パーキンソン病の関連図【見本付き】看護・観察項目・看護計画まで|病態関連図がスルスル書ける!

パーキンソン病の病態・症状・看護・観察項目を整理しながら、関連図の書き方や患者さんの個別性を出すポイントをわかりやすく解説します。
著者:野田梨央
(看護師・ライター、Medi+プロダクション)
もくじ

1)運動症状と非運動症状を確認!
・関連図には、患者さんの症状を必ず記載するよ
・パーキンソン病の場合は「運動症状」「非運動症状」に分けて確認!
(1)運動症状
運動症状は、体を動かす機能に関わる症状です。
代表的な以下4つの症状の有無を確認しましょう。
| 運動症状の例 | 特徴 |
|---|---|
| ①静止時振戦 | 安静にしているときに手足がふるえる |
| ②無動・寡動(動作緩慢) | 動き始めに時間がかかる、動作が遅くなる |
| ③筋強剛(筋固縮) | 筋肉がこわばり、関節を動かしにくくなる |
| ④姿勢反射異常 | バランスを崩したときに姿勢を立て直しにくくなる |
(2)非運動症状
非運動症状の有無も確認しましょう。
| 非運動症状の例 | おもな症状 |
|---|---|
| 自律神経症状 | 便秘、起立性低血圧、頻尿など |
| 認知・精神症状 | 認知機能障害、うつ、幻覚など |
| 睡眠障害 | 不眠、日中の眠気など |
| その他 | 嗅覚障害、痛み、疲労など |
▶詳しくは「3.パーキンソン病の症状」の項目で確認!
2)Hoehn-Yahr(ヘーン・ヤール)の重症度分類を確認!
医師のカルテや看護記録から、Hoehn-Yahr(ヘーン・ヤール)重症度分類を確認しましょう。
まずは、患者さんの重症度を把握しておくことが大切です。
| 重症度 | おもな状態 |
|---|---|
| 0度 | パーキンソニズムなし |
| Ⅰ度 | 症状が身体の片側にみられる |
| Ⅱ度 | 症状が体の両側にみられる |
| Ⅲ度 | 姿勢反射異常がみられるが、日常生活に介助は必要ない |
| Ⅳ度 | 高度な障害はみられるが、介助なしでどうにか歩行できる |
| Ⅴ度 | 介助がなければ、ベッドまたは車椅子での生活となる |
※難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)重症度分類を参考に編集部作成

1)パーキンソン病の病態と原因

Point
・パーキンソン病は「病態」と「原因」を分けて考えよう!
・【病態】パーキンソン病は「ドパミン不足」によって起こるとされている
・【原因】は、まだ明らかになっていないよ
パーキンソン病のはっきりとした原因は、現在のところ明らかになっていません。
ただし、発症には遺伝要因・環境要因・加齢など、複数の要因が関係していると考えられています。
【関連図に使える流れ!】
パーキンソン病の病態
【運動症状につながる流れ】
黒質のドパミン神経細胞が変性・減少
⬇
ドパミン不足
⬇
運動調整がうまくできなくなる
⬇
運動症状が現れる
(1)遺伝要因
パーキンソン病の発症に関連する複数の遺伝子がみつかっています。
(ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではありません)
(2)環境要因
農薬など、特定の物質への曝露とパーキンソン病発症との関連が研究されています。
(しかし、発症の原因をひとつに特定することはできません)
(3)加齢
パーキンソン病は高齢になるほど発症しやすいため、加齢も発症に関わる要因のひとつだと考えられています。
2)ドパミン神経細胞の減少から「運動症状」が現れるまで
ドパミンが送られる大脳基底核は、体を動かす指令を出しています。
ドパミン神経細胞の変性により、「ドパミンが不足」することで、指令がうまく働かなくなり、運動の調整がしにくくなります。

また、パーキンソン病では、ドパミン神経細胞以外の神経細胞にも変性が広がります。
そのため、便秘や睡眠障害といった「非運動症状」も現れます。
なお、変性した神経細胞には、「レビー小体」という特徴的なかたまりがみられます。
レビー小体の主な成分は「α-シヌクレイン」というタンパク質です。
その異常な蓄積が、神経細胞の変性に関係していると考えられています。
3)【ここまでのまとめ】関連図に使える病態の流れ
【関連図に使える流れ!】
【運動症状につながる流れ】
黒質でα-シヌクレインの異常蓄積
⬇
レビー小体形成
⬇
ドパミン神経細胞の変性・減少
⬇
ドパミン不足
⬇
大脳基底核による運動調整の障害
⬇
運動症状
【非運動症状につながる流れ】
レビー小体形成が黒質以外に拡大
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さまざまな神経細胞の変性
⬇
非運動症状

1)運動症状(パーキンソン病の四主徴)
パーキンソン病の代表的な運動症状は「パーキンソン病の四主徴」と呼ばれるよ!
- 1静止時振戦
- 2無動・寡動(動作緩慢)
- 3筋強剛(筋固縮)
- 4姿勢反射異常

※ 井手隆文,原貴行,寺尾安生 著:第5章 疾患の理解―G-2 脳・神経の変性疾患,1.パーキンソン病. 井手隆文 著者代表:系統看護学講座 専門分野 成人看護学[7]脳・神経,第16版,医学書院,2025:p.212を参考に編集部作成
(1)静止時振戦
体の力を抜いてじっとしているときにみられるふるえです。
手や足にみられることが多く、一般的に1秒間に4~6回程度の規則的なふるえがみられます。
動作を始めると、ふるえが弱くなったり止まったりすることがあります。
(2)無動・寡動(動作緩慢)
自発的な動きが少なくなったり、動作が遅くなったりする症状です。
動き始めるまでに時間がかかる、歩幅が小さくなる、着替えや食事などの動作に時間がかかるといった動作緩慢がみられ、ADL(日常生活動作)にも影響します。
(3)筋強剛(筋固縮)
筋肉がこわばり、関節がスムーズに動かしにくくなる症状です。
他者が腕や足の関節を動かしたときにも抵抗を感じることが特徴です。
(4)姿勢反射異常
体のバランスが崩れたときに、姿勢を立て直すことが難しくなる症状です。
とっさに足を出すなどの立て直しがうまくできず、転倒につながることがあります。
病気がある程度進行してからみられることが多い症状です。
2)非運動症状
(1)自律神経症状
- 便秘
- 頻尿
- 起立性低血圧
- 発汗異常 など
自律神経の働きが障害されることで、上記のような症状が現れます。
なかでも便秘は高頻度でみられます。
起立性低血圧では、立ち上がった時に血圧が低下して、めまいやふらつきが生じることがあります。
(2)認知・精神症状
- 認知機能の低下
- 抑うつ
- 不安
- 幻覚
- 妄想 など
病気の進行に伴って、上記のような症状がみられることがあります。
これらには、パーキンソン病そのものによる変化だけでなく、心理的な要素や治療薬など、さまざまな要因が関係している場合があります。
(3)睡眠障害
- 不眠
- 日中の眠気
- レム睡眠行動障害 など
上記のような睡眠に関する症状がみられることがあります。
レム睡眠行動障害では、睡眠中に大声を出したり、夢の内容に合わせるように手足を動かしたりすることがあります。
(4)その他の症状
- 嗅覚障害
- 痛み
- 疲労感 など
一見すると、パーキンソン病とは関係がないように思える症状でも、非運動症状として現れている場合があります。
【関連図に活かす例】
【運動症状】身体を思うように動かせない
⬇
これまでできていた活動が難しくなる
⬇
心理的負担
⬇
【非運動症状】不安・抑うつ
3)薬物療法による運動合併症
パーキンソン病の治療に用いられる、レボドパ製剤(▶詳しくは「4.パーキンソン病の治療」を参照)を長期間服用していると、薬の効果が持続する時間が短くなることがあります。
また、自分の意思とは関係なく体が動いたりする「運動合併症」がみられることがあります。
【代表的な運動合併症】
- 1ウェアリング・オフ
- 2ジスキネジア

(1)ウェアリング・オフ
次の服薬時間になる前に薬の効果が切れ、症状が現れたり、強くなったりする現象。
- 薬が効いて症状が改善している状態を「ON」
- 薬の効果が弱くなり症状が現れている状態を「OFF」という
- OFFの状態では、動作緩慢や振戦、すくみ足などが強くなることがある
(2)ジスキネジア
自分の意思とは関係なく、体が勝手に動いてしまう不随意運動。
- 手足や体幹、口などに不随意運動がみられる
- レボドパの効果が強く現れている時間帯などに起こることがある
- 症状が強い場合には、ADL(日常生活動作)にも影響

パーキンソン病の治療は、薬物療法を中心に、患者さんの症状や生活状況に合わせて、外科的治療やリハビリテーションを組み合わせて行います。
・パーキンソン病そのものを治す治療は、現時点ではない
・症状をコントロールしながら、できるだけ長く日常生活を維持することが治療の大きな目的
1)薬物療法
【代表例】
- レボドパ(L-dopa)製剤
- ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体作動薬)
パーキンソン病の治療では、脳内で不足しているドパミンの働きを補うために、さまざまな薬が使用されています。
(1)レボドパ(L-dopa)製剤
レボドパは脳内でドパミンに変化し、無動(寡動)や筋強剛(筋固縮)などの運動症状を改善する働きがあります。
(2)ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体作動薬)
また、ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体作動薬)は、ドパミン受容体(鍵穴)にはまり込み、ドパミンの代わりとなって働く薬です。
患者さんの年齢や症状などに合わせて、薬剤が選択・併用されます。
2)外科的治療
【代表例】
- 脳深部刺激療法(DBS)
薬物療法を行っても症状を十分にコントロールできない場合などに、脳深部刺激療法(DBS)などの外科的治療が検討されることがあります。
脳深部刺激療法では、脳の特定の部位に電極を留置して電気刺激を与え、運動症状の改善を目指します。
3)リハビリテーション
- 歩行訓練
- バランス訓練
- 嚥下訓練
- 発声訓練 など
パーキンソン病では、薬物療法とあわせてリハビリテーションの継続も重要です。
歩行訓練やバランス訓練などによって、身体機能やADL(日常生活動作)の維持を目指します。
嚥下障害や発声の問題がある場合には、嚥下訓練や発声訓練などが行われます。
患者さんの状況に合わせて、PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)など、他職種で支援します。

1)【運動症状】歩行・動作への影響を確認
まずは、運動症状の有無を確認します。
症状がみられる場合には、その程度や、歩行・更衣・食事・排泄などのADL(日常生活動作)にどのような影響があるのかも確認します。
| 観察項目 | 観察のポイント |
|---|---|
| 静止時振戦 | ・静止時(安静時)に手足のふるえがあるか ・左右どちらにみられるか ・食事や更衣などの動作に影響していないか |
| 無動・寡動(動作緩慢) | ・動き始めるまでに時間がかかっていないか ・歩行や更衣、食事などの動作に時間がかかっていないか |
| 筋強剛(筋固縮) | ・体や手足にこわばりがないか ・関節の動かしにくさがないか ・更衣や起き上がりなどの動作に影響していないか |
| 歩行状態 | ・歩幅が小さくなっていないか ・すくみ足がないか ・歩き始めや方向転換時の様子 ・杖や歩行器などの補助具、介助の有無 |
| 姿勢・バランス | ・前かがみの姿勢になっていないか ・ふらつきがないか ・立位や方向転換時にバランスを崩していないか ・転倒歴がないか |
【関連図に使える流れ!】
動作緩慢・筋強剛
⬇
動作に時間がかかる
⬇
更衣・食事などが一人で行いにくくなる
⬇
ADL(日常活動動作)の低下
「動作緩慢あり」で終わらせず、その症状によって患者さんの生活の何が難しくなっているのかまで確認できると◎!
2)【非運動症状】生活への影響を確認
非運動症状には、患者さんへの聞き取りでわかるものもあります。
観察だけでなく、患者さんへの質問や、看護記録からも情報を集めることが大切です。
| 観察項目 | 観察・質問のポイント |
|---|---|
| 排便 | ・排便回数や最終排便日 ・便の性状 ・腹部膨満感の有無 ・下剤使用の有無 |
| 血圧・ふらつき | ・起立時のめまいやふらつきがないか ・立ち上がったときの血圧の変化 ・ふらつきによる転倒の危険がないか |
| 排尿 | ・排尿回数 ・頻尿や夜間頻尿の有無 ・排尿が生活や睡眠に影響していないか |
| 認知・精神面 | ・認知機能の変化 ・不安や抑うつの有無 ・幻覚や妄想の有無 ・表情や会話、意欲の変化 |
| 睡眠 | ・入眠や中途覚醒の状態 ・日中の眠気 ・睡眠中の大声や手足を動かす様子がないか |
| その他 | ・嗅覚の変化 ・痛み ・疲労感など |
・非運動症状は、患者さんから聞かないとわからないものもあるよ。
・「眠れていますか?」「便はいつ出ましたか?」「立ち上がったときにふらつきませんか?」など、具体的に聞けるとスゴイ!
3)服薬時間と症状の変化をセットで確認
【ポイント】
- パーキンソン病は、1日の中でも、動きやすさなどの症状が変化することがあるよ
- 服薬した時間と症状が現れた時間をセットで確認しよう
- 「歩ける・歩けない」だけじゃなく、「いつなら歩きやすい?」「薬を飲んでからどう変わった?」まで確認できると◎!
| 観察項目 | 観察のポイント |
|---|---|
| 服薬状況 | ・薬の種類 ・服薬時間 ・服薬できているか |
| 服薬前後の症状 | ・服薬前後で動作緩慢や振戦などがどう変化するか ・歩行状態に変化があるか |
| ON・OFFの状態 | ・薬が効いて症状が改善している状態(ON) ・薬の効果が弱くなり症状が現れている状態(OFF) ・それぞれの状態になる時間帯 |
| 運動合併症 | ・ウェアリング・オフがないか ・ジスキネジアやジストニア(※)がないか ・症状が現れる時間帯 |
| ADLへの影響 | ・服薬前後で歩行・食事・更衣・排泄などがどう変化するか ・介助量に変化があるか |
※ジストニア:筋肉が持続的に収縮し、足指が曲がる・ねじれるなどの不自然な姿勢や痛みがでる状態
【関連図に使える流れ!】
レボドパ製剤を長期間使用
⬇
薬の効果が持続する時間が短くなる
⬇
次回服薬前にOFFの状態になる
⬇
動作緩慢・すくみ足などが強くなる
⬇
歩行が不安定になる
4)転倒・誤嚥につながるサインを確認
パーキンソン病では、運動症状や嚥下機能の低下などによって、転倒や誤嚥につながることがあります。
転倒や誤嚥につながるサインがないか、これまでの転倒歴や食事中の様子なども確認しましょう。
| 観察項目 | 観察のポイント |
|---|---|
| 転倒・転落 | ・転倒の有無、回数、状況 ・すくみ足やふらつきの有無 ・歩き始めや方向転換時の状態 ・移動時の介助や補助具の有無 |
| 嚥下状態 | ・食事中のむせや咳の有無 ・食事にかかる時間 ・食後の声の変化(※) ・食事摂取量 |
| 口腔・唾液 | ・流涎の有無 ・口腔内に食物が残っていないか ・口腔内の清潔状態 |
| 呼吸状態・全身状態 | ・発熱の有無 ・呼吸状態の変化 ・SpO₂などの変化 |
※飲み込む力が落ちて咽頭に食べカス(食物残渣)や唾液がたまると、食後にガラガラ声となります。むせていなくても誤嚥直前だったり、すでに誤嚥していたりすることのサインです。
【関連図に使える流れ!】
姿勢反射異常・すくみ足
⬇
歩行時にふらつきがある
⬇
(過去に転倒歴がある)
⬇
転倒・転落リスク
または、
嚥下機能の低下
⬇
食事中のむせ
⬇
誤嚥
⬇
誤嚥性肺炎のリスク
転倒や誤嚥につながるサインがみられたら、「なぜそのリスクが高くなっているのか」まで確認できるとスゴイ!

【STEP①】Hoehn-Yahr重症度と現在の状況を照らし合わせる
まずは、患者さんのHoehn-Yahr(ヘーン・ヤール)重症度分類を確認し、現在の症状やADL(日常生活動作)と照らし合わせましょう。
▶詳しくは「Hoehn-Yahr(ヘーン・ヤール)の重症度分類を確認!」を参照
Hoehn-Yahr重症度分類に加えて、実際の歩行状態やADLを確認することが大切です。
たとえばHoehn-YahrⅢ度は、姿勢反射異常がみられるものの、分類上は日常生活に介助を必要としない状態です。
しかし、実際には患者さんによって、すくみ足や動作緩慢、筋強剛など、みられる症状やその程度は異なります。
「Hoehn-Yahr Ⅲ度だから〇〇」と決めつけず、患者さんの様子から「実際に何が起きているのか(症状など)」を確認できると◎
【STEP②】症状がADLにどう影響しているか考える
次に、患者さんにみられる症状が、歩行・食事・更衣・排泄などのADL(日常生活動作)にどのような影響を与えているのかを考えます。
「動作緩慢がある」「すくみ足がある」といった症状だけでなく、
「症状 → できなくなっていること・難しくなっていること」までつなげよう!
(1)動作緩慢によって更衣に時間がかかっている
動作緩慢
⬇
手足を動かすのに時間がかかる
⬇
ボタンを留める・衣服を着脱する動作に時間がかかる
⬇
更衣動作への影響
【アセスメント例文】
- 「動作緩慢によりボタンを留める動作に時間を要している。一方で、時間をかければ上衣の更衣は自分で行えているため、現在保たれている能力を活かしながら必要な部分を援助する必要がある」
(2)姿勢反射異常・すくみ足によって転倒の危険が高くなっている
姿勢反射異常・すくみ足
⬇
歩き始めや方向転換時にバランスを崩しやすい
⬇
歩行が不安定になる
⬇
転倒リスクの上昇
【アセスメント例文】
- 「すくみ足と姿勢反射異常がみられ、歩き始めや方向転換時にふらつきがある。過去に転倒歴もあることから、転倒リスクが高いと考えられる」
(3)嚥下機能の低下によって食事中にむせている
嚥下機能の低下
⬇
食物を安全に飲み込みにくくなる
⬇
食事中のむせ
⬇
誤嚥・誤嚥性肺炎のリスク
【アセスメント例文】
- 「食事中にむせがみられており、嚥下機能が低下している可能性がある。誤嚥につながる危険があるため、食事中のむせや咳、食事摂取状況などを継続して観察する必要がある」
【STEP③】服薬時間と症状・ADLの変化を関連づける
パーキンソン病では、薬の効き方によって同じ患者さんでも時間帯によって症状やADL(日常生活動作)が変化することがあります。
そのため、一時点の状態だけで判断せず、服薬時間・症状が現れる時間・ADLに変化をセットでアセスメントしましょう。
たとえば、以下の経過がみられた場合、薬の効果が弱くなる時間帯と症状の変化が関連している可能性があります。
7時 レボドパ製剤を服用
⬇
8時 歩行がスムーズになる
⬇
11時 すくみ足・動作緩慢が強くなる
⬇
次回服薬前に症状が増強している
【アセスメント例文】
- 「レボドパ製剤の服用後は歩行がスムーズであるが、次回服薬前になると動作緩慢やすくみ足が強くなっている。薬の効果が弱くなる時間帯に症状が増強しており、歩行状態にも影響していると考えられる」
さらに、以下のようにつなげると患者さんの1日の状態を関連図に反映しやすくなります。
服薬時間
⬇
ON・OFFの状態
⬇
症状の変化
⬇
歩行・更衣・食事などのADLへの影響
「歩ける」「歩けない」という一時点の情報だけで判断せず、「いつ・どんな症状が出て・何ができなくなるのか」までつなげて考えよう!

看護問題の優先順位は、マズローの欲求段階をベースに考えるとわかりやすいです。
1)【パーキンソン病の場合】看護問題の優先順位
- 1生命・安全に関わる問題(誤嚥・誤嚥性肺炎や転倒・転落など)
- 2苦痛・安全に関わる問題(歩行・更衣・食事・排泄など)
- 3今後の生活・退院後に関わる問題(服薬管理・セルフモニタリング・退院後の生活・患者さんやご家族の不安など)
2)【パーキンソン病の場合の例】看護問題リスト
| 看護問題 | 具体的なサイン・症状 |
|---|---|
| 転倒・転落リスク | 姿勢反射異常、すくみ足、小刻み歩行、ふらつき、転倒歴など |
| 誤嚥・誤嚥性肺炎のリスク | 食事中のむせ・咳、嚥下機能の低下、口腔内残留など |
| ADLの低下 | 動作緩慢、筋強剛、すくみ足などによって、更衣・食事・移動・排泄などに時間や介助を要する |
| 便秘 | 排便回数の減少、腹部膨満感、自律神経障害、活動量の低下など |
| 服薬管理・症状の自己管理に関する問題 | 服薬時間のずれ、ON・OFFによる症状の変化を把握できていないなど |
| 不安 | 病状の進行や身体機能の変化、退院後の生活などに対する不安 |

1)生命・安全に関わる問題への看護ケア(最優先)
(1)転倒・転落の予防
【ケア】
- すくみ足、小刻み歩行、前傾姿勢、ふらつきなどを観察。
- 特に、歩き始めや方向転換時の状態、服薬時間による歩行状態の変化を確認。
- ベッド周囲や歩行経路を整え、患者さんの歩行状態に合わせて、必要な見守りや介助を行う。
- 「歩ける・歩けない」だけではなく、どのような場面や時間帯に転倒リスクが高くなるのかを確認することが大切。
【根拠】
- パーキンソン病では、姿勢反射異常やすくみ足などによって、転倒しやすくなることがある。
- 薬の効果が弱くなる時間帯に運動症状が強くなる患者さんでは、時間帯によって転倒リスクが変化する可能性もある。
(2)誤嚥・誤嚥性肺炎の予防
【ケア】
- 食事中・食後のむせや咳、食事にかかる時間、摂取量、口腔内残留などを観察。
- 患者さんの嚥下機能に合わせて、安全に食事ができる姿勢を整える。
- 嚥下機能の低下がみられる場合には、看護師やST(言語聴覚士)などと情報共有しながら、ケアを行う。
【根拠】
- パーキンソン病では嚥下機能が低下し、誤嚥や誤嚥性肺炎につながることがある
- むせなどのサインを観察し、嚥下状態に合わせて援助することが、安全な経口摂取につながる。
2)苦痛・日常生活に関わる問題への看護
(1)ADLを維持するための援助
【ケア】
- 食事・更衣・排泄・入浴・移動などについて、患者さんが自分でできる部分と援助が必要な部分を確認。
- 自分でできる動作は見守り、難しい部分を援助する。
- 動作に時間がかかる場合には、患者さんのペースを尊重し、急かさずに待つ。
【根拠】
- 動作緩慢や筋強剛などによってADL(日常生活動作)に影響が生じていても、すべての動作に同じ程度の援助が必要とは限らない。
- 現在できている動作を確認したうえで、必要な部分を援助することが、患者さんの自立を支えることにつながる。
(2)薬効変動に合わせた日常生活援助
【ケア】
- 服薬前後で、歩行・更衣・排泄などの動きやすさがどのように変化するかを観察。
- 薬が効いて動きやすい時間帯と、症状が強くなる時間帯を把握し、患者さんの状態に合わせて日常生活を援助する。
【根拠】
- 薬効変動がある患者さんでは、時間帯によって運動症状やADL(日常生活動作)が変化する。
- 服薬時間と生活動作の変化を関連づけることで、その患者さんがより安全に、自分の力を活かして行動できるタイミングを考えやすくなる。
(3)便秘・排泄への援助
【ケア】
- 排便回数、便の性状、腹部症状、水分・食事摂取量、活動量などを確認。
- 排泄動作に時間がかかる患者さんでは、急かさず十分な時間を確保する。
- トイレまでの移動や衣服の着脱など、排泄に必要な一連の動作のどこに援助が必要なのかも確認。
【根拠】
- パーキンソン病では、自律神経障害や活動量の低下などが、便秘につながることがある。
- 動作緩慢や筋強剛などによって、トイレへの移動や衣服の着脱といった排泄動作そのものが難しくなる場合もある。
- 排便状態だけでなく、排泄動作全体をみることが大切。
3)今後の生活・退院後に関わる問題への看護
(1)服薬管理と症状のセルフモニタリング
【ケア】
- 患者さんが薬を決められた時間に服用できるか確認。
- 服薬時間と症状の変化を患者さん自身も把握できるように支援する。
- 「薬を飲んだ時間」「動きやすかった時間」「すくみ足や振戦などが強くなった時間」などを一緒に振り返る。
【根拠】
- パーキンソン病では、薬の効き方によって症状やADL(日常生活動作)が変化することがある。
- 患者さん自身が服薬と症状の変化を把握することは、退院後も症状と付き合いながら生活していくうえで大切。
4)家族・社会的背景を踏まえた支援
【ケア】
退院後の生活をイメージしながら、
- 誰と暮らしているか
- 家族からどのような支援を受けられるか
- 自宅内に段差や階段があるか
- 退院後に利用するサービスはあるか
- 仕事や家庭でどのような役割があるか
などを確認。
家族にも、患者さんの現在の状態や退院後の生活についてどのように考えているか確認する。
【根拠】
- 生活環境や家族から受けられる支援によって、退院後に必要となる援助は人それぞれ。
- 患者さん本人だけでなく、家族や生活環境まで含めて考えることで、退院後の生活に合わせた支援につなげられる。
5)心理・精神面への支援
【ケア】
病状の進行や身体機能の変化について、患者さんがどのように感じているのか話を聞きます。
また、
- 退院したら何をしたいですか?
- 今までどんなことを大切にして生活していましたか?
- できるようになりたいことはありますか?
など、患者さんが今後も続けたいことや大切にしている生活についても確認しましょう。
不安や困りごとがある場合には、患者さんの思いを受け止め、必要に応じて看護師や多職種と共有します。
【根拠】
- パーキンソン病は進行性であり、症状やADL(日常生活動作)の変化によって、患者さんが不安や喪失感を抱くことがある。
- 「何をしたいのか」「何を大切にしているのか」を知ることは、その患者さんに合った目標や援助を考える手がかりになる。

1)普段の生活・大切にしている活動
【個別性を引き出せる質問例】
・普段はどのように過ごしていますか?
・日課にしていることや、楽しみにしていることはありますか?
・今までできていたのに、するのが難しくなったことはありますか?
【質問のポイント】
- 症状が現れる前の活動量や生活範囲
- 歩行・更衣・食事・排泄など、難しくなった動作
- 散歩や買い物、趣味など本人が大切にしている活動
- 「できるだけ自分でやりたい」など、本人の希望
【関連図に活かす例】
すくみ足・姿勢反射異常
⬇
転倒への不安
⬇
外出が減る
⬇
活動量低下
上記のように、症状から実際の生活への影響までつなげます。
一方で、「もう一度散歩したい」などの希望があれば、心理・社会面の情報として関連図に加えましょう。
2)服薬と生活リズム
【個別性を引き出せる質問例】
・薬は何時ごろ飲んでいますか?
・薬が切れてくると、どんな動作が難しくなりますか?
・薬を飲んだあとは動きやすくなりますか?
【質問のポイント】
- 服薬時間と生活リズム
- 薬が効いている時間・効きにくい時間
- 時間帯による歩行やADL(日常生活動作)の変化
- 飲み忘れの有無や服薬管理の方法
【関連図に活かす例】
レボドパ製剤の長期使用
⬇
ウェアリング・オフ
⬇
薬効低下時にすくみ足が増強
⬇
歩行困難
⬇
転倒リスク
上記のように、服薬状況と症状・ADL(日常生活動作)をつなげます。
3)食事・排泄などの生活習慣
【個別性を引き出せる質問例】
・食事中にむせることはありますか?
・食事にはどのくらい時間がかかりますか?
・便は何日に1回くらい出ていますか?
【質問のポイント】
- 食事形態や食事にかかる時間
- むせや飲み込みにくさ
- 食事・水分摂取量
- 排便回数や便の性状
- 排泄動作に必要な介助
【関連図に活かす例】
たとえば嚥下機能が低下していれば、
嚥下機能低下
⬇
食事中のむせ
⬇
誤嚥リスク
便秘がみられる場合には、
自律神経障害+活動量低下
⬇
腸蠕動低下
⬇
便秘
上記のように、患者さんに実際に起きている症状と生活状況をつなげましょう。
4)家族・住環境
【個別性を引き出せる質問例】
・ご自宅では誰と暮らしていますか?
・普段、手伝ってもらっていることはありますか?
・家の中に段差や階段はありますか?
【質問のポイント】
- 同居家族やキーパーソン
- 家族が援助している内容
- 家族の介護負担
- 自宅の段差・階段・手すりなどの住環境
- 退院後に利用予定のサービス
【関連図に活かす例】
パーキンソン病では、病状の進行によって必要な援助が変化します。
下記のように、身体症状だけでなく家族への影響までつなげて考えましょう。
歩行障害
⬇
移動に介助が必要
⬇
家族の介護量増加
また、転倒リスクが高い患者さんでは、段差や階段などの住環境も退院後の安全を考える重要な情報になります。
5)心理・精神面
【個別性を引き出せる質問例】
・病気になってから困っていることはありますか?
・できるようになりたいことはありますか?
・退院後の生活で心配なことはありますか?
【質問のポイント】
パーキンソン病では、症状の進行によって今までできていたことが難しくなり、不安や喪失感につながることがあります。
一方で、「自分で歩きたい」「家で暮らしたい」など、患者さん自身が持っている希望や目標も大切な情報です。
【関連図に活かす例】
転倒経験
⬇
「また転ぶのが怖い」
⬇
歩行への不安
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活動量低下
のように心理面と身体・生活面をつなげたり、
「自分で歩きたい」
⬇
リハビリへの意欲
のように、患者さんの強みや希望も書き加えたりすると、その人らしい関連図になります。

(1)事例概要
・A氏: 76歳・男性 身長168cm、体重59kg。BMI20.9
・診断名: パーキンソン病
・Hoehn-Yahr(ヘーン・ヤール)重症度分類: Ⅲ度
・既往歴: 高血圧
・職業: 無職(元工務店勤務)。退職後も体を動かすのが好きで毎日の散歩を日課としていた。
・家族・キーパーソン: 妻(70歳)と二人暮らし。長女夫婦は他県に在住。キーパーソンは妻。
(2)現病歴・入院時
- 現病歴:8年前にパーキンソン病と診断され、レボドパを服用しながら自宅で生活していた。
ここ数カ月は、すくみ足や歩行時のふらつきが目立つようになり、自宅で2回転倒している。
最近では、薬の効果が弱くなる時間帯に動きにくさが強くなり、食事中のむせも増えていた。
自宅で転倒した際に右大腿骨頸部を骨折し、手術後のリハビリテーション目的で入院となった。
- 入院前の生活:妻と二人で生活し、身の回りのことはおおむね自立していた。
- 入院時バイタル:体温36.4℃、血圧108/68mmHg、脈拍64回/分、SpO2(動脈血酸素飽和度)98%(室内気)
- 検査値、評価:頭部MRIで明らかな異常なし、DATスキャンで線条体への集積低下、嚥下評価で軽度嚥下障害
- その他:便秘による腹部膨満感で食事量が低下している
(3)ADL(日常生活動作)
- 歩行:小刻み歩行前傾姿勢、すくみ足あり。
歩行器を使用し、付き添い歩行。
レボドパ服用前はすくみ足が強くなり、歩行開始に介助を要する。
- 排泄:トイレまでの移動は歩行器を使用。
排泄動作はおおむね自立しているが、着座・立ち上がり時に見守りを要する。
ズボンの上げ下ろしには、一部介助を要する。便秘あり。
- 食事:自立しているが、動作緩慢のため時間を要する。食事中にむせあり。
- 更衣:上衣は自立しているが、ボタン掛けに時間を要する。ズボンの着脱は介助を要する。
(4)患者の様子・価値観
「散歩が毎日の楽しみだった。もう一度、自分で歩いて散歩したい」
「また転んでしまうと思うと怖い」
「妻に迷惑をかけたくない。自分のことは自分でしたい」
「リハビリをがんばりたい」
<おわりに>
関連図は最初こそ難しく感じますが、病態から症状、生活への影響を一つずつつなげていけば大丈夫!
集めた情報を少しずつ整理しながら、その患者さんらしい関連図を作ってみてくださいね。
参考文献
1)日本神経学会 監,パーキンソン病診療ガイドライン作成委員会 編:パーキンソン病診療ガイドライン2018,医学書院,2018:p2-p11,p25-p33,p77-p87(2026年8月10日アクセス)
2)難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)(2026年8月10日アクセス)
3)神経変性疾患領域の基盤的調査研究班:パーキンソン病の療養の手引き (2016年追補版) ,2023(2026年8月10日アクセス)
4)看護roo!:パーキンソン病,2021(2026年8月10日アクセス)
5)医療情報化学研究所 編:病気がみえる vol.7 脳・神経 第2版. メディックメディア,2017:p.340-353
6)村田美穂 監:スーパー図解 パーキンソン病 第1版.法研,2014:p34-44,p92-102
7)柏原健一 監:パーキンソン病のことがよくわかる本 第1版.講談社,2015:p9-56
8)石川ふみよ,高谷真由美 監:疾患別看護過程の展開 第6版,学研メディカル秀潤社,2020:p605-618
関連図PDF作成:尾形美紀(看護師・デザイナー、Medi+プロダクション)
イラスト:上林陽子
編集:坂本綾子(看護roo! 編集部)
デザイン:伊神理咲
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