「私は虫垂炎です」なんて自己紹介してやってくる患者はいない|ヤンデル書房(9)

Twitterで人気のヤンデル先生が「本屋の店主」になって看護師におすすめの本を紹介…、今回はなぜか店主がおやすみ?代理の店主が登場です。

 

文:ヤンデル(病理医)

イラストレーション:ネモトマ

 

ヤンデル書房~看護師だけのヒミツの本屋

Vol.9 症状を知り、病気を探る~病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る

 

あ、こんにちは。はじめまして!

すみません、今日は店主がおやすみです

なので、代わりに私が店番をしております。代理ではありますが、この店のことはだいたいわかりますので、何かお探しでしたらお声がけくださいね。

 

今月のおすすめですか?

 

なるほど、いつも店主におすすめをたずねていらっしゃるのですね。そのように本屋を活用していただいてどうもありがとうございます。私のおすすめでよければ、一冊ご紹介できますよ。こちらです。

 

『症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る』(照林社)

 

 

ここだけの話、店主のお気に入りの本です。いつも本棚のいい位置に挿してあるんですよ。

 

いろいろなお客さんが手に取って買って行かれます。ナースになったばかりの方も、ベテランナースも。2年半ほど前に出た本ですが、コンスタントに売れています。

 

ただ、なぜか、店主はこの本をフェアにしたりPOPを立てたりしたことがないようです。もっとおすすめすればいいのに

 

一度、ふしぎに思って、バックヤードで店主に「この本のこと大好きなんですよね?」とたずねてみたんですが、なんだかもじもじとするばかりで、ちゃんと答えてくれませんでした。

 

なんなんでしょう?

 

今日は店主がいないので、私が代わりにおすすめしておきます。すごくいい本ですよ。

 

 

「症状」から「病気の正体」を見抜く

具体的には、どういう本なのかって?

 

患者さんの症状や身体所見から、病気の正体を見抜くための考え方が書かれている本、です。

 

ジャンルとしては、「症候診断学」と言えばいいのかな。

 

 

『症状を知り、病気を探る』というタイトルにもある通り、「病気」のことを詳しく書いた本というよりは「症状」にクローズアップした本です。目の付け所がおもしろいですね。

 

「そもそも痛みとは、症状とは、なんなのか? なぜ人間は痛みを感じるのだろうか?」というギモンから、第一章は始まります。非常に読みやすくてスラスラ理解できるはず。

 

しかも、わかりやすいだけではなく、患者さんの痛みに患者さんと一緒に向き合うための、知識の土台になってくれるでしょう。

 

これに続けて、ナースが臨床の現場で遭遇する頻度が高い5大症候、

①腹痛、

②胸部不快感・胸痛、

③呼吸困難、

④発熱・高体温、

そして⑤めまいが、順番に語られます。

 

 

患者さんが訴える症状をどのように整理して解釈すればよいか

 

患者さんにどのように質問することで効果的に症状を理解することができるかを、

 

独特の覚え方「きっとマスカラ強いバタコの時間」のキーワードでまとめてしまうところは、著者の面目躍如といったところです。

 

 

病名が決まっていない患者さんをケアする

 

そういえば、かつて、店主が入荷したばかりのこの本を棚に挿しながら、私にこう言ったことがあります。

 

 

「『私は虫垂炎です』って自己紹介しながら診察室に入ってくる患者なんていないよね」……って

 

 

病気の名前は、医師が診断したあとに明らかになるものであって、患者さんが病院にやってきた段階ではわかっていないものです。

 

ところが、多くの教科書は、病気の名前で調べるようにできています。たとえば「虫垂炎」の項目には、「右下腹部が痛くなることが多い」と書かれています。

 

「病気→症状」という順番ですね。

 

これはこれで役に立つ情報ですけれど、現場では、最初はそもそも虫垂炎かどうかがわからないんです。

 

「右下腹部が痛いといっている患者さんがやってきた、さあ、いったいなんの病気なんだろう……?」のように思考が進むわけです。

 

「症状→病気」の順番で考えたい

 

まだ病名が決まっていない患者さんのケアをするためには、症状のことを知って、病気へ思いを馳せるような本が役に立つと思います。

 

診断なんて医師にまかせればいいのでは、と思われるナースの方もいらっしゃるかもしれませんが……。

 

毎日のように患者さんと顔を合わせるナースが、患者さんの症状に誰よりも早く気づいてアセスメントすることは、診断そのものです。ケアのための診断。ですから、「症状」について詳しくなる価値はあると思いますよ。

 

 

「なんでもっと宣伝しないの?」

どこを読んでもやさしい語り口調で、新書とかエッセイの棚に置かれていても不思議ではない本。

 

この著者の本は、医学書であっても語り口調で書かれています。丁寧語で自分を守るタイプのオタクなのかもしれませんが、「だ、である」で書かれた本よりも気楽に読めて私は好きですね。

 

難易度としては、看護学校に入りたての学生さんを想定して書かれた本だそうです。つまりは非医療者の方々、一般のみなさんが読んでも大丈夫ということ。ナースではない方、おそらく患者さんなんだろうなという方にも、ときおりお買い求めいただいています。

 

 

しかし、なんで店主はこれをもっと宣伝しないのかな……。

 

そうとう思い入れが強いとは思うんだけど。

 

たんなる気まぐれかなあ。

 

ほかの本屋でこの本を見つけると、こっそり写真を撮ったりしてることもあるんですよ。

 

愛情が深すぎてこじらせちゃったのかも。

 

あ、こんなこと言ってたというのは、店主にはナイショですよ。

 

 

ヤンデル書房 店主

病理医ヤンデル(市原真/いちはら・しん

1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)、札幌厚生病院病理診断科。現在、同科主任部長。医学博士。病理専門医。著書に『症状を知り、病気を探る』(照林社)、『いち病理医の「リアル」』(丸善出版)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(大和書房)など。Twitterブログnoteなどで発信中。良い本を人におすすめするのが大好き。2020年8月23日は #SNS医療のカタチTV を開催します。

 

 

症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る

■著者:市原 真

■発行:照林社(2017/11/20)

■判型:A5判、176ページ

■定価:本体1,600円+税

■ISBN-13: 978-4796524209

 

編集/烏美紀子(看護roo!編集部)

 

 

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