型になります。

摂食障害

 

摂食障害の薬剤治療の進み方

薬剤治療も難しいですが、食欲増進という副作用を利用してオランザピン(抗精神病薬の1つ)を用いることがあります。とは言え、QT延長などに注意を。

 

摂食障害の経過観察とアセスメントのポイント

診察を行って身体に触れることから始めます。触覚で、自らのやせを感じてもらいましょう。

 

患者さんは食べたものを無理に吐くことがあるため、吐きダコ(手を口に突っ込んで吐くため、の当たる手の甲に“タコ”ができる)や食後にトイレに行く(隠れて吐く)、耳下腺の腫れ、う歯、採血でのアミラーゼ上昇などが見られます。そして、低栄養から浮腫になり、これを患者さんは「太っちゃった」と思うこともあります。

 

検査値も大きく乱れることが多く、明らかな意識障害でなくてもいつもより少し疎通性の悪さが見られたら、血糖値を含めて早めの採血を。また、血液検査ではPやMgやビタミンB1(欠乏はウェルニッケ症候群になります)はルーチンで測ることが少ないため、摂食障害患者さんでは忘れないように。

 

摂食障害の対応のポイント

触覚を利用した診察で少しずつやせに気づいてもらいます。そこから「食べたい気持ちと食べたくない気持ちは何%ずつ?」と聞いてみて「90%食べたくない」とか「99%食べたくない」と返事をされても、10%でも1%でも食べたい気持ちがあるのだということを評価していきます。

 

精神疾患のなかでも治療が難しく、境界性パーソナリティ障害(BPD、『パーソナリティ障害』参照)的になることもあり、かつ身体状況も厳しいため死亡率も高いです。入院中は精神面と身体面の両方において、チーム内でカンファレンスをしっかり開きましょう。

 

また、“治す”というよりも“何とか生活できるように援助する”という姿勢が大事かもしれません。

 

こんなとき、ナースに何ができる?:食事を拒否し、栄養面の管理がうまくできないとき

診察を通じて、自身の「やせ」に納得してもらうことから始める

神経性やせ症に対しては、必ず診察を行うこと。

 

脈を診る、血圧を測る、特に背中の触診をすることで、やせ具合が患者さんに触覚をもって伝わります。その際に「寝ていると痛くないかな」と声をかけたり、独り言のように「やせているね」とポツリと言ってみたりしましょう。

 

これを繰り返し患者さんが自身のやせにある程度納得してくれるなら、もうちょっと回復してほしい旨をさりげなく伝えます。

 

食事に対して「食べたい気持ちは少しあるけど、どうしても食べられない」と言ってくれる患者さんには、「食べたいあなたと、食べたくないあなたの両方の気持ちがあるんですね」と、2つの気持ちがせめぎ合っている状況であるとお話しします。

 

それでも体重が落ちていって厳しいなぁ……というときは、行動制限せざるを得ません。食事ができてきて体重が増える程度に応じて制限を徐々に解除していく方法をとります。患者さんにあらかじめ治療目標と構造を説明し、また懲罰的にならないように最大限の配慮をします。大阪市立大学のプログラムを挙げてみます(表11

 

表1行動療法プログラムの例(大阪市立大学)

行動療法プログラムの例

 

  • 治療による目標体重は90%SBW、理想体重は100%SBWとする。
  • 1週間完食が続いたら、次の1週間は第1段階では150~200kcal/日を、第2段階では200kcal/日をそれぞれ上げる。
  • 体重測定は各段階で1週間に1回とする。
  • 患者さんは測定の際に重りを身につけたり水を大量に飲んだりしてそのときだけ増やそうとすることがある。
  • 体重増加のペースは第1段階で注意が必要で、この時期は0.5~1kg/週を目標とする。
  • これらは施設によって多少の差がある。

 

ひどいやせで経管栄養を行う際はリフィーディングシンドロームに注意

電解質のバランスが崩れたりやせがひどかったりするときは、やはり生命が最優先です。経管栄養など強制的な方法に頼ることも多く、そのときは「食事ができないため命が危ない。医療者としてあなたを死なせるわけにいかない」ときっぱりと話します。

 

ひどいやせのときに栄養を始めるとリフィーディングシンドローム(refeeding syndrome)という代謝合併症になる可能性があるため、投与するカロリーを少なくすることと、体重増加のペースを速めすぎないことが大事。検査値では血清K、Mg、特にPの値に注意します(表2)。

 

表2摂食障害で特に気をつける電解質

摂食障害で特に気をつける電解質

 

  • 要注意の値は参考であり、その値になるまで何もせず待っていては遅いです。
  • 検査値は時系列と推移の速さで見ることが大事です。同じ値でも、低下してきている過程なのか上昇してきている過程なのか、また、値の変化が速いのか遅いのか、それによって医療者のとる対応は異なります。
  • 例えばPが2.5mg/dLで基準範囲内だとしても「4.0→3.2→2.5」と急に減少しているなかでの値であれば、何らかの手を打たないとさらに低下するだろうと予想しましょう。

 

ここが大切!

  • 患者さんが自身の「やせ」に納得してくれたら、さりげなく回復してほしい旨を伝えます。
  • 経管栄養等を用いるときはリフィーディングシンドロームにも注意して。

 

(illustration:江田 ななえ)

 


[引用・参考文献]

 

  • (1)切池信夫:摂食障害,第2版.医学書院,東京,2009.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2014照林社

 

P.83~「治療の場での精神症状へのかかわり方」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2014年10月号/ 照林社

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