【ヘンダーソンの看護理論】14項目の基本的ニードとは?知っておきたい要点と収集項目
「ヘンダーソンの看護理論がよくわからない」という学生さんは少なくないでしょう。
本記事では、ヘンダーソンの看護理論のポイントと14項目の基本的ニードをわかりやすく整理しました。アセスメントに直結する要点をつかんで、実習記録に役立ててください。
ヘンダーソンの看護理論を用いたアセスメントについて、具体的な書き方や例文を知りたい人は次の記事で紹介しています。
監修:長島俊輔(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 講師)
執筆協力:平田友希(看護師・ライター)
目次
ヘンダーソンの看護理論「基本的ニード」とは
ヘンダーソンの基本的ニードとは、人間が生きる上で共通して持っている「欲求」のことで、アメリカの看護理論家ヴァージニア・ヘンダーソンが提唱しました。
看護師の役割を初めて明確にした理論としても知られ、ヘンダーソンは、基本的な欲求を自力で満たせない人を手助けし、その不足している部分を補い自立を促すことが「看護」だと定義しています。
基本的ニードは14項目あり、「呼吸」「食事」「睡眠」など、誰もが日常生活で行っていることを中心にした構成です。そのわかりやすさから、看護の学習に適した理論として実習現場で広く使われています。
ヘンダーソンの考え方を理解すると、患者さんの「できないこと」がなぜ起きているのかを考えられるようになり、根拠のあるアセスメントにつながります。
【一覧表】ヘンダーソンの14の基本的ニードと項目例
ヘンダーソンは基本的ニードを、以下の14項目に分類しました。
14の基本的ニードそれぞれで、どのような情報を集めればよいか確認してみましょう。
| 基本的ニード | 収集項目 |
|---|---|
| 1. 正常に呼吸をする | ・呼吸数・呼吸音・呼吸機能 ・酸素飽和度(SpO2) ・自覚症状(息切れ、咳、痰など) ・喫煙歴 |
| 2.適切に飲食する | ・食事摂取量・食事形態 ・嚥下機能 ・栄養状態(体重・BMI・TP・Albなどの血液データ) ・水分摂取量 ・食事摂取の動作やセルフケアの状況 |
| 3.あらゆる排泄経路から排泄する | ・排便・排尿の回数、性状 ・排泄方法(自立・一部介助・全介助) ・尿意・便意の有無 ・腹部症状(腹痛・腹部膨満感など) ・下剤などの使用状況 ・排泄に関するセルフケア能力 |
| 4.身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する | ・ADL(歩行・移乗・体位変換)の自立度 ・麻痺・骨折の有無 ・関節可動域、筋力、MMT ・安静度 ・労作時の呼吸状態 ・活動への意欲 |
| 5.睡眠と休息をとる | ・睡眠時間・睡眠の質 ・入眠困難、中途覚醒の有無 ・日中の眠気、疲労感 ・睡眠環境(病室の環境変化など) ・疼痛・掻痒感など睡眠を妨げる要素の有無 ・ストレスの状況 |
| 6.適切な衣類を選び、着脱する | ・衣類の選択・準備の状況 ・着脱動作の自立度 ・季節や状況に応じた衣類の調整 |
| 7.衣類の調整と環境の調整により、体温を生理的範囲内に維持する | ・体温 ・暑さ・寒さへの自覚と対応 ・寝具・衣類の調整状況 ・血液データ(WBC、CRP) |
| 8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する | ・清潔保持の状況(入浴・清拭・洗面など) ・整容の自立度・意欲 ・皮膚・爪の状態(発赤・乾燥・損傷の有無) |
| 9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を侵害しないようにする | ・転倒・転落リスク(移動能力、バランス) ・危険認識力、判断力 ・療養環境の状態(室温・湿度や騒音など) ・環境整備の状況(手すり、ベッド柵など) ・自傷・他害のリスク |
| 10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションをもつ | ・言語的コミュニケーション能力(構音障害の有無など) ・感情表出の状況 ・家族・医療者との関係性 ・聴力・視力、補聴器やメガネの有無 |
| 11.自分の信仰にしたがって礼拝する | ・信仰の有無 ・慣習的な行動 ・大切にしている価値観や考え方 ・入院生活での制約の有無(治療・食事など) |
| 12.達成感をもたらすような仕事をする | ・職業歴、現在の役割 ・達成感・やりがいの有無 ・疾患・入院による役割への影響 |
| 13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する | ・趣味・娯楽活動の内容 ・入院中の余暇の過ごし方 ・普段の休日の過ごし方 ・認知機能 |
| 14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる | ・健康に関する知識 ・疾患・治療への理解度 ・学習意欲 ・リハビリ・生活指導への取り組み姿勢 |
【ヘンダーソンの看護理論】看護過程はここがポイント!
ヘンダーソンの看護理論を用いた看護過程は、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 1人間の基本的ニードは14項目
- 2患者さんの「常在条件」と「病理的状態」を理解する
- 3看護師は体力・意思力・知識の不足を補う
1人間の基本的ニードは14項目に分類される
ヘンダーソンは、人間が生きる上で必要な基本的ニード(欲求)を14項目に分類しました。患者さんがそれぞれのニードを、自立して自分1人で行えるよう援助することが、「基本的看護ケア」であるとしています。
基本的ニードの14項目には、呼吸や食事、睡眠といった「生理的な欲求」を中心に、コミュニケーションや信仰といった「社会的な欲求」、仕事や学習といった「自己実現の欲求」などが含まれています。
ゴードンのアセスメントツールと比べて、ヘンダーソンの項目はわかりやすく、収集した情報の分類で迷うことが少ないのが特徴です。ただ、9~14の欲求についてはややイメージがしにくいので、どのような情報を集めるのかあらかじめ理解しておくほうが、アセスメントがスムーズになるでしょう。
2患者さんの「常在条件」と「病理的状態」を理解する
基本的ニードの14項目を確認するだけでは、個別性のある看護を行うことはできません。
ヘンダーソンは、一人ひとりに合った適切な看護を提供するためには、患者さんの「常在条件」と「病理的状態」も理解する必要があるとしています。
例えば、同じ診断名でも、大人か子どもか(常在条件)、発作直後か回復期か(病理的状態)などによって、必要な看護ケアは異なります。
| 内容 | 例 | |
|---|---|---|
| 常在条件 | その人の特徴や固有の条件 ・年齢、性別 ・性格 ・身体能力 ・家族背景 ・社会的・経済的背景 ・習慣…など |
78歳女性。軽度認知機能障害のある84歳の夫と二人暮らし。近所に次女夫婦が住んでいる。62歳のときに高血圧を指摘された。昨日、 歩行時に平衡感覚に違和感を覚えた。 |
| 病理的状態 | 疾患や障害の程度や影響 ・診断名 ・病期 ・症状 ・重症度 ・治療内容(手術・投薬など) ・検査データ ・合併症の有無…など |
脳梗塞(小脳梗塞)の診断。歩行時のふらつきと平衡感覚障害がみられる。抗血栓薬・降圧薬を内服中。高血圧の既往あり。 |
また、常在条件と病理的状態は、現在起きている、もしくは今後起きるであろう問題の原因となっている可能性が高いです。
基本的ニード14項目のうち、「できていない」「満たされていない」項目があるとき、その原因が常在条件や病理的状態にないかという視点で考えてみましょう。
3看護師の役割は体力・意思力・知識の不足を補うこと
ヘンダーソンは、「体力(身体的側面)」「意思力(心理・社会的側面)」「知識(情報の理解)」の3つがそろっていれば、人は自力でニードを満たすことができる(=自立している)としています。
つまり、「食事がとれない」など、患者さんがニードを満たせていない場合は、体力・意思力・知識の何かが欠けていると考えることができます。
看護師は、その不足している部分を見極め、補うことが役割となります。
例食事がとれない原因は?
| 要素 | 分析 |
|---|---|
| 体力(身体的側面) | 嚥下機能が低下している |
| 意思力(心理・社会的側面) | 味や献立が好みでなく、食事をとる気になれない |
| 知識(情報の理解) | 適切な量・栄養バランスを考慮して食事を摂る必要性を理解していない |
ヘンダーソンの看護過程におけるアセスメントの流れ
ヘンダーソンの看護理論を使ったアセスメントは、大きく3つのステップで進みます。
ステップ1. 3つの枠組みを意識して情報を集め、分類する
まずは、「基本的ニードの14項目」「常在条件」「病理的状態」という3つの枠組みを意識して患者さんの情報を集め、分類します。
【例】
- 74歳。元大工。プライドが高く、介助を嫌う傾向
→「常在条件」 - 脳梗塞により入院。症状は回復しつつあるが、右片麻痺が残る
→「病理的状態」 - 病院食は毎食7割程度食べている
→「2.適切に飲食する」 - 23時ごろに就寝し、6時ごろ起床
→「5.睡眠と休息をとる」
実習中は、基本的ニード14項目の一覧表をノートに貼るなど、すぐ確認できるようにしておくと便利でしょう。
ステップ2.分類した情報を解釈・分析する
各パターンへの分類ができたら、情報を分析していきます。ヘンダーソンの看護理論で意識したいのは次の3点です。
- その人にとっての「ニードの充足」とは何か
- 14の基本的ニードはそれぞれ「充足(適切な状態)」か「未充足(適切でない状態)」か
- 「未充足(適切でない状態)」の原因はなにか
患者さん固有のニードの満たし方を整理してから、基本的ニード14項目がそれぞれ充足か、未充足かを判断してみましょう。その後、「体力」「意思力」「知識」の何が欠けているかを考えて、未充足の原因を探ります。
【例】「適切に飲食する」について
- ニードの充足はどんな状態?
→入院前は飲食の動作にストレスを感じることなく、3食きちんと食べられていた。この患者さんにとっての充足状態は、入院前のように不自由なく自分のペースで食事が行え、必要な栄養を摂取できている状態といえる。 - ニードは充足?未充足?
→「食事は食べられているけど、お箸を持つ手が少し不安定で」との訴えがあり、食事摂取量は7割程度にとどまっている。食事の動作にストレスを抱えており、入院前と比べて食事量も減少していることから、未充足と判断できる。 - 未充足の原因は?
→小脳梗塞による平衡感覚障害が影響し、箸の操作が不安定になっている(体力の不足)。一方、食欲はあり食べたいという意欲は十分にある(意思力は十分)。食事動作を補う自助具があることは知らない様子である(知識の不足)。
例では、「体力」と「知識」が未充足でした。不足している体力と知識を補うケアを中心に、看護を展開していくことになります。
ステップ3. 看護問題を整理する
ステップ1〜2で集めた情報と分析をもとに、次の2点を整理します。
- 1基本的ニードの充足には、どのような看護が必要か
- 2未充足状態が続いた場合、どんなことが起こり得るか
必要な看護を検討する際は、本人や家族の能力と意思を見極め、患者さんが主体的に解決できるのか、どの程度の援助が必要なのかを考えてみましょう。
今後の予測は、学生にとってはまだ難しい作業ではありますが、知識を深め、医師や多職種と連携していくなかで、徐々に力が身についていきます。
【例】
- 「適切に飲食する」が未充足の原因は、体力と知識が欠けていることにあるが、「自分で食べられるようになりたい」という意思は強い。本人の意欲を尊重しながら、スプーンやフォークへの変更など食事方法を工夫したり、自助具があることも伝えたりすることで、自立度の向上が期待できる。
- 「適切に飲食する」の未充足が続いた場合、食事量の不足に伴う低栄養状態と体力低下によって回復が遅くなる可能性もある。また回復が遅くなることで意欲が低下していくことも考えられる。
ヘンダーソンを用いたアセスメントの書き方については、次の記事で14項目すべての例文を載せてわかりやすく解説しています。
神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 講師長島俊輔
2010年 京都大学 卒、2010~2013年 京都大学医学部附属病院(看護師)、2018年 京都大学大学院医学研究科博士課程 修了、2018年 京都大学大学医学研究科 助教、2019~2022年 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部助教、2022年 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 講師(現職)。著書に『系統看護学講座 専門分野 基礎看護学[4] 臨床看護総論 』『よくわかる 看護研究の進め方・まとめ方 第3版』。
編集:北井寛人(看護roo! 編集部)
デザイン:原田 誠一朗
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