看護研究のテーマを探そう!研究テーマの決め方|看護研究「攻略」マニュアル(2)

「看護研究の担当になっちゃった!」という若手ナースのみなさんに向けて、看護研究の進め方や無理なくできるポイントを連載で解説していきます(連載一覧はこちら)。

タイトル「看護研究テーマの決め方」イラスト

第2回は「看護研究のテーマの決め方」です。

 

「研究したいテーマなんて思いつかないよ…」と途方に暮れていたとしても大丈夫。看護研究を担当することになったナースの多くは、そんな状態からのスタートです。

 

これから紹介する研究テーマの探し方や考えるときのポイントを参考に、焦らず決めていきましょう。

 

 

研究テーマは「身近な疑問」がヒントになる

「研究テーマ」と聞くと、カタくて難しくて何か壮大なことを調べなくてはいけないイメージがあるかもしれません。ですが、研究テーマは、実はみなさんの「身近な疑問」の中にあるものです。

 

日頃の臨床現場で「なんでだろう?」「どうしたらいいのかな?」と思うことがなかったでしょうか。そんな疑問を深堀りしてみることが、研究テーマを見つける手がかりになります。

 

まずは、現場で感じた疑問をメモに書き出してみましょう

 

(例)

  • リハビリに消極的な患者さんは、どうしたら意欲を持ってくれるかな?
  • 点滴漏れのときって、どうしてこのケアをするんだろう?
  • 紙カルテから電子カルテになったら、記録時間はどのくらい短縮できるのかな?

 

 

とはいえ、身近な疑問と言われても「うーーん、、、何かあったかな」「日々の業務に追われて、疑問を持つ余裕もなかったよ...という方もいるでしょう。

 

そんなときは、次の図のようなキーワードから探ってみるのもおすすめです。

 

看護研究のテーマを考えるときのキーワード例の図表。誰の?:患者さん・看護師・ご家族・高齢者・小児など。何に?:ケア・記録・治療・QOL・ストレス・認知症・記録・ADL・転倒など。どんな疑問?:なぜ・どうしたら・実態はどうか・◯◯との関連はあるかなど

 

こうしたキーワードを連想して組み合わせながら日頃の業務を振り返ると、「そういえば、あれが気になってた!」「これ興味ある!」と研究テーマのヒントに思い当たることがあるかもしれません。

 

 

「それでも何も思いつかない…(泣)」「疑問は浮かんだけど、こんなのが研究テーマになるの…?」と悩んで先に進めないときは、過去の研究テーマを参考にして具体的なイメージを持つのもおすすめです。

 

たとえば「先輩たちの看護研究のテーマを見てみる」「看護の研究論文をネットで検索してみる」などが効率が良いでしょう。

 

「こういうテーマもアリなんだ」「これに似た疑問だったら私もある」と知ることで、考えるハードルが下がることがあります。

 

【テーマ例一覧】たとえば、こんな研究テーマ

 

 

「PICO」で疑問を研究テーマに変身させる

「もしかしたら研究テーマになるかも?」という疑問を見つけたら、研究テーマとして整理しやすい形に落とし込んでみましょう。

 

研究テーマを整理するときに、よく使われるのが「PICO(ピコ)」という考え方です。次の4つの要素に当てはめていくことで、疑問の輪郭がはっきりしてきます。

 

PICOの説明イラスト。P:Patient/Problem、どんな患者さん/問題に。I:Intervention、どんな介入をしたら。C:Comparison、何かと比較して。O:Outcome、どうなるか

 

では、どんなふうにPICOを活用するか、例を見てみましょう。

 

たとえば、「リハビリに消極的な患者さんは、どうしたらもっと意欲的に取り組めるようになるだろう?」という疑問を持っていたとします。

 

これをPICOで整理してみると、まず

P:リハビリに消極的な患者さんに、I:〇〇したら、C:しなかった場合と比べて、O:意欲的に取り組めるか

 

という形が見えてきました。ですが、まだまだボンヤリしています。

 

そこで、これまでの経験を振り返って検討してみたところ、「看護師が繰り返し声掛けしていたら、自主的に歩行の訓練を始めた患者さんがいた」ことなどを思い出すかもしれません。

 

これを踏まえて、PICOを次のように直してみます。

P:リハビリが必要な患者さんに、I:リハビリに対する声掛けや不安の傾聴など、看護師が精神的なケアを行うことは、C:行わなかった場合と比べて、O:リハビリへの意欲にどの程度、影響があるか

 

調べたいことが少し具体的になってきました

 

ただし、「わざと精神的なケアを行わない患者さん」を作って比べることはできません。また、リハビリの意欲への影響もどう評価したらいいかが曖昧です。

 

そんなときは、次のように視点を変えることができるでしょう。

P:リハビリが必要な患者さんが、I:リハビリに対する声掛けや不安の傾聴など、看護師による精神的な支援があったと感じられた場合、C:感じられなかった場合と比べて、O:リハビリに取り組む時間が増加するか/自主的にトレーニングする回数が増えるか/リハビリへのネガティブな言動が減るか…など

 

これなら

 

「リハビリに関する看護師の精神的なサポートについて、患者さんの評価を尋ねる」「リハビリに取り組む時間の変化を調べる」ことで、何とかなりそう

 

―と、具体的な研究方法の見通しがついてきました。

 

さらに、「P:リハビリが必要な患者さん」は、疾患や手術の有無、術後の期間、年齢などで対象を絞ることも可能です。

P:腰椎椎間板ヘルニア/腰部脊柱管狭窄症/頚椎症性脊髄症の術後の患者さんが、I:リハビリに対する声掛けや不安の傾聴など、看護師による精神的な支援があったと感じられた場合、C:感じられなかった場合と比べて、O:リハビリに取り組む時間が増加するか/自主的にトレーニングする回数が増えるか/リハビリへのネガティブな言動が減るか…など

 

このように、PICOを使うことで、もともとの疑問ではふんわりしていた部分が具体的になり、研究テーマらしく変身させることができます

 

 

疑問の内容によっては、すべてがPICOの形にきれいに落とし込めるわけではありません。

 

たとえば、「新人ナースは技術チェックリストの苦手項目に対して、どんな感情を持っているかを洗い出してみたい」といった疑問・関心であれば、「C:比較する対象」はなくても成立する場合もあります

 

ですが、PICOは研究テーマを考えるうえで、とても便利なツールであることには違いありません。

 

書き出してみた疑問が研究テーマになりそうかを検討するときには活用してみると良いでしょう。

 

身近な疑問をPICOで研究テーマに変身させるイメージイラスト。魔法使い風の看護師が「PICOでバビデブー」とステッキを振っている

 

 

「P=対象となる人・問題」が明確な看護研究は「同じ状況の患者さんのケアに参考になりそう」「違う条件でも当てはまるか試してみよう」など、現場での実践や次の研究に生かされやすくなります。

 

ただし「対象が限定的すぎて、十分な数の患者さんが集まらない」とならないように、絞りすぎには気をつけましょう

 

 

研究テーマを決める4つのチェックポイント

身近な疑問からアイデアを出し、PICOを活用するなどして研究テーマを整理したら、次のチェックリストを確認します。このテーマで本当に研究を進められそうか、4つのポイントをチェックしてみましょう。

 

研究テーマを決める4つのチェックリスト図表。①そのテーマに興味・関心を持てる?②そのテーマは、もう答えが出ていない?③そのテーマは、研究で明らかにできそう?④そのテーマを調べたら、どんな役に立つ?

 

①そのテーマに興味・関心を持てる?

思いつく疑問をあれこれ書き出していく中で「とりあえず書いてはみたものの、実はそんなに興味なかったかも…」という疑問が混じることは意外とよくあります。

 

興味・関心を持てないテーマで半年~1年近く、看護研究に取り組むのは、やっぱり苦しいものです。モチベーションが維持できるように、少しでも「面白そう」「知りたい」と思えるテーマを検討しましょう。

 

 

②そのテーマは、もう答えが出ていない?

考えていた疑問・テーマの答えが、すでに先行研究で明らかになっているのであれば、まったく同じ研究をする必要がありません。

 

そのため、実際に研究テーマを考えるときは「アイデアを出す・整理する」「先行研究・文献を確認する」という作業を行ったり来たりしながら、最終的に決定していくことになるでしょう。

 

 

 

ただ、先行研究で既に同じようなテーマがあったとしても、「その研究で出た結論は本当か検証する」という視点・方法もあります。「実証研究」と言われる研究です。

 

詳しくは、下のPoint:実証研究でも解説します。

 

 

③そのテーマは、研究で明らかにできそう?

研究テーマは、「自分のこれからの研究で一定の答えが得られそう」なものにする必要があります。

 

みなさんが取り組む看護研究では、対象にできる範囲や人、期間、使える費用などに制限があるはず。

 

「日本とアメリカの看護師1000人ずつにアンケートしよう」と思っても(たぶん)無理ですし、10カ月後には結果をまとめて発表しないといけないのに「◯◯の患者さんにおける1年後の変化」を調べることはできません。

 

若手ナースの看護研究では「自分が取り組めるレベルの範囲・方法・難易度」に収めることも実は大切なポイントです。

 

 

そうは言ってもわざわざ研究しなくても、答えが推測できてしまうテーマ」もふさわしくありません。極端な例ですが「給料がアップすると、看護師のモチベーションは上がるか」などは、あらためて調べなくても結果は明らかですよね!

 

④そのテーマを調べたら、どんな役に立つ?

「何の役にも立たない看護研究」は基本的にはないはずですが、「これを調べることで、将来の看護にどう役立つのか」という視点を持っておくことは重要です。

 

ここを明確にできないときは「研究の意義」が見えていないということになり、のちのち、研究計画書を作成するときなどにも行き詰まってしまうでしょう。

 

「これを調べればケアの質が改善する」「看護師が働きやすくなる」など、看護研究でたどり着くゴールを考えてみましょう。

 

 

【テーマ例一覧】たとえば、こんな研究テーマ

看護研究のテーマ例をいくつか挙げてみました。

 

「こういうテーマが看護研究になるんだ」「これと似たような疑問なら、私もある!」「うちの病棟なら、こうアレンジすると面白そう」など、この一覧や皆さんの病院・病棟の過去のテーマ例を参考にして考えてみるのも良いでしょう。

 

  • 急性期病棟における転倒・転落事故の原因の分類
  • 転倒・転落事故の原因の病棟別の特性比較
  • 転倒・転落事故を未然に防止できたと考えられる看護師のかかわりにはどのようなものがあるのか
  • 1型糖尿病に伴うインスリン自己注射導入における教育介入の失敗事例にはどのような特徴があるか
  • 乳がん患者のメンタルヘルス向上のために開発したパンフレットの効果
  • 摂食・嚥下障害のある高齢患者に対する新しい口腔ケアマニュアル導入後の効果
  • 終末期がん看護に携わる看護師の困難感と傾聴スキルとの関係
  • お看取りをした看護師のストレスの軽減方法にはどのようなものがあるのか
  • 小児科病棟で長期入院している患児の家族が経験する悩みの分類
  • 仮眠室の環境改善で長時間夜勤看護師のストレスは軽減するのか

 

※ここで挙げたテーマ一覧は、監修者と看護roo!編集部で仮に作成した例です。

 

 

「身近な疑問を研究テーマにする」という“王道”のテーマの決め方のほかにも、「先行研究の理論や仮説が本当かどうか確かめる」というテーマの決め方があります。

 

このタイプの研究は「実証研究」と言われます

 

「◯◯の患者さんには、こうしたケアが効果的だ」という理論が先行研究で示されていた場合、「別の病院でも同じ結果が出るか」「先行研究の対象は高齢の患者さんだったが、成人にも適用できるか」をそれぞれの現場で検証し、報告するというものです。

監修・前田先生からひとこと

新たな理論や仮説を立てることも大事ですが、その有効性を検証する「実証研究」が積み重なってこそ、看護は発展します。

 

ただ、看護分野では実証研究が不足しているのが実情です。

 

実証研究は、現場にいるみなさんにこそできる研究であり、同時に、テーマ決めや研究方法の設定に関して負担の少ない研究でもあります。

 

実証研究が可能なら、ぜひ取り組んでみていただきたいなと思います。


 

業務改善との違い、グループで進めるときの注意点は?

最後に、看護研究のテーマを決めるときによくある2つの疑問をまとめました。

 

 

看護研究と業務改善、似ているけど何が違うんですか?

業務改善は「目の前の患者さんへのメリット」を目的にしたもの、看護研究は「将来の患者さんへのメリット」を目的にしたものです。

 

 

看護の質を改善するという点では、業務改善も看護研究も同じです。

 

ただし、「誰にとってメリットがあるか」という視点で考えてみると、2つの違いが大まかにつかめるかもしれません。


業務改善と看護研究の違いの説明表。業務改善=「目の前の患者さんや看護師」にとって役に立つように行う活動や実践。看護研究=「将来の患者さんや看護師」にとって役に立つように行う発見や調査

 

もちろん、業務改善によって病棟のケアのやり方が変わり、結果として「将来の患者さん」に生かされることもあれば、看護研究の成果がすぐに適用されて「目の前の患者さん」のケアが良くなったりすることもあります。

 

ただ、どちらにより重点を置くのかが業務改善と看護研究では異なっています

 

たとえば、「リハビリに消極的な患者さんがいる」という課題であれば、

 

業務改善では

目の前にいる、リハビリに消極的な患者さんが前向きにリハに取り組むためのアプローチ方法などを考えるのに対し、

 

看護研究では

「患者さんのリハビリの意欲に影響する因子」などを広く調査・検討することで、リハビリに消極的な患者さん一般に用いることのできるケアを導き出す

 

ーといった違いなどがイメージしやすいかもしれません。

 

 

 

うちの病棟では、個人じゃなくて同期数人のグループで看護研究を担当します。研究テーマはどう決めたらいいですか?

お互いのアイデアを批判しない&時間を決めて話し合うのが良いでしょう。

 

 

「病棟の◯年目の3人が今年の看護研究の担当」というケースは少なくありませんよね。

 

グループで担当するメリットは、アイデア出しや作業分担で協力し合えること。慣れない看護研究に一緒に取り組む仲間がいるのは心強いものです。

 

その一方で、お互いに遠慮してしまったり、誰かに任せきりにしてしまったり、アイデアの数が多すぎたりして、研究テーマがなかなかまとまらないことも起こりがちです。

 

個人でもグループでも、テーマ探しの手順そのものは一緒ですが、グループでは特に次の2つがポイントになります。

 

Point
  1. ①アイデア出しの時間は自由に発言できるように、お互いの意見にダメ出しをしない

 

  1. ②いつまでも話し合うのではなく、決められた時間内で区切る

 

グループで話し合っているイメージイラスト

 

研究テーマのタネとして、それぞれが感じた身近な疑問を出し合うようなとき、「そんなの研究になるかな?」「さっき、◯◯さんも同じようなアイデア言ったけど?」といった言葉は、話し合いを萎縮させてしまいます。

 

「まずは何でも言ってOK」と決めて、どんどん発言する・メモを書き出す場にしましょう

 

また、いつまでも時間をかけても、逆に話はまとまりません。

 

「アイデアを出すのは最初の30分」などのように、ある程度の時間を区切りましょう

 

その後、出たアイデアをPICOに沿って整理したり、似ている疑問同士をまとめたり、今回紹介した方法に沿って検討していくことで、「これなら、いけそう!」とメンバー全員が思えるテーマにきっとたどり着けるはずです。

 

 

次の第3回では「文献検索・文献検討の方法」について、基本のやり方やポイントを解説します

 

 

監修

東京有明医療大学看護学部教授前田 樹海(まえだ・じゅかい)

「看護研究が嫌いになる看護師」を救いたい! 看護研究の目的は「将来の看護の発展に役立てること」ではありますが、看護研究に取り組めば、現場の課題を深く考える力や客観的にとらえる力がきっと身につきます。みなさんができるだけ肩の力を抜いて看護研究に取り組めるお手伝いをしていきます。著書『この1冊でできる!はじめての看護研究』(ナツメ社)『臨床ナースから看護研究者まで 研究発表のプレゼンもっとよくなります!』(日本看護協会出版会)。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

(引用・参考文献)

1)前田樹海. この1冊でできる!はじめての看護研究. ナツメ社, 2015, p159

2)大口祐矢. 看護の現場ですぐに役立つ看護研究のポイント. 秀和システム, 2017, p121

3)柴山大賀. 看護研究のイロハを学ぼう!-看護研究の進め方. 循環器ナーシング, 2016年12月号, 48-54

4)井上知美ら. 看護研究における臨床看護師が抱える困難. 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要, 21, 2014, 23-35

5)秋山麻美ら. 整形外科患者のリハビリテーションの意欲に影響する要因の検討. 山梨大学看護学会誌, 1(2) 2003, 17-22

 

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