「良い看護書」の見分け方、改訂のワケを深読みしてみた|ヤンデル書房(3)

ヤンデル書房のタイトルイラスト

ここは、Twitterフォロワー数11万人の医師・ヤンデル先生が開くヒミツの本屋さん。息をするように本を読むヤンデル店主が、看護師のみんなにおすすめの本を紹介してくれます。

 

文:ヤンデル(病理医)

イラストレーション:ネモトマ

 

ヤンデル書房~看護師だけのヒミツの本屋

Vol.3 なぜ? がなるほど! 病態生理 絵解きゼミナール 改訂2版

 

こんにちは。冷え込みますね。

こんな寒い日にわざわざお越しいただいてありがとうございます。そちらにいくつか新刊雑誌が入ってますよ。パラパラめくっていってください。

 

そのサンタ帽子の表紙のやつは、ちょっと古い号ですけど、人気なんでまだ置いてます(笑)。

 

あ、こっちに並んでいる本は、今月のおすすめです。

 

書籍の書影とおすすめポイントのイラスト

『ナース・研修医・コメディカルのための なぜ? がなるほど! 病態生理絵解きゼミナール 改訂2版』(メディカ出版)

 

タイトル長いですね。 

 

 

看護の「なんとなくわかった気でいるけど…」を科学する

この本の魅力はですね、

 

「浮腫ってなぜ起こるの?」とか、

「痛みってどうやって伝わるの?」みたいな、

 

日常の看護現場で

 

「なんとなくわかった気ではいるけれど、詳しく尋ねられると答えられる自信がイマイチな、科学的な説明」

 

がきちんと載っているところです。

 

ジャンルとしては「病態生理学」、もしくは「病理学総論」という名前です。看護学校でも授業があったはず。

 

授業があったからには……教わっているはずなんですけど……ページをめくってみてください、こういう内容、本当に習いました?(笑)

 

 

看護学生は、学生生活の中でケアの仕方をがんばって習得しますけれども、病気のメカニズム病(やまい)の理(ことわり)みたいな部分については、ほんのちょっとしか習わないんです。

 

だから、習ったはずだけれど、なんだかあいまい。

 

タンパク尿って、そもそもどんなタンパクがどれくらい尿に混じるんだっけ。

 

便秘にもいくつかの種類があるって言ってたな、対処も違うはず。

 

心不全の患者が吐く理由って、肝臓が原因って言われたけど、どういうことだったかな。

 

メカニズムは、「なぜこのケアが必要なのか」「どうしてこのようにケアをしなければいけないのか」の理由となります。ケアのやり方を覚えるウラで、ケアを支えている理論そのものを学ぶことは、実際に患者を看て、手を動かす際の自信にもつながります。

 

病態生理学の本が看護師さんのおうちに一冊あると、なにかと便利だと思いますよ。

 

 

「改訂2版」は良い本の目印

この本、新刊ではないんですけれど、たまに仕入れるようにしています。

 

こちら、初版は2008年に出ました。そして2014年に改訂されてます。ですからここにあるのは第2版。

 

6年で改訂されてるって、すごいですよねー! それだけ人気だってことですし、著者もしっかりした人なんでしょう。

 

えっ、何がすごいのかわからない?

どうして著者がしっかりしているってわかるのか、って?

 

あっそうか。説明が足りませんでした。すみません。もう少し詳しくお話しましょう。ちょっとだけ、お時間よろしいですか?

 

 

私は医学書や看護の専門書を選ぶときに、「改訂されているかどうか」をひとつの目安にしています。

 

改訂がくり返されている本は、いわゆる「定番」。安定して人気があります。そして、たいていの場合、著者が熱心です。

 

や、まあ、私の主観ですけどね。でもこれには、根拠というか、理屈があるんですよ(メガネクイッ)。

 

この本の奥付、後ろのカバーをめくったあたりを見てください。

 

奥付ページのイラスト。「2008年3月10日発行 第1版第1刷」「2009年5月30日発行 第1版第2刷」「2014年2月5日発行 第2版第1刷」の情報が載っている

 

「版(はん)」っていうのと、「刷(すり、さつ)」っていうのがあることに、お気づきでしょうか。

 

「刷」ってのは、本がよく売れて、在庫がなくなりそうになって、新たに刷った回数です。

 

この本の場合は、2008年にまず本が出て、2009年に追加で印刷したということ。出版社がこれくらい売れるかなと事前に予想した以上に売れたから、追加で印刷したんです。すごいですね。

 

その後、2014年には「版」が変わっています。「第2版第1刷」。これは追加印刷とはちょっと意味が違います。

 

「版」を更新するということは、本の内容自体を書きかえるということです。タイトルは同じでも、別の本になっている。改版、あるいは改訂と言います。

 

改訂には2つの条件が要ると思っています。

 

1.出版社が、本がちゃんと売れたから改訂にお金をかけてもいいよと許してくれる

 

2.著者が、最新の科学を本に反映させたいという熱意を持っている

 

この両方を満たして改訂される本には、やっぱり、良書が多いですよ。

 

 

「もっとよくしたい」と考え続けられた本

というわけで、『なぜ? がなるほど! 病態生理 絵解きゼミナール』は改訂2版です。初版がよく売れたのでしょうね。

 

そして、著者がわざわざ、内容を書きかえようと思った理由があるはずです。「まえがき」の中で、著者はこのように書いています。

 

 

「幸いにも、多くの読者に恵まれ、改訂することになったのだが、実は、初版でどうしても触れておきたかったにもかかわらず、準備不足もあり文章化できなかった2つのこと(認知症と睡眠障害)があった(ので、そこを書き加えた)」

 

(カッコ内2カ所はヤンデル書房店主による付記)

 

つまり著者は、一度出した本を「もっとよくしたい」と思って、本が出てからもずっと考え続けていたんですね。

 

本を出すのには、けっこうな手間がかかります。手軽にやさしい言葉で書かれているように見える入門書であっても、大変な労力が注ぎ込まれています。

 

ですから、一度本が出ると、医療者はそこで安心してしまう。「さあ、あとはこの広い世界を、自由に冒険しておいで」と、成人した子どもを送り出す親のような気持ちになって、あとはひたすら売れることを願う。半ば放置したくなるんです。

 

でも、出版後にも科学はどんどん進歩します。

いつだって今日の科学が最新。

古い情報はどんどんさびれていく。

読者の興味も移り変わります。

苦労して書いた本が、少しずつ、時代にそぐわなくなる。

 

そこで、著者が、

「あのときの自分は精一杯やったから、あの本はこれ以上直さなくていいや」と思ってしまったら、その本の進化は止まります。

 

だから苦労して改訂する。本は出版後にも成長していくんです。

 

 

ヤンデル書房 店主

病理医ヤンデル(市原真/いちはら・しん

1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)、札幌厚生病院病理診断科。現在、同科主任部長。医学博士。病理専門医。著書に『症状を知り、病気を探る』(照林社)、『いち病理医の「リアル」』(丸善出版)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(大和書房)など。Twitterブログnoteなどで発信中。良い本を人におすすめするのが大好き。

 

 

ナース・研修医・コメディカルのためのなぜ? がなるほど! 病態生理 絵解きゼミナール 改訂2版

■著者:井上 泰

■発行:メディカ出版(2014/02/05)

■判型:AB判、304ページ

■定価:本体3,600円+税

■ISBN-10: 4840446059

■ISBN-13: 978-4840446051

 

編集:烏美紀子(看護roo!編集部)

 

 

 

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