心不全の関連図【見本付き】看護や観察項目も含めた病態関連図と全体関連図がスルスル書ける!

心不全の関連図について、看護学生がよく出会う原因疾患と、うっ血性心不全の病態、看護・観察項目まで、関連図をタイパ良く書くコツを解説します。
著者:白石拓人
(循環動態に係る薬剤投与関連、心嚢ドレーン管理関連など6分野の特定行為研修修了。訪問看護師)
執筆協力:白石弓夏
(看護師・ライター)
もくじ

1)心不全の原因疾患は大きく「3つ」
心不全の関連図を書く前に、看護記録や医師のカルテで「原因疾患(なぜ心不全になったのか)」を確認します。
原因疾患は大きく3つです。
- ① 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)
- ② 高血圧
- ③ 弁膜症(大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など)
まずは「原因疾患」をカルテや看護記録で確認しよう!
2)そもそも「心不全」とは?
「心不全」とは、カンタンに言うと「心臓がバテて、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態」のことです。

①虚血性心疾患、②高血圧、③弁膜症など、さまざまな原因疾患によって、心臓はバテてしまいます。
その結果、「全身に十分な血液を送り出せなくなった状態」のことを「心不全」と言います。
3)「左心不全」か「右心不全」か必ず確認
・臨床では圧倒的に「左心不全」の患者さんが多い!
・基本的には左心不全だと思って、カルテなどで確認を進めるとタイパ◎
・左心不全が進行すると、右心不全も起こってしまい、「両心不全」になる場合も

関連図を書く前に、「左心不全」か「右心不全か」も確認しましょう。
水分が溜まっているのが「肺の中」なら左心不全、「肺の外」なら右心不全です。
表見分け方
| 項目 | 左心不全 | 右心不全 |
|---|---|---|
| 病態 | 肺の中に水が溜まる
【肺うっ血】 |
肺の外(全身の静脈側 ) に水が溜まる 【体静脈うっ滞】 |
| 発生頻度 | 多い |
・比較的少ない ・左心不全に続発 することが多い |
【症状】 呼吸器・肺 |
・喘鳴 (ゼーゼー・ゴロゴロ、連続性ラ音) |
右心不全単体の場合、 肺の異常音は聞こえない |
【症状】 全身・その他 |
— | ・下肢浮腫(足のむくみ) ・食欲不振 ・腹部膨満(腸管浮腫) ・胸水 |
・「左心不全」(肺の中に水が溜まる)のほうが、臨床では圧倒的に多い
・カルテや看護記録に「喘鳴(ぜんめい)あり」「肺雑音(+)」などと書いてあれば左心不全
・「足のむくみ」や「胸水」がみられると右心不全
・右心不全と左心不全では症状が大きく異なり、必要な看護ケアも変わる
4)「うっ血性心不全」とは?
「うっ血性心不全」という言葉もよく目にすると思います。
これは「心不全によって血液が渋滞(うっ血)している状態」のことを指します。
心不全によって、心臓の働きが弱まると、心臓の手前で血液が渋滞することがあります。
渋滞した血液から水分が染み出して、肺や全身にたまった状態が「うっ血性心不全」です。
ここまで解説してきた「左心不全」「右心不全」「両心不全」は、「すべてうっ血性心不全」に含まれます。
・「心不全によって、血液が渋滞している状態」を「うっ血性心不全」と言う
・「左心不全」「右心不全」「両心不全」は、「うっ血性心不全」になっている状態 渋滞した血液から、水分が染み出し、肺の中に溜まっているときは「左心不全」
5)まとめ【関連図に使える流れ!】
【関連図に使える流れ!】
②高血圧
③弁膜症
↓
心臓の働きが低下
↓
【心不全】
全身に十分な血液を送れなくなっている状態
↓
血液が心臓の手前で渋滞する
(うっ血)
↓
うっ血性心不全

※1)~3)の中で、自分の担当の患者さんに当てはまる原因疾患を確認してね!
1)虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)が原因の心不全
・虚血性心疾患とは「心臓の血管(冠動脈)が詰まる病気」のこと
・冠動脈が狭くなったり、詰まったりして起こる
・2種類ある(①心筋梗塞、②狭心症)
・心不全につながりやすいのは「心筋梗塞」
(1)虚血性心疾患は「心臓の血管が詰まる病気」のこと
虚血性心疾患とは、「冠動脈(心臓を取り巻く血管。心臓に血液を届けている)が、動脈硬化によって、狭くなったり詰まったりする病気」のことを言います。

(2) 虚血性心疾患には、2種類ある
虚血性心疾患には、2種類あります。
- 1心筋梗塞(血流が完全に途絶える⇒ 心筋が壊死する)
- 2狭心症(一時的に血流が不足する)
心不全につながりやすいのは、心筋梗塞です。
【関連図に使える流れ!】
↓
心臓への血流が完全に途絶える
↓
栄養や酸素が行き渡らない
↓
心筋の一部が壊死する
↓
壊死した心筋は二度と収縮できない
↓
【虚血性心筋症】
壊死により心臓の収縮力が大幅に低下している状態
※心筋梗塞の結果、心臓のポンプ機能が低下して、「心臓が全身に血液を送り出せなくなって」いたら心不全
【ポイント】
- 心筋梗塞で壊死した心筋は、二度と自分では動けない(収縮できない)
- 壊死により心臓の収縮力が大幅に低下している状態を「虚血性心筋症」という
- 「虚血性心疾患」が悪化して「虚血性心筋症」になる
(3)心筋梗塞で壊死した心筋は、二度と自分では動けない(収縮できない)

心筋梗塞で壊死した部分の心筋は、二度と自分では動けません。
そのため壊死していない周囲の筋肉は、よりがんばって収縮しようとします。
それが続くと、伸びきったゴムのように筋力が弱まり、心臓全体の収縮力が大幅に低下します。
これを「虚血性心筋症」といいます。
「虚血性心疾患(心筋梗塞など)」が悪化した状態です。
このように、
虚血性心疾患が原因の心不全は、「心臓というポンプを収縮させるパワーが弱くなる(収縮不全)」のが特徴です。
・虚血性心疾患による心不全は「収縮力が弱い(収縮不全)」タイプが多い
2)高血圧が原因の心不全
【ポイント】
- 【左室肥大】高血圧が長年続くと、左心室の筋肉が厚くなる
- 【心拍出量低下】左心室が狭くなると、1回に送り出せる血液の量が減る
- 【代償反応】量が減るので、回数で補おうと脈を速くする

高血圧とは、血液が血管を通るときに、血管の壁に強い圧力がかかっている状態です。
その通りにくい血管に血液を送り出すために、心臓(左心室)はより強い力で収縮しなければならず、負担が大きくなります。
【関連図に使える流れ!】
高血圧が続くと…
①【左室肥大】心臓は強い力で血液を送り出そうとして、筋肉が厚くなる
・筋トレで筋肉が太くなるイメージ
・最初は「頑張っている状態」
⬇
② 筋肉が厚くなりすぎると、心臓が硬くなる
・心臓が硬いゴムボールのようになる
⬇
③ 【拡張不全】硬くなった心臓は、広がりにくくなる
・心臓内に血液を十分ためられない
⬇
④ 【左室内腔が狭くなる】広がりにくくなるのと同時に、部屋の容積も狭くなる
・入る血液の量も減る
⬇
⑤ 【1回拍出量の低下】1回で送り出せる血液量が減る
血圧が高い状態が長年続くと、心臓は「血管の中の高い圧に打ち勝って血液を送り出さなければならない」状態に追い込まれます。
筋トレで筋肉が発達するように、左心室(心臓の主なポンプ部分)の筋肉も、どんどん厚くなっていきます(左室肥大)。
筋肉が厚くなりすぎると、心臓は硬いゴムボールのようになり、十分に広がれなくなります。これが「拡張不全」です。
心臓の筋肉は内側に付いてきます。
そのため、「左室内腔」(左心室の内側の空間)が狭くなります。
すると、部屋にためられる血液の量が通常よりも少なくなります。
このように、左室肥大による【拡張不全】と【左室内腔が狭くなること】で、1拍出量が低下してしまいます(十分に全身に血液を届けられない状態=心不全)。
これが、高血圧が原因の心不全のメカニズムです。
このように、高血圧による心不全は、「心臓が広がって血液をためる力」の低下が原因のことが多いです。
心臓の収縮する力(左室駆出率)が保たれていても、心臓が十分に広がらず血液をためられないため、心不全になることがあります。
【ポイント】
- 高血圧による心不全は「広がれない(拡張不全)」タイプが多い
- 収縮する力(左室駆出率)が保たれていても、心不全になりうることに注意
3)弁膜症が原因の心不全

【ポイント】
- 弁膜症は、心臓の左側の弁(①大動脈弁、②僧帽弁)に起こることが多い
- 弁膜症は、心臓の弁がうまく働かなくなる病気
- 弁膜症には4種類あるが、臨床で出会うことが多いのは下記2つ
①大動脈弁狭窄症(AS)※1は「血液を前へ出せない状態」
②僧帽弁閉鎖不全症(MR)※2は「血液が後ろへ逆流する状態」
※1 Aortic Stenosis(アオーティック・ステノーシス)
※2 Mitral Regurgitation(マイトラル・リガージテーション)
(1)大動脈弁狭窄症(AS)

【関連図に使える流れ!】
① 【弁の石灰化】大動脈弁が硬くなり、開きにくくなる
・動脈硬化が弁に起こり、カルシウムがたまって硬くなる
・ドアがさびついて開きにくくなるイメージ
⬇
② 【大動脈弁狭窄】血液の出口が狭くなる
・左心室は血液を送り出しにくくなる
⬇
③ 【左室肥大】心臓は強い力で血液を送り出そうとして、筋肉が厚くなる
・高血圧のときと同じような変化
・頑張って血液を送り出している状態
⬇
④ 【拡張不全】筋肉が厚くなりすぎると、心臓が広がりにくくなる
・血液を十分ためられなくなる
⬇
⑤ 【左室内腔が狭くなる】広がりにくくなるのと同時に、部屋の容積も狭くなる
・入る血液の量も減る
⬇
⑥【心拍出量低下】全身へ送れる血液が減る
・疲れやすい
・息切れ
・めまい・失神を起こすこともある
血液は、本来しっかり開いた大動脈弁を通って全身へ送り出されます。
しかし、大動脈弁狭窄症(AS)では、動脈硬化などによって弁が石灰化し、硬く厚くなって、十分に開かなくなります。
すると、左心室は狭い出口へ向かって血液を押し出さなければならず、大きな力が必要になります。
その結果、高血圧のときと同じように左心室の筋肉が厚くなり(左室肥大)、さらに進行すると心臓が硬くなって十分に広がれなくなります(拡張不全)。
同時に左室内腔(左心室の容積)も狭く(小さく)なります。
そのため、全身へ送り出せる血液が減り、息切れや疲れやすさなどの心不全症状が現れます。
また、狭い弁を血液が通るときには、聴診で「ザーッ」という収縮期駆出性雑音が聞かれることも特徴です。
さらに、脱水や運動などで心拍出量が急激に低下すると、脳への血流が不足し、失神することがあります。
【ポイント】
- 大動脈弁狭窄症(AS)は「血液を心臓の外に送り出しづらくなる病気」
- 左室肥大から拡張不全(HFpEF:ヘフペプ)へ進みやすい
- 「ザーッ」という「収縮期駆出性雑音」や「失神」が特徴
(2)僧帽弁閉鎖不全症(MR)

【関連図に使える流れ!】
① 【僧帽弁閉鎖不全】弁がしっかり閉じなくなる
・ドアが半開きになっているイメージ
⬇
② 【血液の逆流】心臓が縮むとき、血液の一部が左心房へ逆流する
・前へ進むはずの血液が戻ってしまう
⬇
③ 【左心房の容量負荷】左心房に血液が逆流してくる
・左心房に毎回、本来より多くの血液が入ってくる
・その負担が続くことで、左心房が拡大する
⬇
④ 【左心室の容量負荷】心臓が広がるとき、逆流した血液も左心室へ流れ込む
・左心室は拍動するたびに、本来より多くの血液を受け入れなければならない
⬇
⑤ 【左心室拡大】左心室が少しずつ大きく伸びていく
・容量の負担が長く続くことで、左心室が拡大する
・進行すると、伸び切ったゴムのように心筋が十分に縮めなくなる
⬇
⑥ 【収縮力低下】心臓が十分に縮めなくなる(収縮不全)
・全身へ送り出せる血液が減る
⬇
⑦ 【HFrEF:ヘフレフ】収縮不全による心不全
・左心室のポンプ機能が低下する
・左心房の圧が上昇すると、その圧が手前肺静脈へ伝わり、肺うっ血や呼吸困難につながる
本来、僧帽弁は左心室が縮むときにぴったり閉じ、血液が左心房へ逆流しないようになっています。
しかし、僧帽弁閉鎖不全症では弁が完全に閉じなくなり、心臓が縮むたびに血液の一部が左心房へ逆流します。
逆流した血液によって左心房には容量の負担がかかり、次第に左心房が大きく広がっていきます(左心房拡大)。
さらに、次に心臓が拡大したときに、逆流した血液が左心室へ戻ってくるため、左心室も毎回、本来より多くの血液を受け入れることになります。
その結果、左心室にも容量の負担がかかり、次第に左心室が拡大していきます(左心室拡大)。
この状態が長く続くと、左心室の収縮力が低下し、全身へ十分な血液を送り出せなくなることがあります。
また、左心房に血液が逆流し続けることで左心房の圧が上昇すると、その圧が肺静脈へ伝わり、肺に血液がうっ滞します(肺うっ血)。
その結果、息切れや呼吸困難などの左心不全症状が現れることがあります。
【ポイント】
- 僧帽弁閉鎖不全症(MR)は「血液が後ろへ逆流する病気」
- 左心房が拡大し、左心室も拡大し、筋力がなくなり収縮不全へ進みやすい
4)【ここまでのまとめ】原因疾患と心不全のタイプ(両心不全の解説も)
今回紹介した虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、高血圧、弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症)は、どれも心臓の左側に負担がかかる病気です。
そのため、これらが原因で心不全を起こす場合、まずは「左心不全」として現れることがほとんどです。
さらに、左心不全が長く続くと、肺に血液がたまってしまい、その影響で今度は心臓の右側にも負担がかかります。
その結果、病気が進行すると、左心不全だけでなく右心不全も起こる「両心不全」になることがあります。
・まずは左心不全から始まることが圧倒的に多い
・重症になると両心不全へ進むことがある
5)【共通】左心不全のメカニズム(肺うっ血の流れ)
【ポイント】
- 原因疾患が何であれ、左心不全のメカニズムは共通
- 左心不全は、左心室→左心房→肺へと血液の渋滞(うっ血)が広がる
- 【症状】初期は喘鳴(連続性ラ音)がみられる
- 【症状】重症化すると肺水腫になり、起座呼吸・泡沫状痰などが現れる

【関連図に使える流れ!】
① 【左心室機能低下】左心室の収縮力または拡張力が低下する
・心臓が全身へうまく血液を送り出せなくなる
⬇
② 【左室内圧上昇】左心室に血液がたまり、圧が上昇する
・左心房から左心室へ血液が流れ込みにくくなる
⬇
③ 【肺静脈うっ滞】肺かの血液が、左心房側で渋滞する
・肺から左心房に行けなくなった血液が、手前の「肺静脈」に溜まって渋滞する
⬇
④【肺毛細血管圧上昇】
・渋滞がさらに上流の「肺毛細血管」まで及び、肺毛細血管内の圧力が跳ね上がる
⬇
⑤ 【肺うっ血】肺の毛細血管圧が上昇し、水分がしみ出す
・肺毛細血管内の水分が圧力で押し出され、肺胞の周囲(間質)にたまる
⬇
⑥ 【間質性肺水腫】水分によって細い気管支が圧迫される(初期)
・息を吐くときに「ブーブー」という喘鳴(連続性ラ音)が聞こえる
⬇
⑦ 【肺水腫】水分が肺胞の中にまであふれてたまる(重症化)
・起座呼吸やピンク色の泡沫状痰がみられる
ここまでに解説したなんらかの原因疾患で、左心室の収縮力や拡張力が低下すると、左心室に血液がたまり、左心室内の圧が上昇します。
すると、左心房から左心室へ血液が流れ込みにくくなり、左心房内の圧も上昇します。
さらに、肺から左心房へ戻る血液も渋滞するため、肺の毛細血管の圧が高くなり、水分が血管の外へしみ出します。
はじめは肺胞の周りの組織(間質)に水がたまり、細い気管支(細気管支)が外側から圧迫されます。
そのため、息を吐くときに「ブーブー」という喘鳴(連続性ラ音)が聞こえるようになります。
病状がさらに進行すると、水分は肺胞の中まで入り込み、肺水腫となります。
その結果、横になると呼吸が苦しくなるため起き上がって呼吸をする起座呼吸や、ピンク色の泡沫状痰がみられるようになります。
6)【共通】右心不全のメカニズム(体循環うっ滞の流れ)
【ポイント】
- 右心不全のメカニズムは共通
- 右心不全は、右心室→右心房→全身の静脈へと血液の渋滞(うっ血)が広がる
- 【症状】初期は下肢浮腫(足のむくみ)や体重増加がみられる
- 【症状】重症化すると腹水や胸水がみられ、食欲不振や腹部膨満感、息苦しさなどが現れる
【関連図に使える流れ!】
① 【右心室機能低下】右心室の収縮力または拡張力が低下する
・右心室から肺へ血液を送り出せなくなる
⬇
② 【右心室内圧上昇】右心室に血液がたまり、圧が上昇する
・右心房が血液でいっぱいになり、手前の右心房にも血液がたまる
⬇
③ 【大静脈うっ滞】全身から戻る血液が右心房側で渋滞する
・右心房の手前の上大静脈、下大静脈に血液がためる
⬇
④ 【全身の静脈圧上昇】
・血液がたまることで、静脈や毛細血管にかかる圧力が高くなる
⬇
⑤ 【体循環うっ血】静脈・毛細血管から水分がしみ出す
・足や内臓など全身の組織に水がたまる
⬇
⑥ 【浮腫】全身に水分がたまる(初期)
・下肢浮腫、体重増加、頸静脈怒張などがみられる
⬇
⑦ 【腹水・胸水】さらにうっ血が進行する(重症化)
・腹水では腹部膨満感や食欲不振、胸水では肺が十分に広がらず息苦しさがみられる
右心室の収縮力または拡張力が低下すると、右心不全につながります。
右心不全の原因は、ここまで解説してきたように左心不全などによって、右心室に負担がかかってしまうことなどがあげられます。
右心室の機能が低下すると、右心室に血液がたまり、右心室内の圧が上昇します。
すると、手前の右心房にも血液がたまり、右心房内の圧も上昇します。
さらに、全身から右心房へ戻る血液も渋滞するため、全身の静脈圧が高くなり、水分が静脈や毛細血管の外へしみ出します。
はじめは足など重力の影響を受けやすい部位に水分がたまり、下肢浮腫(足のむくみ)や体重増加がみられるようになります。
病状がさらに進行すると、腹腔や胸腔にも水分がたまり、腹水による腹部膨満感や食欲不振、胸水による息苦しさがみられるようになります。
7)心不全の代償反応
ここまで解説したようにして心不全が起こり、心臓の機能が落ちると、体はどうにかして全身へ血液を届けようと、さまざまな頑張りをみせます。
これを【代償反応】と言います。代表的な順に紹介します。
| 順番 |
代償反応 の名前 |
主なメカニズム と体への影響 |
ワンポイント イメージ |
|---|---|---|---|
| ① | 交感神経系の活性化 | 心拍数や心収縮力を上げて、減った血液量を力づくで補う | 「心臓のムチ打ち」 とにかく速く・強く動かす |
| ② | RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)の活性化 | 腎臓への血流低下を感知し、血管を収縮させ、塩分と水を体内に溜め込んで血液量を増やす | 「塩分と水の抱え込み」 腎臓を絞って血液量を増やす |
| ③ | 抗利尿ホルモン(ADH / バソプレシン)の分泌増加 | 脳から「尿を止める指示」を出し、腎臓での水の再吸収を強めてさらに血液量を増やす | 「おしっこストップ」 尿になるはずの水を体に戻す |
| ※ |
心性ペプチド(ANP・BNP)の分泌 (※①〜③と同時並行で早期から作動) |
①〜③により心臓がパンパンに引き伸ばされると、利尿作用(おしっこを出す)で圧を下げようとブレーキをかける | 「おしっこを出す」 心臓が「水分を出して!」と出すSOS |
| ④ |
心筋リモデリング (心肥大・心拡大) |
慢性的な負担に対抗するため、数週間〜数ヶ月かけて心臓の壁が厚くなったり、心室内腔の形が変わったりする | 「心臓の形・壁の変化」 長引く負荷による構造変化 |
代償反応の名称はとっても難しいですが、上の表の「ワンポイントイメージ」で、何が患者さんの体に起こっているのかをつかんでおきましょう!

1)左心不全:肺うっ血のサイン
以下の症状が「あるか・ないか」を確認しましょう。
これらは、肺うっ血や左心不全を疑う重要なサインです。
- 喘鳴(呼気時にゼーゼー・ゴロゴロ音が聞こえるか)
- 聴診で連続性ラ音・断続性ラ音・水泡音が聞こえるか
- 夜間発作性呼吸困難(就寝後2〜3時間後に突然息苦しくなるか)
- 起座呼吸(横になると苦しく、座ると楽になるか)
- 咳・ピンク色の泡沫状(あわ状)の痰
- SpO₂(室内気で95%以下に低下していないか)※
- 酸素投与の有無と流量変化(酸素投与が必要になったか、または投与量(L/分)が増加していないか)
※ SpO₂:動脈血酸素飽和度(正常値の目安:96〜99%)
【関連図に使える流れ!】
肺うっ血
⬇
肺で酸素を取り込みにくくなる
⬇
SpO₂低下
⬇
酸素投与開始
⬇
酸素流量増加
2)右心症状:体静脈うっ滞のサイン
以下の症状が「あるか・ないか」を確認しましょう。
あれば「体静脈うっ滞」を疑う重要なサインです。
「入院時と比べてどう変化しているか」も確認できると◎!
| 観察項目 | 観察のポイント | 改善のサイン |
|---|---|---|
|
下肢浮腫 (足のむくみ) |
・有無を確認 ・朝より夕方に出やすい。 ・両足首・すねを押してみて、へこんだまま戻らなければ浮腫あり。 |
浮腫の減少 |
| 食欲不振 腹部膨満 下痢 |
・有無を確認 ・腸管のうっ血・浮腫が原因となることがある。 |
食欲や腹部膨満の改善 |
| 体重の変化 | ・体重は体内の水分量の変化を反映しやすいため、毎朝同じ条件で測定 ・心不全では体内に水分がたまっても、初期は「少しむくんだかな」程度で気づきにくい。 ・水分が1Lたまると、体重は約1kg増加する。1週間で2〜3kg程度増加した場合は要注意。 |
体重の減少 |
| 尿量・飲水量 | ・IN-OUTバランス(体に入った水分と出た水分のバランス)の変化を確認 ・尿量が減って体重が増えていれば、体内に水分がたまっている可能性。 |
尿量の増加、体重の減少 |
| 頸静脈怒張(けいじょうみゃくどちょう) | ・ベッドを約45度に上げた状態(半座位)で確認 ・首の静脈が目立って膨らんでいれば、右心房圧が高い可能性。 |
頸静脈怒張の改善 |
3)代償反応・全身症状・その他のサイン
以下の項目も、「あるか・ないか」「入院時からどう変化しているか」を意識して確認しましょう。
| 観察項目 | 観察のポイント | 改善のサイン |
|---|---|---|
| 頻脈・不整脈 | ・有無を確認 ・頻脈は脈拍100回/分以上が目安。 ・不整脈は脈のリズムが乱れる状態。 ・1回の拍出量低下を補おうとする代償反応として、頻脈がみられることがある。 |
・頻脈の改善 ・脈拍の安定 ・不整脈の改善 |
| 末梢冷感(まっしょうれいかん) | ・有無を確認 ・手足が冷たい場合、心拍出量の低下などにより、末梢への血流が低下している可能性。 |
・冷たかった手足が温かくなってくるなど、末梢循環の改善 |
| 皮膚・褥瘡 | ・有無を確認 ・心不全では循環不全や活動性の低下などにより、褥瘡のリスクが高くなることがある。 ・仙骨部・尾骨部・踵・酸素マスクなどの医療機器が当たる部位など、圧がかかりやすい部位を毎日観察。 ・赤み・水疱・皮膚剥離などがないか確認。 |
・赤みや皮膚損傷がない、または改善 |

以下、3つのSTEPでアセスメントするとスムーズです◎。
【STEP①】大前提:心不全は「元には戻らない」病気と理解する
心不全は、心臓が長い時間をかけてじわじわと弱っていく病気です。
治療でいったん回復しても、心臓が健康だったときの機能までは戻りません。
「前みたいにバリバリ動ける心臓」ではなく「ワンランクダウンした心臓」で、今後の生活を組み立てていく必要があります。
「症状が落ち着いた」を「治った」と混同しないように注意し、アセスメントします。
【STEP②】「心不全ステージ」を把握する
以下の表から、担当患者さんの「心不全ステージ」を把握します。
入院している患者さんはステージCが多いです。
| 段階 | 心臓の状態 | 状態のイメージ |
|---|---|---|
| Stage A 心不全リスク |
心臓自体はまだ正常で異常なし | ・「予備軍」 ・高血圧などの持病(危険因子)はあるが、心臓自体は元気 |
| Stage B 前心不全 |
心臓の形や働きに変化が出始めている | ・「隠れ異常」 ・心臓の筋肉が厚くなるなどの変化は起きている。 ・自覚症状なし。 |
| Stage C 症候性心不全 |
心不全の症状がはっきりと現れている | ・「本格的な心不全」 ・坂道を登ると息が切れる、足がむくむなどの症状が出る。 ・調子が良い時と悪い時があり、入退院を繰り返すことも。 |
| Stage D 治療抵抗性心不全 |
薬や一般的な治療があまり効かない | ・「かなり進行した」状態 ・治療を行っても症状を抑えるのが難しい。 ・安静にしていても苦しさが残るなどの状態。 |
※日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』(p.19-21、203)を参考に編集部作成
ステージCの患者さんの場合、入退院を繰り返すことが多いです。
【ステージCの患者さんの目標設定例】
- 1回の入院期間を短くすること
- 退院後の安定期間をできるだけ長く保つこと
- ステージDへの移行をできるだけ遅らせること
【STEP③】「入院時と今」を比べてアセスメントする
⑥で整理する優先順位(①生命に直結する問題→②苦痛・日常生活→③退院後の生活)を意識しながら、改善の手がかりとなる変化を見ていきましょう。
(1)喘鳴がなくなってきた
・肺うっ血が改善しつつあるサインかも
「入院時に聴取されていた喘鳴が消失しており、肺うっ血の改善が考えられる。引き続き呼吸状態を観察し、悪化のサインを見逃さないようにする」
(2)酸素投与量が減ってきた・酸素マスクが外された
・呼吸状態改善のサインかも
「酸素投与量を減少させてもSpO₂が維持されており、呼吸状態が良くなってきているといえる」
(3)体重が減ってきた
・IN-OUTバランスが改善したサインかも
「入院時より体重が2kg減少しており、利尿効果が得られ体液量過剰状態が改善してきていると考えられる」
(4)廊下を歩けるようになった
・活動耐性(体を動かせる能力)回復のサインかも
「ベッド上安静から廊下歩行まで活動範囲が拡大しており、活動耐性が戻ってきている」
(5)食欲が出てきた
・腸管のうっ血や浮腫が改善したサインかも
「食事摂取量が増加しており、腸管うっ血が良くなってきているサインと考えられる」
改善のサインが見えてきたとしても、油断は禁物です。
「次のステージ(悪化)に進まないように看護する」という視点をもち、継続して観察・ケアを続けましょう。
心不全の悪化原因として、ガイドラインでは「薬の飲み忘れ・塩分の摂り過ぎ・過労・ストレス・感染・喫煙などが生活の中に潜んでいる」と明記されています¹⁾。
退院後の生活がどう成り立つかまで見すえて、アセスメントしましょう。

看護問題の優先順位は、マズローの欲求段階をベースに考えるとわかりやすいです。
1)【心不全の場合】看護問題の優先順位
- 1生命に直結する問題(呼吸・循環)
- 2今までに苦痛になっている問題(体位・清潔・食事など)
- 3今後の生活・退院後に関わる問題(服薬・セルフモニタリング)
2)【心不全の場合の例】看護問題リスト
| 看護問題 | 具体的なサイン・症状 |
|---|---|
|
呼吸困難 (活動耐性低下) |
・息苦しさ ・少し動いただけで息切れする ・活動できる範囲が狭くなる |
| 体液量過剰 |
・浮腫 ・体重増加 ・IN-OUTバランスの乱れ |
|
皮膚統合性障害 リスク状態 |
褥瘡、浮腫がある部位の皮膚損傷 |
| 栄養摂取消費バランス異常 |
・食欲不振 ・早期満腹感 |
| 非効果的自己健康管理 |
・服薬中断 ・塩分の摂り過ぎ ・運動不足 |
| 不安 |
・病状や死 ・退院後の生活に対する不安 |
以下は、各看護問題に対する具体的なケアと根拠です。

1)生命に直結する問題への看護ケア(最優先)
(1)バイタルサイン・酸素療法の経時的モニタリング
【ケア】
- 脈拍(頻脈・不整脈)・血圧・呼吸数・SpO₂を経時的に測定する。
- 入院時や前日の数値と比較する。
- 酸素投与中は流量とSpO₂の推移を記録する。
- 「点」でなく「線」で比較する。
【根拠】
- 頻脈や血圧変動は、心臓が頑張っている代償反応のサインかも。
- 酸素投与量を減らしてもSpO₂が保たれていれば改善、増やしても下がるなら悪化。
(2)水分・体重・IN-OUTバランスの管理
【ケア】
- 毎朝同じ条件(朝食前・排尿後など)で体重測定をする。
- 水分制限がある場合は飲水量を正確に記録。尿量とのバランスを確認する。
- 医師から具体的な指示(水分1日1,000mL・塩分6g未満など)が出ている場合は、その範囲内かを毎日確認する。
【根拠】
- 尿量が少なく体重が増えていれば利尿薬(尿を出させる薬)が十分に効いていないサイン。
- 体重は症状悪化をキャッチできる指標。
(3)活動と休息のバランス(離床と心臓リハビリ)
【ケア】
- 安静度(医師が指示する「動いていい範囲」)の指示に基づき、洗面・トイレ歩行などを通して少しずつ離床を促す。
- 活動時の息切れ・頻脈・血圧変動を観察し、疲労が強い場合は、活動を小分けにする。
【根拠】
- 安静にしすぎると筋力が落ちる(デコンディショニング)。
- 筋力が落ちると、心臓への負担が増す悪循環に陥る。
- 「会話できる程度の息切れ」の範囲で少しずつ動くことが大切とされる。
2)苦痛・日常生活に関わる問題への看護
(1)呼吸困難に対する体位調整・排泄ケア
【ケア①】
- ギャッチアップ起座位・セミファーラー位にする。
- 背中や腕の下にクッションを入れ、呼吸補助筋(呼吸を助ける筋肉)を使いやすい姿勢を作る。
【ケア②】
- トイレ移動が負担な場合はポータブルトイレを活用。
- 排便時のいきみを避けるため緩下剤(便を柔らかくする薬)で便通をコントロールする。
【根拠】
- 起座位にすると、重力で静脈還流量(心臓に戻る血液)が減り、心臓の負担と肺うっ血が軽減されることも。
- いきみ(怒責)は、胸腔内圧・腹腔内圧を上げ、心臓への血流を妨げたり、急激な血圧変動を招いたりするとされる。
(2)清潔ケア・リラクゼーション(足浴・清拭・洗髪)
【ケア】
- 息切れや疲れやすさ(活動耐性)に合わせてベッド上で清拭・足浴・洗髪を行う。
- 末梢冷感があれば、足浴や温罨法(おんあんぽう)で対応する。
【根拠】
- 気持ちよさで副交感神経(体をリラックスさせる神経)が優位になり、心臓の負担が軽減されることも。
- 「さっぱりした」感覚は精神的な安定にもつながるとされる。
(3)皮膚・褥瘡予防・浮腫のケア
【ケア】
- 定期的な体位変換・除圧(圧力を取り除くこと)を行う。
- 仙骨部・尾骨部・踵の皮膚状態を観察する。
- 浮腫部位は優しく洗い保湿する。
【根拠】
- 心不全では皮膚への血流も低下し、褥瘡リスクが高いとされる。
- ギャッチアップ(ベッドで上半身を起こした状態:セミファウラー位などの半座位)の継続で、尾骨・仙骨に体重が集中しやすい。また、むくんだ皮膚は薄いため傷つきやすい。
(4)食事・栄養管理(食欲不振への対応)
【ケア】
- 摂取量を観察し、少ない場合、その理由(息苦しい・腹部膨満など)を確認する。
- 一口大・とろみなど食べやすい工夫をする。
【根拠】
- 右心不全による腸管浮腫(腸の壁がむくむこと)で、早期満腹感・食欲不振が起こりやすい場合も。
- 食べる行為自体で息切れを招くことがある。
- 食欲の回復は腸管うっ血の改善サインともされる。
3)今後の生活・退院後に関わる問題への看護
(1)与薬管理と服薬指導
【ケア】
- 利尿薬・降圧薬・心不全治療薬が確実に内服できているか確認する。
- 「症状が良くなっても薬は続ける必要がある」ことを、患者さんと一緒に確認する。
【根拠】
- 薬の飲み忘れ・自己中断が、心不全の悪化原因として挙げられている。
- 一度心不全になってしまうと、心臓の働きが元通りにはならない。「薬は心臓をこれ以上悪くしないためのもの」という理解が、再入院予防の鍵になる。
(2)セルフモニタリングの指導と心理的サポート
【ケア①】
- 退院に向けて毎日の体重・血圧測定と、記録の習慣づけを支援する。
- 「1週間で2〜3kg増えたら次の外来を待たずに受診する」など、具体的な受診目安を伝える。
【ケア②】
- 「体重が増えていない」「昨日より足のむくみが引いた」など、小さな改善も言葉にして伝える(ポジティブフィードバック)。
【根拠】
- 心不全はだんだん悪くなっていく病気であり、死への不安・喪失体験(できないことが増えていく悲しさ)・入退院を繰り返すことの疲弊感を抱える患者さんが多い(抑うつの合併も多い)。
- 話しやすい問いかけで生活背景を引き出し、不安を取り除くサポートが重要。
- ポジティブフィードバックは、患者さんのセルフモニタリング継続への意欲につながる。

1)食生活(塩分・水分管理)
【個別性を引き出せる質問例】
・普段、どんなものをよく食べていますか?
・食事は誰が作っていますか?
・漬物や梅干しなどは、よく食べますか?
・ラーメンのスープは全部飲みますか?
・お味噌汁は全部飲みますか?
・お刺身や冷奴などを食べる時、お醤油は直接かけますか?
・醤油かける時って何周します?
【質問のポイント】
- 心不全では、塩分をとりすぎると体に水分がたまりやすくなり、心臓に負担がかかることがある。
- そのため、「塩分を減らしてください」と伝えるだけではなく、普段どんな食事をしているのか、どのくらい塩分をとっているのかを具体的に確認することが大切。
【関連図に活かす例】
↓
塩分のとりすぎ
↓
体に水分がたまりやすくなる
↓
体液量増加・心臓への負担増加
↓
心不全の悪化
2)飲酒・喫煙
【個別性を引き出せる質問例】
・お酒は普段、どのくらい飲まれますか?(どんなお酒を/どのくらいのコップで/何杯)
・宴会や付き合いのときはどうですか?
・タバコは吸いますか?1日に何本くらいですか?
【質問のポイント】
- 飲酒では、普段は少ない量でも、宴会や付き合いなどで一度にたくさん飲むことが、心不全を悪化させるきっかけになることがある
- そのため、「普段どのくらい飲むか」だけでなく、「特別なときにはどのくらい飲むか」まで確認する。
- 喫煙については、タバコを吸い続けることが心臓や血管に負担をかけ、心不全の悪化につながる可能性があるため、確認する。
- 本人だけでなく家族からも普段の様子を確認すると、より正確に把握できることがある。
【関連図に活かす例】
↓
体に水分がたまりやすくなる
↓
循環血液量が増える
↓
心臓への負担が増える
↓
心不全を悪化させる可能性
↓
ニコチンにより交感神経が刺激される
↓
血管が収縮し、血圧・心拍数が上昇する
↓
心臓が血液を押し出す負担(後負荷)が増える
↓
心臓・血管への負担が増える
↓
心不全を悪化させる可能性
3)仕事・活動量
【個別性を引き出せる質問例】
・どんなお仕事をされていますか?
・仕事ではどれくらい体を動かしますか?
・仕事ではどれくらいストレスがかかっていると思いますか?
・退院したあと、今までと同じように働けそうですか?
・仕事に戻ることについて、不安や心配はありますか?
【質問のポイント】
- 心不全では、体を動かしすぎたり、仕事で無理をしたりすると、心臓に負担がかかることがある。
- 仕事内容だけでなく、「どのくらい体を動かす仕事なのか」「休憩をとれるのか」「退院後も無理をして働いてしまいそうか」などを確認。
【関連図に活かす例】
↓
仕事による過労・ストレス
↓
心不全を悪化させる可能性
4)家族歴・社会的背景
【個別性を引き出せる質問例】
・ご家族に心臓の病気をした方はいますか?
・ご家族に高血圧の方はいますか?
・退院後は、誰と一緒に暮らしますか?
・食事は誰が作っていますか?
・困ったときに相談できる家族や身近な人はいますか?
【質問のポイント】
- 心筋梗塞や高血圧などは、家族(両親・祖父母・兄弟などの血縁者)に同じ病気の人がいることで、発症しやすくなる場合がある。
- 家族(血縁者)に心臓の病気や高血圧の人がいるかを確認する。
- 退院後の生活を考えるときは、「誰と暮らしているか」「食事を誰が作るか」「困ったときに助けてくれる人がいるか」なども重要。
【関連図に活かす例】
↓
服薬・食事・通院などの自己管理が難しい
↓
心不全を悪化させる可能性
5)心理・精神面
【個別性を引き出せる質問例】
・病気になってから、気持ちの面で変わったことはありますか?
・今、一番心配なことは何ですか?
・退院後の生活について、不安なことはありますか?
・最近、ストレスを感じることはありますか?
【質問のポイント】
- 「元の体に戻さないと」「気合いで治る」「歳のせいだと思っていた」など、患者さんによってさまざまな心理的な負担を抱えていることがある。
- 「仕事への責任感」や、「早く元の生活に戻りたい」という気持ちなど、一見すると前向きな気持ちでも、頑張りすぎることで心や体への負担になることも。
【関連図に活かす例】
↓
頑張りすぎ・ストレス
↓
心身への負担が増える
↓
心不全を悪化させる可能性

1)虚血性心疾患(心筋梗塞)が原因の心不全
事例概要【A氏、68歳、男性】
・A氏: 68歳・男性 身長168㎝、平常時体重約73kg、BMI 26(やや肥満)
・診断名: 急性非代償性心不全(症状が急激に悪化した心不全)、虚血性心筋症
・既往歴: 急性心筋梗塞(65歳時、カテーテル治療施行)、脂質異常症
・職業: 専業農家(米・野菜)
・喫煙歴: 20歳から1日20本吸っていたが、3年前の心筋梗塞を機に禁煙
・飲酒: 日本酒1合/日。年末の宴会では3合とビールを多量に飲んだ
・家族・キーパーソン: 妻(65歳・一緒に農業)。長男家族は他県在住。キーパーソンは妻
・趣味・嗜好: 地元の仲間との飲み会。しょっぱいものが大好きで、自家製の漬物が毎食欠かせない
(2)現病歴・入院時
- 現病歴:年末の村の集まりで塩分とアルコールを多めに摂取。
翌朝、息苦しさと喘鳴が出現し、ピンク色の泡沫状の痰が出たため妻が救急車を要請し緊急入院。
最近は体重は測っておらず、いつから、どれくらい増えていたのかは本人も妻もわからないとのこと。
入院時の体重78kg。
- 入院時バイタル:起座呼吸、呼吸数28回/分、SpO₂(動脈血酸素飽和度)88%(ルームエア)、血圧165/95mmHg、脈拍110回/分(頻脈)、下肢浮腫(+)
- 検査値:BNP(心臓への負担を示す指標。正常は18.4 pg/mL未満)1,850 pg/mL。
胸部X線で両側肺うっ血・心拡大。
心エコーでLVEF(左室駆出率:心臓が1回の収縮で送り出す血液の割合。正常は55%以上)35%。HFrEF(へフレフ)。
心電図でST-T変化(陳旧性心筋梗塞の所見)。
血液検査でNa 133 mEq/L(軽度の低ナトリウム血症)。
Cr 1.3 mg/dL・eGFR 45(腎機能軽度低下)。
入院時の尿量20mL/時前後(乏尿傾向)。
- 治療:酸素投与(NPPV:FiO₂ 40%、IPAP 10cmH2O/EPAP 5cmH2O程度で開始)
ループ利尿薬静注(尿を出して水を抜く薬)
血管拡張薬(硝酸薬)持続静注。
(3)患者さんの様子・価値観
「春には田植えがあるから、それまでに元の体に戻さないと」と焦っている。
水分・塩分制限(水分1日1000ml、塩分1日6g未満)に強いストレスを感じており、「漬物が食べられないなら飯の味がしない」「喉が渇いて仕方ない」と看護師に不満をもらしている。
(4)この患者さんの病態のポイント
飲み会でしょっぱい食べ物とお酒をたくさん摂ると、体の浸透圧(血液の濃さ)が上がって尿が出にくくなり、 心臓が動かさなきゃいけない「血液の量」が一気に跳ね上がります。
そこで心臓は、最初はテンポを上げたり、収縮する(血液を送り出す)力を強くして、なんとか乗り切ろうとします。
しかし、飲み会が終わり朝方になって、体が「お休みモード(副交感神経)」から「活動モード(交感神経)」に切り替わるとき、血圧がガツンと上がります。
すると、心筋梗塞などで心臓がもともと弱っていた場合、収縮不全となり、血液を全身に送り出せなくなってしまうのです。
そして、心臓の中に血液があふれ返り、肺に水分がしみだして、水が溜まります。
こうして息が苦しくなるのです。
2)高血圧が原因の心不全
事例概要【B氏(72歳・男性)の場合】
・B氏: 72歳・男性 BMI 23(標準)
・診断名: 急性非代償性心不全、高血圧性心疾患、頻脈性心房細動
・既往歴: 高血圧(50歳頃指摘されるも「薬は飲みたくない」と10年前から通院中断。一度降圧薬を服用した際に倦怠感の副作用が出たことがきっかけで、本人の判断で中断した)
軽度の脂質異常症(40歳代の健診で指摘されるも未治療)
・職業: 自営業(町工場の社長、社員は自分を含め2名)
・喫煙歴: 1日20本を現在も継続中
・飲酒: 焼酎1〜2杯/日
・家族・キーパーソン: 妻(70歳・経理担当)。娘は独立して近隣に居住。
・趣味・性格: 仕事一筋。責任感が強く「自分が休むと工場が回らない」が口癖
(2)現病歴・入院時
- 現病歴:数ヵ月前から階段を上る時の息切れや足のむくみを感じていた。
数週間前からは、どきどき動悸も感じていたが、「年のせいだろう」と気にせず放置していた。
仕事が忙しく受診もしなかった。
入院数日前から横になると息苦しく、動悸が止まらなくなったため、見かねた妻が救急要請し入院。
- 入院時バイタル:呼吸数29回/分。
SpO₂(動脈血酸素飽和度) 92%(ルームエア)。
血圧185/105mmHg
脈拍130回/分(不整:心房細動)。
強いむくみ(下肢浮腫++)。
頸静脈怒張(首の静脈が浮き出た状態)あり。
- 検査値:BNP 1,620 pg/mL。
胸部X線で心拡大・胸水貯留。
心エコーでLVEF 55%(左室肥大と拡張能低下:HFpEF)
D-ダイマー軽度上昇。
- 治療:酸素投与(鼻カヌラ2L/分)。
ループ利尿薬静注、降圧薬、β遮断薬(脈を遅くして心臓の負担を減らす薬)、抗凝固薬(血栓を防ぐ薬:DOAC)。
(3)患者の様子・価値観
「ただの疲れだと思っていた。薬なんて飲まなくても気合いで治る」と最初は強がっていたが、点滴と酸素につながれて落ち込んでいる様子。
妻からは「仕事ばかりで自分の体を全然気遣ってくれない。退院後もちゃんと薬を飲んでくれるか心配」と愚痴がこぼれている。
また、「動悸があるって前から言ってたのに、まさかここまで悪くなるなんて。もっと早く無理やりにでも病院に連れて行けばよかった」と、自分を責めるような発言も聞かれている。
(4)この患者さんの病態のポイント
心不全に心房細動(心房がブルブルと震えて、まともに収縮できない不整脈)が加わると、話が一気にこじれます。
洞調律(心臓の正常なリズム)では、心房が左心室に最後の一押し(心拍出量の約20%分)を送り届けているのですが、心房細動ではその役割が果せなくなります。
この「最後の一押し」が失われた瞬間、肺から左心房に血液が戻りにくくなり、左心房の圧が一気に上昇します。
そのまま肺の毛細血管(肺の中の細い血管)の圧も上がり、間質(肺胞の周りの組織)に水が漏れ出して、たまります。
すると、水分で腫れあがった間質が、隣接する「細気管支」を外側から押しつぶす状態となります。
こうして 喘鳴・起座呼吸などの左心不全症状が現れます。
3)弁膜症(大動脈弁狭窄症)が原因の心不全
事例概要【C氏(85歳・女性)の場合】
・C氏: 85歳・女性 身長150cm、体重約42kg、BMI 18.5(やせ気味)
・診断名: 急性心不全、重症大動脈弁狭窄症(AS)
・既往歴: 骨粗鬆症、脂質異常症(いずれも近所のクリニックに定期通院し、服薬はきちんと継続できていた)
・職業: 無職(元事務職)
・喫煙歴・飲酒: なし
・家族・キーパーソン: 夫と数年前に死別し、現在は一人暮らし(持ち家・一軒家)。車で30分のところに長男家族が住んでいる。キーパーソンは長男
・趣味・性格: ガーデニング、近所の友人とお茶飲み。几帳面でしっかり者だが、最近は足腰が弱ってきた
(2)現病歴・入院時
- 現病歴:半年ほど前から、庭いじりや買い物に出かけると胸が苦しくなり、休むことが増えていた。
この半年で体重が2kgほど減っており、本人は「歳のせいで食が細くなった」と思っていた。
食が細くなるとともに水分摂取量も減っており、こまめな水分補給ができていなかった。
入院当日の朝、ゴミ出しに行こうとした際に胸痛と強い息切れを感じ、その場にうずくまってしまった。
近所の人が発見し救急要請。
- 入院時バイタル:呼吸数22回/分。
SpO₂(動脈血酸素飽和度) 90%(ルームエア)
血圧155/95mmHg。
脈拍90回/分(整)。
聴診で収縮期駆出性雑音。
手足に冷感あり。
- 検査値:NT-proBNP(心臓への負担を示す指標。BNPと似た検査)1,800 pg/mL。
心エコーで大動脈弁の高度石灰化
弁口面積0.7cm²(重症AS)。
LVEF 55%
- 治療:酸素投与、少量のループ利尿薬静注(ASでは急激な血圧低下・失神のリスクがあるため利尿薬は慎重に少量から投与)。
状態安定後にTAVI(経カテーテル人工弁置換術:カテーテルを使って新しい弁を入れる手術)を検討中。
(3)患者の様子・価値観
「歳のせいだと思っていたけど、心臓の弁がダメになっていたなんて……」とショックを受けている。
「カテーテルの手術(TAVI)をすれば、またお花の手入れができるようになるかしら」と期待と不安が入り混じっている。
一人暮らしのため、退院後の生活(家事や介護保険の導入など)に不安を抱えている。
<おわりに>
心臓の仕組みは難しいですが、頑張って関連図に落とし込んできたみなさんは、とってもスゴいです!
この記事を参考にして、少しでも睡眠時間が増えますように。
引用文献
1)日本循環器学会,日本心不全学会:心不全診療ガイドライン 2025年改訂版.2025:p.205(2026年8月31日アクセス)
参考文献(すべて2026年8月31日アクセス)
・看護roo!:心不全とは.
・看護roo!:心不全の症状.
・看護roo!:心不全急性期の看護.
・看護roo!:左心不全・右心不全・両心不全.
・日本心臓財団.
関連図PDF作成:三宮暁子(Highcolor)
イラスト:上林陽子、たかぎなおみ、中山佳之
編集:坂本綾子(看護roo! 編集部)
デザイン:伊神理咲
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今日の看護クイズ
本日の問題
◆消化器の問題◆柿の食べ過ぎで生じる柿胃石の治療に使われる飲料はどれでしょうか?
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